共産主義の国々

 次に、実際の共産主義の国を見ていきましょうと言いたいところですが、今までの理想とはかけ離れています。共産主義の国と言えばソビエト社会主義共和国連邦や中華人民共和国などがあります。何故なら、どちらも「マルクス・レーニン主義」という複雑な思想を基に形成された国家です。「マルクス・レーニン主義」の捕捉をしておくと、マルクス・レーニン主義とはマルクスとレーニンの考えをスターリンが、自分の都合がいい様に変化させたものです。しかし、戦争の世紀と呼ばれた時代の真っ只中であり、スターリンは世界革命よりも自国(ソ連)を優先しました。つまり、共産主義としては異質な存在かもしれませんが、自国のためにやむを得ない状況に置かれていました。誤解を生むかもしれませんので、スターリンは確かにソ連の英雄かもしれませんがその下には何千万もの死体が土台になっています。

 「マルクス・レーニン主義」が基盤になっている国は、たまに共産主義の国では無いと言う人がいますが、私は違うと思います。マルクス・レーニン主義も都合のいい様に独自解釈されたとは言え、マルクス主義とレーニン主義がもとになっていることは否定できないためです。


 ソ連という国はご存知の通り、監視社会です。グラスノスチが行われるまで言論の自由は存在しません。確かに赤の広場で「日本は破滅の道を進んでいる」と言っても何も起こりませんが、「ソ連は破滅の道を進んでいる」と言うと、気付けば2つある寒帯気候の内の1つであるET(ツンドラ)に属する極寒の地シベリアで悠久のときを木を数えて過ごしているのかもしれません。

何か不審なことをする場合でも近隣住民からの密告に気を付けなければいけません。ちなみに、密告すると国から特典が貰える為、親切心などは一切存在しません。


 では、「マルクス・レーニン主義」が基盤となっていない架空の共産主義に似た国を見て行きましょう。それは、イギリスの思想家トマス・モアが出版した著作「ユートピア」に存在する架空の国家ユートピアです。ユートピアも儒教と同じで、近代の共産主義よりも前から存在します。

ユートピアと聞くと理想郷を思い浮かべるかもしれませんが、実態は完全な管理社会であり、個人の意見は尊重されない国です。それぞれに与えられた役職を全うして生活します。もちろん私有財産は認められておらず、全てが共有財産のみで構成されています。世帯は10人以上16人以下と定められており、完全に管理されています。また、ユートピアには自由という概念が存在せず、住居や結婚相手でさえ選ぶことは出来ません。空いた時間は勉強をして過ごします。

しかし、独裁体制は認められず、労働時間は6時間と定められ、また国民全員に仕事が与えられるため、飢えに苦しむ人がいません。


 人によっては良い国と思うかもしれませんが、自由が無い国が理想郷と言えるのでしょうか。確かに福祉はしっかりしていて、飢えに苦しむ人はいません。だけれども、自由を奪うということは資本主義でいうところのお金を税金などによって奪われるのと同等ではないのでしょうか。確かに「ユートピア」が書かれた時代は明日も生き残れるか分からない世界であり、生活が安定しているということは理想かもしれません。

なので、ここでは自由を奪うということを生活費用以外のお金を奪われることとして考えてみましょう。生活費用以外のお金が奪われると、友達と遊ぶことは出来ず、好きなゲームを遊べることは出来ず、おいしい食べ物でさえ手が届かなくなります。日々の生活は、仕事と勉強だけです。私達は人間であり、機械ではありません。仕事や勉強も大切ですが、何よりも自由を求めて生きています。


 共産主義における理想の「共同体」とはお互いを助け合うことであり、互いに監視しあうことではありません。ソ連の様な監視社会では、自由というものが少なくなり、生きずらさを感じてしまうのではないのかと思いました。


 このことから、共産主義の理想とは「優しさ」ですが、現実は「監視」であり、どこか歯車がずれてしまっているように感じます。これが共産主義の理想と現実であり、「理論は完璧だった」と言われるのではないでしょうか。


 では、なぜ理想と現実でこのような差が生まれてしまうのでしょうか。それは、「共同体」が深く関係していると、私は考えます。

この「共同体」を使うことで、国は簡単に管理することが出来てしまいます。共産主義の国にとって怖いことは、資本主義の国でもそうですが、国家反逆です。共産主義は、少なくとも資本主義よりも国民の自由を奪ってしまうという性質上、国家反逆のリスクが資本主義よりも高いです。なので、この「共同体」内で相互監視させることによって、そのリスクを抑えるということです。

国家反逆において一番の懸念点は、人員です。人の数が少なければ簡単に制圧できますが、多いと大変な目に会います。そして、共産主義は「共同体」というグループを初めから作っている訳ですから、互いに信頼関係を持たれると困ります。

また、国家反逆するつもりがなく武器・兵器を持っていなくても、農作物を隠蔽されたりすると国としては困ります。こうなると国は武力行使を使わざるを得ない状況に陥るかもしれません。つまるところ、「共同体」内の団結は非常に厄介なのではと考えました。(あくまでも、一般人による推測であっているとは限らない。)

 こうした、人々の管理のしやすさや国の国民に対する恐怖が、理想と現実の歯車をずらしているのではないかと私は考えました。

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