第23話 みてい
怪獣ショウ側から公式発表が放たれた。
今回を区切りに以降、国内では怪獣の出現することは未定である。
そして選ばれたのは、かつて郊外に建設された大型ショッピングモールだった。
営業を停止して三十年以上経過し、これまでみえない怪獣が出現した場所としては最大規模の施設となる。怪獣の出現は一週間後と発表された。
ネット内外をかまわず、一種の祭り状態化が成された。それはショウに対する評価とは無関係であり、ひたすら無差別に注目は集まり、収集不能な騒ぎと化していた。観戦者母数の増加は、当然、ショウへの批判的な意見の母数を増やすことにもなっていたが、むしろ批判的が多く放たれることで、話題性は強くなっていった。
いったい、この世界の誰のせいで、あんなことをする人間をつくりだしたのか。親か、社会か、国か。それともネットか。ショウという存在の製造元に対する犯人捜しも途絶えることはなかった。シュウ個人への攻撃も当然のようにあった。だが、ショウはもとより個人のSNSを持っていなかった。怪獣ショウの公式ホームページへのサイバー攻撃を受けたが、当の公式ホームページには、攻撃されることで困難に陥るような情報は抱え込まれていなかった。会員情報は登録開始時当初から、会員の個人情報はおおやけにされることがうたわれていたし、最初からネットは、ただ怪獣ショウの予定を発表されるためだけにしか使われていなかった。一方通行でしかなかった。
様々なメディアが取材もそれぞれの密度で自由に記事を書いてのせた。根拠不在のまま書き、近日には有名海外ブランドとの提携予定とも書いた。また怪獣ショウの運営組織は、ほとんどカルト教団化されていると思わせることで、刺激ある見世物、読み物にしていった。見つけた金山から、金があるうちにとにかく掘り起こそう、手段は問わず。そんな様子があった。
おそらく潮時だと判断したのだろう。怪獣ショウは行き止まりになる。ゆえに舞台を国内から海外へ移行するのだと。
ある感度を持った観客たちは、ショウの今後の動向をそう予測した。ショウは、この国から取得可能なものは、このあたりだろうと判断したに違いない。ここから先は、もはやアートという一枚の看板は盾として有効に機能しなくなる。増えた資産が、負債になるまえに引き上げる。戦争を仕掛けて、勝っている間に引き上げる。そんなところだろう。
いや、ショウ自身が、この怪獣ショウなる連作に飽きはじめているのではないか。という見方もされていた。
運によりたどり着けた要素がつよい、彼は頭がいい、きっとそれも認識しているはずだ。だからここで終わる。そう考える者もいた。国内での怪獣ショウの実質的な終わりは、その運により得た利益を元手に、正当な作品をつくり、やがて正当なアートの評価を得ようとしている。いずれにしろ、ここまでの騒ぎを起こしたショウの存在を、良いきにしろ、悪しきにしろ、アート界は無視しきることはできまい。もはや、無視は不自然にしかなるまい。
誰にも避けることの出来ない存在化を達成し、その世界に乗り込むつもりである。
やがて、そんなショウが始まることを予感させていた。
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