回想② 人生って難しい (※昇視点)

 俺は、村山 昇。どこにでもいるただの高校生だ。唯一、誇れるのは野球の上手さぐらいかな。



 

 俺は、交友関係が広くて、友達と呼べる奴も結構多くいる。ただ、親友は二人だけだ。それが、雄哉と碧だった……





 雄哉と碧とは、中学時代の野球部で出会った。最初は、ただの上手い奴ぐらいにしか思ってなかった。


 碧に関しては、女子という事もあって、色々といじめられていたみたいだ。最初に気づいたのはユウだったけどな。




 ただ、碧も同級生の中ではかなり上手かったと思う。打撃面では、男子の速球に苦労していた面もあったけど、守備がとにかく上手かった。



 でもやっぱり、俺らの中で凄かったのは雄哉だった。



 俺も、かなり上手い方ではあると思っていた。けど、初めて雄哉を見た時に絶望した。

 他のチームメイトは、俺と雄哉を並べて語ってたけど、そんなことはない。


 雄哉は、スターだった。チームを引っ張っている姿が、カッコ良かった。打撃、守備、走塁、そしてチームを引っ張る姿……全てが凄かった。



 少し野球上手いんじゃね? と思っていた俺の心はポッキリと折れてしまった。

 だから俺は、雄哉を真似にすることにしたんだ。





「昇、って言うんだな。めっちゃ良い球投げるじゃん。一緒に頑張ろうぜ」




 初めて出会ったとき、雄哉は気さくに話しかけてくれた。今となっては、信じられないけどな……あいつ、昔はめちゃくちゃフレンドリーだったんだぜ。




 そこから雄哉繋がりで、碧とも仲良くなった。レギュラーになったこともあって、すぐに俺たち三人は、仲良くなったんだと思う。




 ただその時から、他のチームメイトとのズレが生じていた。俺は、どうすることもできなかった。何をしたらいいか分からず、パニックになっていたんだと思う。





 そんな中、雄哉は率先して立ち向かった。雄哉は後悔していたけど、俺は本当に凄いと思う。


 俺だけだったら、上手くいってなかっただろう。俺は当時、パニックになって何をすれば良いか混乱していたからな。






 そんな事件もあってか……雄哉と碧の分も背負って、俺は野球を頑張る事にした。   

 憧れた雄哉のようになりたいと思った。諦めた二人の分も頑張りたいと思った。






 

 ちなみにいうと、俺は碧が好きだ。徐々に三人でいるうちに、碧の事を好きになっていた。



 けど、碧はおそらく雄哉の事が好きだろう。まぁ、あんな凄い奴を好きにならない方が意外まであるよな。碧にしてみれば、白馬の王子様みたいなものだ。




 俺は、碧の事を諦めていない。けど、同時に碧の事も応援したいという気持ちもあった。雄哉なら、きっと幸せにしてくれる。それに、好きな子には幸せでいてほしいという気持ちもあるし。


 でもあいつ、碧の事を女子としてみてないんだよな。全く勘弁してほしいものだ……


 いやなんでだよ! 碧とはチームメイトだったからか、雄哉は意識していないけど、碧はめちゃくちゃモテるからな!?


 

あの鈍感男、いつか痛い目見るぞ! 俺は予言しておく! 





 


 そういえば、碧は雄哉といる時に、とても楽しそうに笑う。話すことも、雄哉のことばかりだ。



 だから、俺は遊びの誘いを断ってしまう。三人で遊ぶときもあるにはあるが、碧は雄哉と二人きりの方が良いかな、って思ってしまう。




 俺だって分かってるよ。どっちつかずみたいな態度でさ。振り向かせてみろよ、って話なんだろうけどさ。




「ったく面倒くせぇなぁぁぁぁぁ!」



 


 人生って、本当難しいよな――





 



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