第17話 幼馴染に再告白されるが、もう遅いと断る。「なんでよ。なんでなのよ? 優斗は、ずっと【あたしのもの】だったのに……」

 昼休み。屋上。


 俺は亜美に呼び出された——


「なんだよ。話って……?」

「優斗……今、どこに住んでるの?」

「はあ? お前に関係ないだろ」

「関係、大ありよっ! だってあたしは、優斗の幼馴染なんだからっ!」


 俺は振って、しかも他の男と寝たくせに……


 今更、「幼馴染だから」と言われてもな。


「どこに住んでるか、教えて?」

「悠介の家だよ?」

「本当に? 本当に? 後で悠介くんに聞くからね?」

「ああ、聞いてもいいよ」


 ちゃんと対策は練っておいた。


 誰かにどこに住んでいるか聞かれたら、「悠介の家だ」と答える。


 あらかじめ、口裏を合わせた。


 まあその代わり……悠介に愛理さんとのこと、根掘り葉掘り聞かれるハメになったが。


「……ひどいっ! 幼馴染のあたしにウソつくんだ! 今までウソついたことなかったのにっ!」


 俺の答えを聞いて、亜美がキレ始める。


「ウソだって証拠、あるのか?」

「べ、別にないけど……女の勘、幼馴染の勘よっ! あたしの勘はよく当たるから……」


 実際、俺の所在地に関しては亜美の勘は当たっているが……


「お前の勘はハズレだよ。で、話ってそれだけか?」


 亜美はうつむきががちになって、


 顔を赤くしながら、


「…………優斗、また付き合ってやってもいいわよ」

「…………はあ?」


 ある意味、衝撃的な発言だ。


 あんなことがあった後で、また付き合えって?


 「やってもいいわよ」と、謎の上から目線で。


「おいおい。亜美、俺を振ったよな? どうして心変わりしたんだ?」

「優斗が……可哀想だからよっ! 東大に落ちて、彼女からも振られてたら、人生ドン底でしょ? だから情けをかけてあげてるのっ!」


 マジで意味がわからない……?


 頭が痛くなってきた。


「いや、情けとか要らないし……。それに、亜美は東大落ちたら、俺を振ったんじゃ……?」

「だ・か・ら、あたしの理想をぐちゃぐちゃにした優斗を、許してあげるって言ってるの!」

「理想を壊したってさ……亜美が勝手に思い込んでいただけで——」

「違うっ! 一緒に東大行こうって、子どもの頃に約束したじゃん……。優斗、もう忘れたの? 許せない、許せない、許せないっ!」


 床を踏みまくる亜美。


 完全に逆ギレだ。


「はあはあ……で、返事はどうなの? あたしとまた付き合うのよね?」

「無理だ。今更、もう遅い」

「…………聞こえない」

「亜美とは、もう付き合えない」

「…………聞こえない、聞こえない、聞こえない!」


 亜美は現実逃避モードに入った。


 こうなると、もう手がつけられない。


「あたしの振り方が酷かったから、怒ってるのよね? それだけは謝るわ。ごめん、ごめん」

「いや、今更謝られてもな……」


 劣等遺伝子、バカ男……


 言ったこと、酷すぎるだろ。


「家から追い出されたなら、あたしの家に来て。勉強もあたしが教えるから……」

「お断りしますー」

「もお! 幼馴染のあたしがせっかく言ってあげてるのにーっ! 優斗のくせに!」


 キレまくる亜美。


 ちょっと唾が飛んできた……

 

「もういいか? 昼休み終わるし……」

「なんでよ。なんでなのよ? 優斗は、ずっと【あたしのもの】だったのに……」


 亜美からすれば、俺はただの所有物……


 都合のいい、オモチャってところか。


 だが、それはもう違う。


「俺はお前のものじゃない。じゃあな」


 俺は亜美に、くるっと背を向ける。


「ウソ……待って、待ってええ! 行かないでええええええええええええええっ!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る