第13話 幼馴染、親友から見捨てられる「じ、実は……佐藤に無理やり頼まれて。佐藤は優斗にずっと嫉妬していて、あたしを【寝取る】ことで、優斗に復讐しようって……」 幼馴染視点

 放課後。


 駅前のカフェで、亜美は瑠奈と会っていた。


「亜美、湊の気持ちは聞いておいたよ」

「ありがとう。で、優斗はなんて……」

「【絶対、無理。今更もう遅い】だって」

「ウソ……」


 (幼馴染のあたしから、離れる気なの……?)


「本当だよ。湊は本気で付き合う気ないみたい」


 亜美は愕然とした。


 ずっと一緒にいた幼馴染の優斗が、


 自分のことが好きだった優斗が、


 自分の告白を、拒否したことに——


「亜美……あんたはあたしの親友だよ。でも、今回は亜美が悪いよ。大学落ちた瞬間に別れるのは酷いし、【劣等遺伝子】は言い過ぎだし……」

「あれは、優斗に奮起してもらいたくて……」

「だったら別れる必要ないじゃん」

「違うの。優斗に別れたくない、って言ってほしかっただけで……」

「でも、湊の立場なら、やっぱり傷つくよ」

「…………」


 瑠奈に正論を言われて、黙り込む亜美。


 それを見た瑠奈は、深呼吸してから、


 キッと亜美を睨んで、


「ねえ、亜美。あたしに隠してることない?」

「え……? ないよ?」

「本当に? 今、正直に言うなら許すよ」

「な、何もないってば……っ!」


 (まさか……佐藤のことがバレてる?)


 明らかに焦りまくる亜美。


 隠していることは瑠奈にバレバレで。


「はあ……そういうことね」


 瑠奈は大きなため息をつく。


 (ご、誤魔化せたかな……っ)


 一瞬、亜美は安心したが、


「亜美……佐藤と寝たの?」

「ぶーっっ! な、なんでそれを……っ?」

「やっぱりね」


 カフェラテを吹き出しそうになる亜美。


 冷や汗が額から流れて。


「親友のあたしに、ウソついんだ?」

「違うわよっ! 恥ずかしいことだから、言わなかっただけで……」

「自分に都合の悪いこと、隠してたってことでしょ?」

「そういうわけじゃ……」

「亜美が佐藤と寝たこと知っていたら、あたしは湊を説得に行かなかった。別れたその日に他の男と寝る女を、庇いたくないもん」

「ごめん……」


 亜美はしおらしく謝る。


 しかし、瑠奈の怒りは収まらず——


「もう亜美を信じられない……。しばらく距離を置こう」

「そんな……っ! 瑠奈だけがあたしの親友なのに」

「今はとにかく無理」


 瑠奈が席を立とうとすると、


「じ、実は……佐藤に無理やり頼まれて。佐藤は優斗にずっと嫉妬していて、あたしを【寝取る】ことで、優斗に復讐しようって……」

「え? 佐藤がそんなことを?」

「脅されたのよ。俺と寝るのを断ったら、お前をストーカーして恥ずかしい写真をネットにバラまくぞ、って」


 もちろんこれは、亜美のウソだった。


 すべてを佐藤のせいするつもりで。


「ごめん、亜美。それって本当かな? もしまたウソついてたら……」

「ほ、本当だよっ! あたしは佐藤と寝たくなかったのっ! 全部佐藤が悪いのっ!」


 亜美は必死に瑠奈の腕にしがみつく。


「わかったわ……疑ってごめん。辛かったね」


 瑠奈は席に戻って、亜美の手を触る。


「ううう……っ! あたし、本当に後悔してるの。でも

佐藤に迫られて、怖くて……っ!」

「うんうん。本当に辛かったね……。大丈夫。あたしは亜美の味方だから」

「ありがとう……っ! 瑠奈っ!」


 亜美は泣いていた。


 しかし、それはウソの涙で——


「優斗を……絶対に取り戻したい」

「あたしも協力するよ。だから泣かないで……」


 

 ——亜美はまだ気づいていなかった。


 この後、亜美のウソが瑠奈にバレることに……


 そして、親友に見捨てられることに。


 その時には、【もう遅い】



 

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