10話 碧とデート?
休日。市内にて集合した俺と碧は、早速クレープを食べに行くことにした。
碧とは色々と趣味や好きな事が同じで、中学時代からよく二人で遊んでいる。波長が合う、とでも言うんだろうか。
昇も誘って三人で遊ぶ時もあるが、自主トレーニングとか交友関係が広いからか、三人で遊ぶことはそこまで多くない。
「バナナチョコ一つ。あと……期間限定のマンゴーの奴を一つください」
俺はクレープ屋につくと、クレープを受け取って近くのベンチに座る。俺も、碧と同じものを頼むことが多いが、期間限定とやらには弱い。碧もいるし、あいつも二種類食べれる方が良いだろう。
「注文ありがと。こっちも飲み物調達してきたよ。はい、コーヒー」
「センキュ。てか碧は、いつも通りミックスジュースか。供給過多すぎね?」
「ユウも甘党としては、まだまだだね。これがまた美味しいんだよ」
碧が、近くの自動販売機で飲み物を買ってきてくれた。甘いものを食べる時は、缶コーヒーが一番良いんだよな。
ただ、碧が言うにはまだまたみたいだ。流石に甘いもの食べている時に、甘いジュースはきつい。甘党マスターの道は、まだまだ遠い。
「そんな眺めてなくても、一口やるよ。ほら」
バナナチョコのクレープを碧に渡すと、俺の期間限定のマンゴーのクレープを、気になるような視線でめちゃくちゃ見ていたし。そんなまなざしで訴えなくても、長い付き合いだからよく分かる。
「……流石だねユウは。よく見てる」
「碧は、いつもバナナチョコを注文するだろ? 期間限定も侮れない、っていう俺からの教えだぜ」
「なら、私のもあげる」
「いつも食べてるし、良いよ。全部食べな」
「むぅ。何か良いようにユウにやられてる」
「ジェントルマンと呼んでほしいね」
そうこう話しながらも、クレープを食べ終わって、少しゆっくりしていると
「これってさ、傍から見ればデートだよね?」
と、碧が不意にそんな事を言う。
「まぁ……言われてみればそうかもな」
世間一般的に考えると、間違いなくデートだろう。
でも、碧はただの友達だ。
「実際、よく聞かれるんだよね。昇とユウ、どっちが彼氏なの? って」
「面倒くさいな。前言っていた、好きな人がいることを話しておけば良いんじゃないか?」
「でも結局、野次馬の皆さんはうるさいからさ」
人間とやらは、他の人の情報を知りたがる。それに、噂も大好きときた。本当に勘弁してほしい。当事者の気持ちを考えろってな。
「難しいもんだな」
別に付き合っていようが、付き合っていないでいようが、関係ないだろ、と思う。
昇も碧も、容姿が良くて人気だし、気になる気持ちは分からないでもないが。
「ユウ、試しに付き合ってみる?」
「悪い冗談はやめてくれ。それに、碧には好きな人もいるんだろ」
「えへへ。まぁ、そうなんだけどね」
その後、俺と碧はいつものゲームセンターで遊ぶことに。いや俺らの遊ぶバリエーションなさすぎだろ!
これは言い訳だが、そもそも他に遊ぶところもそんなにないし、服とか買い物する感じでもない。すなわち、ゲームセンターに辿り着く。
ちなみに、俺も碧もファッションには、無頓着である。碧が一時期、気にしていた時もあったが、
「うーん。別にファッションしても、意味ないや」
という事で、今はパーカー民になってしまった。パーカーは、とても便利である。ある程度ファッションしてる感あるし、ほぼオールシーズン着れるからな。パーカー最強! 唯我独尊! 天上天下!
「ユウ、あのぬいぐるみ欲しい。お金は出すから取って!」
「へいへい」
「あ、なるべくお金が無駄にならない程度でよろ」
「また難しい注文を……」
ただ、クレーンゲームは苦手ではない。それに、何回もこのゲームセンターに来ているので、店員さんとも仲良くなっている。
なので、景品が取りやすい位置に配置してもらって、すぐに取る事ができた。結構グレーゾーンだが、店員さん曰く、大丈夫とのことらしい。
「店員さん、いつもすいません。助かります」
「いえいえ! バレるとヤバいんですけど、給料には関係ないですし! 私は、イチャイチャが見れるなら大丈夫なので! 幸せならオーケーなので!」
「ん?」
何だかとてつもない勘違いをしているようだが、訂正するのも面倒くさいので、勘違いさせたままにしておこう。
「ユウ、ありがと~! 一生大切にするね!」
そうやって、碧はとても嬉しそうに笑う。俺は、その笑顔に少しドキッとしてしまう。
「ユウ、どうかした?」
「いや、何でもない」
身近にいると忘れがちだが、碧の容姿はとても優れている。一般的に考えても、可愛いと言えるだろう。
別に、ただちょっと驚いただけだよな……
「ねぇ、ユウ! プリクラ撮ろ!」
「プリクラか……俺、何か苦手なんだよな」
女子って、なんであんなにプリクラが好きなんだろうか。何かお宝でも眠っているのか? 生きてる証をそんなに刻みたいのか?
「え~別に大丈夫だよ」
「男子はな、結局無加工が好きなんだよ」
「ほらほら頑固になってないで。親友と思い出を残せるのは、悪くないでしょ?」
「こういう時は本当わがままなんだから……分かったよ」
別に一度もプリクラを撮ったことがないわけではないが、今となっては完全な陽キャのイメージが気になって、苦手意識がある。
碧に押し切られる形で、プリクラに入る。そしてお金を入れて、あれやこれやと背景や人数などを選んでいると、
「それじゃあ、仲良くポーズを決めてね!」
と、急に音声が流れた。機械が喋りはじめたみたいだ。
「碧、何でこんな指示厨なんだ?」
「そんな事言わないでよ。こういう機種もあるみたい」
「そんなものなのか」
「せっかくだから、カップルっぽいことやる?」
「何でだよ」
「ほらほら近づいて」
碧はそう言いながら、俺に近づいて肩を組んできた。いや、距離感近すぎね?
「ほらほら。ユウも良い顔して」
いやそう言われても、難しいものは難しい。俺は、何とか笑顔を作る。そうしていると、一度目のシャッター音が鳴る。
「じゃあ、次はユウが後ろからハグしてよ」
「はいはい。どうせ、断っても無駄なんだろ」
こういう時の碧は、何を言っても言う事きかない。仕方なく、言う通りにしておこう。
その後も指ハートやら、ギャルピースやらと色々なポーズをした。もう、シャッターが怖いよ……週刊誌に怯える芸能人って、こんな気持ち?
「はいこれ、ユウの分」
「改めて恥ずかしいな」
「自信持ちなよ。ユウは、良い男!」
「さてどうだが」
……まぁ、思ったよりプリクラも悪くないじゃん。
その後もメダルゲームなども楽しんた俺たちは、夕方になったので帰る事にした。
俺と碧は、話しながら駅に向かう。
「ありがとね、ユウ。今日も楽しかった」
「いやいやこちらこそ」
「いずれは、篠崎さんと来れるようになると良いね」
「なっ……! 俺は、べ、別に恋愛する予定はねぇ」
「じゃあ篠崎さんがもし告白してきたら?」
「……断るよ。中学時代は、確かに篠崎さんが好きだった。今も、その気持ちがないわけでもない。けど、もう恋愛とかも良いかなって思ってる」
恋愛に限らず、人間関係は難しい。また、色々な問題も起きるかもしれない。俺は、もう疲れたくないんだ。中学の時、身も心もズタボロになったからな。
「じゃあさ、もし私がユウに告白したらどうする?」
「何でだよ。碧には好きな人がいるだろ」
「もしもの話だって」
「夢物語すぎて分からねぇな」
もし、碧が俺の事が好きだったら? もし断って、元の関係に戻れなくなったら?
色々な問いが浮かんできて、俺は考える事をやめる。そもそも、もしもの話だから深く考える必要もない。
「そっか」
「ほら、話しているうちに駅に着いたぞ」
そして駅に入ると、どこかで見た金髪の男がいた。あれ、俺の知り合いにもいたな……確か金髪の奴が一人。
「大紀?」
「ん? もしかして雄哉か?」
まだまだ、休日のイベントは続く……
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