逢瀬
麗香といるのは、沙羅にはない刺激があって楽しかった。
二人は全く正反対で、麗香は自分の希望をはっきり言う。沙羅のように黙り込んで不満をためたりしない。そこが楽だった。
今日は麗香の誕生日だから、土曜日だが思い切って二人で一日過ごすことにした。都合のいい存在でいることに女は敏感だ。
時々は機嫌も取らないと、不倫相手は扱い方を間違うと地雷となりかねないことを同僚などから学んでいた。
「奥さんはいいんですか」
「最近、仕事を始めてね。今日も仕事。なんだか張り切ってて、楽しそうだよ」
「へぇ……気を付けないとですね」
「なにが?」
「パート先で不倫とか。よくあるらしいですよ」
麗香の発言に驚く。沙羅は幼い頃父親の不倫で離婚した関係で、かなり異性関係は潔癖だった。芸能人の不倫のニュースなども信じられないとよく言っていた。
だからこそ絶対に知られてはならない。
そろそろ麗香とも終わりにしようと思っているところだった。
結婚生活で失ったときめきや性欲を発散するにはいい相手だったが、自分のせいで婚期を逃すようなことがあっては、気が重い。
「まさか……ないよ。うちの妻はそんなにガツガツしたタイプじゃないしね」
「奥さんがそうじゃなくても相手がガツガツしてくることもありますよ。男の人ってああいう庇護欲そそるタイプ好きじゃないですか」
あったとしても沙羅はかたくなに断るだろう。絶対にない。
「せっかくの休日なんだ。楽しいことを考えよう」
麗香の腰を抱き、休日の街を行く。今日は一日麗香のために使うつもりだった。
知り合いに見つからないように、わざわざ遠くまで来たのだ。楽しんだほうがいい。
予約していたランチを終え、ぶらぶらと歩いているとスマホの着信音が鳴った。
「奥さんですか?」
「いや、違う。知らない番号だから営業かなんかだろう」
一度きりの人生。貞操観念より、時には楽しさを優先させてもいいだろう。
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