回想⑤ 完璧な女の子 (※月見里視点)

 私は、月見里 芽衣。今年から高校生になった、どこにでもいる普通の女の子……ではないと思う。





 私は、よく完璧だと言われる。実際、勉強も運動もできる。絵を描くことや、音楽などの専門科目でも、特に苦手という事もない。

 少し教えてもらったり、要領を掴めば、すぐにできるようになる。





 だけど普通の人は、そうはいかないらしい。そこで私は、自分が才能を持っているという事を自覚した。

 

 もちろん、最初は嬉しかった。親やクラスメイト、先生に褒められて、嫌と言う人はなかなかいないだろう。

 ただ徐々に、私の周りの人たちは、変わっていった。私は、変わってないのに。











 私の両親は、私の将来について勝手に決め出すようになった。お父さんは医者、お母さんは弁護士という事もあってか、かなり揉めたようだ。



 別に医者や弁護士は凄いと思うし、良い職業だと思う。でも私を無視して、勝手に決める両親が許せなかった。





 


 我慢できなくなった私は、初めて親に反抗した。あの時、かなり勇気を出したと思う。




「子供のくせに、反抗するんじゃないわよ」



 ただ、私はお母さんから冷たくあしらわれただけ。結局、私は愛されてなかったんだと、そう思った。






 そこから私は、あまり親の言う事を聞かなくなった。最初はうるさく言われていたけど、最近は何も言わないようになった。諦めたのか、失望したのかは分からないけれど。









 そういう私にとって、学校生活は楽しめる最高の場所だった。ただ、最初は褒めてくれた先生やクラスメイトも、私が何でも出来る事からか、徐々に変わっていった。



 先生からは、



「月見里。お前の学力なら、もっと上の高校を目指せるぞ。それに、県外の進学校でも良いんじゃないか」




 うるさい。私の自由にさせてよ……





 クラスメイトからは、




「月見里さんって、何でもできて良いよね~!」




 私だって困る事もあるのに。そんな色々な言葉が、私の身体をむしばんでいく。





 告白してきた男子を断れば、凄く嫌味を言われて、その後、その男子が好きな女子に嫌味をまた言われる。

 周りからは、何でもできて妬まれて。そしていつの間にか、仲良くしてくれる子はいなくなっていた。



 だから私は、自分から線を引くことにした。皆が思う、完璧な女の子を演じることにした。






 私だって、皆と話したかった。私だって、皆と遊びたかった。ゲームやアニメだって普通に楽しむし、テレビも普通に観る。

 それなのに、イメージと違うとか、そんな事はするなとか。私だって、根は普通の女子なのに。






 だから、春風君たちが助けてくれた時は嬉しかった。私の事を仲間と言ってくれた。

 春風君も、大変な過去があったという話を聞いた。常盤さんが春風君を慕うのも、よくわかる。





 私も、前に進んでいけるのだろうか。でも昔とは違って、今は友達がいる。内面まで知った、本当の友達が。




 私は、学校生活を楽しみたい。言い換えると、青春を謳歌したいという事だろう。青春活動部は、そんな不器用な人たちの集まりなのかな、と思う。


 桜庭先生は、部活を決めかねていた私を見て、この部活に誘ってくれたけど……そこまで考えていたのだろうか。










 とにかく、これからは楽しい学校生活を過ごそう。友達と遊んだり、恋愛したりと、色々と青春を楽しみたい。





 ここから、もう一度やり直していこう――










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