第12話 幼馴染、親友のギャルを送り込んでくる「亜美は湊を振ったこと、すっごく後悔してるから」

「行ってきまーす」

「優斗くん、行ってらっしゃいっ!」


 次の日の朝——


 今日は登校日だ。


 受験が終わっても、まだ授業が残っている。


 俺は愛理さんの家から学校へ通う。


 幸い、教科書はロッカーへ置いてきた。


 あー行きたくねえなあ……


 ★


 クラスへ行くと、2つのグループに分かれていた。


 東大に合格した奴らと、そうでない奴ら。


 海堂高校は、偏差値70越えの超進学校。


 学年の半数が東大へ行くわけで。


 こうやって受験後に、カーストが分かれる……


 亜美は今日、いないみたいだ。


 少しホッとした。


「おはよーっ! 優斗っ!」

「おう。悠介じゃん」


 悠介は俺の幼馴染だ。


 俺と違って【ガリ勉オタク】ではなく、


 陽キャで勉強もできる、ガチで何でもできる奴で。


 当然、女子にモテる。


「悠介、受かったんだな。おめでとう」

「ありがとう。優斗は残念だったな……」


 おまけに性格もいいわけで、クラスの人気者だが、


 幼馴染ということで、俺とも仲良くしてくれる。


「なあ……優斗、大丈夫か? 家を追い出されたんだろ? 今どこに——」

「湊ーっ! ちょっと来てよ」


 桜庭が俺の肩を叩く。


 桜庭瑠奈——クラスの陽キャギャルで、亜美の親友だ。


 見た目は派手で遊んでそうだが、桜庭は合格したらしい。


「……何だよ?」

「大事な話があるのっ! とにかく来い!」


 無理やり手を引かれて、


 俺は桜庭に連れて行かれた——


 ★


 高校の屋上。


 それは青春を謳歌する場所だ。


 俺にはずっと、縁のない所だったが……


「で、話って何?」

「亜美のことだよ」


 やっぱりか……


 なんとなく、そんな予感がしていた。  


「亜美が何だよ?」

「……亜美が、湊とよりを戻したいって」

「無理」


 俺は即答する。


「……亜美はね、とっても理想が高い奴なの。湊と東大に通うのがずっと夢だったみたいでさ。湊に酷いこと言っちゃったのも、全部湊のためだったんだ」

「だからって、【劣等遺伝子】はないだろ?」

「湊が不合格になって、亜美の理想が崩れたから、つい言っちゃったみたいで……」


 亜美はプライドが高い。


 付き合っていた時も、自分の理想をよく押し付けてきた。


 ああでないといけない、こうでないといけない……


 まあ、頑張り屋なところもあるが。


「俺はまた付き合う気はないよ」

「でも、亜美は本気で湊のこと好きで——」

「別れてすぐ、佐藤と寝たのに?」

「……え?」


 桜庭が驚いた顔をした。


「もしかして、知らなかったのか?」

「うん……知らなかった」


 都合の悪いことは、桜庭に黙っていたようだ。


 亜美らしいと言えば亜美らしいが。


「佐藤と寝たのが本当なら、亜美は最低だね。でも……亜美は湊を振ったこと、すっごく後悔してるから」

「そんなの、俺は知らん」

「あんたたち、幼馴染でしょ? 今までずっと仲良かったんだから——」

「絶対、無理だから。今更、もう遅い」

「そう言わずに……」

「たから、もう遅いって」


 はあ……と、桜庭はため息をついた。


「……湊の気持ちはわかった。で、もうひとつあるんだけど」

「何だよ?」

「湊は……クイックアリスと何かあるの?」


 クイックアリス——愛理さんとのことも、桜庭は知っているみたいで。


「何もないよ」

「……クイックアリスの噂、知ってる?」

「噂って……?」

「クイックアリスは男性ライバーと……付き合ってるらしいよ」

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