第18話 幼馴染、ストーカーになる「あたしという彼女がいながら……優斗のバカああああああああああっ!」 幼馴染視点

「優斗はあたしにウソをついてる……許せない。あたしは幼馴染なのにっ!」


 放課後。


 亜美は優斗の跡をつけることにする。


「全然違う電車に乗ってるじゃない……」


 悠介の家の方向と違っていて。


「ウソつき! 許せない・許せない・許せない!」


 今まで自分の所有物だと思っていた。


 自分が告白すれば、優斗は絶対に受けられると。


 しかし、今は——


 亜美の告白を断り、ウソをつく優斗。


 どうしても許せない亜美であった。


「まさか……クイックアリスの家じゃないわよね?」


 電車の中で不安になる亜美。


 電車は、渋谷方面に向かっているからだ。


「ないわよね……人気配信者と優斗が、同棲しているなんて……絶対にないわよね?」

 

 亜美の中で、良くない想像がどんどん大きくなる……


 (いったいどこに行くのよ。優斗……?)


 優斗に見つからないように、


 影からじっと優斗を見つめる亜美。


「あっ! 降りる……っ!」


 慌てて電車を降りて、


「ウソ……渋谷駅じゃん」


 この前の日曜に、優斗とクイックアリスが一緒にいた渋谷。


 亜美の心臓がバクバクと鳴り、


 喉はカラカラになっていく——


 (まさか、ないわよね? 優斗とクイックアリスが同棲している、なんて展開……)


 渋谷駅から、優斗を慎重に着けていく。


「ここまで来たら絶対に、突き止めてやるわ。それで乗り込んで優斗に土下座させて……」


 なぜか優斗に謝らせようとする亜美。


 (幼馴染のあたしに心配かけて……優斗が全部ぜーんぶ悪いんだからねっ!)


 やがて駅からどんどん離れていき——


 大きなタワーマンションが見えてくる。


 優斗の足は、タワーマンションへ向かっていて。


「でっかいタワーマンションね……あっ! テレビで芸能人がいっぱい住んでるって言ってた、高級タワマンじゃん……」


 家賃は月100万円。


 普通の人なら、一生かかっても住めない場所だ。


 (優斗と、あんなところに住めたらなあ……)


 タワマンで、優斗との新婚生活を想像して、


 ついつい一人でニヤニヤしてしまう亜美だったが、


 ぴったりと、優斗がタワマンの前で止まる。


「えっ? なんで立ち止まって……?」


 焦りまくる亜美だが、次の瞬間——


「優斗くんーっ! おかえりなさいっ!」


 タワマンのドアから、


 クイックアリスが出てきて——


 (ええええええええっ! クイックアリス?!)


 思いっきり、優斗に抱きついた。


「く、苦しいですよ……愛理さん」

「だってぇ……寂しかったんだぉ!」

「まだ1日も離れてないですよ……」

「優斗くん成分、すぐ不足しちゃうんだもんーっ!」


 (ウソでしょ……優斗がクイックアリスと、あんなにイチャイチャして……信じられない)


 しかし、すべて現実である。


 亜美は絶望した。


 優斗の心に、自分の居場所はないことに。


「あたしという彼女がいながら……優斗のバカああああああああああっ!」


 泣きながら、走って逃げる亜美——


「優斗くん……犬の鳴き声しなかった?」

「え? 俺は何も聞こえませんでしたけど」

「そっか。じゃあ気のせいね」



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