第9話

何処かで不幸な事が起きると、何処かで幸福が訪れる。

何処かが便利になると、何処かで不便になる。

何処かで何かが始まると、何処かで何かが終わりを告げる。

自身の人生も社会も文化も例外は無い。

そうやってバランスっていうのは成り立っている。


新庄と付き合い始めて数週間が過ぎた。


職場環境は悪化の一途を辿る一方で新庄との関係は良好になっていった、

関係が良好になればなる程店長のストーカー行為は悪化していった。


新庄の心が壊れていく程に2人の時間は増えていき、2人の時間が増える程僕に当たる事が多くなった。


いつも通り2人で夜の公園で会う、彼女は壊れきっていた。

ベンチに座って僕に背中を向けて何も話さずに電子タバコを吸い、僕は何も言わずに彼女の持ってる櫛で彼女の髪をとかす。

2,3時間そんな光景が続き、手を繋いで家まで送る。

そんな日々が続いた。


それが連日続いたある日の事だった。

彼女がぼそっと独り言を呟く


「後藤さんと結婚した方が幸せになれるんだろうなぁ・・・。」

「親にも後藤さんの話してて今年の年末にご飯に連れておいでって。」


僕は付き合った時に彼女に伝えていた事があった。

遊びで終わらせるつもりが無い事。真剣に向き合いたい事。その為に他の人が良いのなら僕ではなく、その人に幸せにしてもらって構わない事。


そんな事を伝えていた後の新庄の独り言は重みがあった。

重みのある言葉だからこそ嬉しかったんだ。


「喜んで行くよ」


彼女はずっと、この事で悩み続けていたのだろう。彼女の顔に安堵の表情が見えた。


彼女の髪をとかしていた手も少しだけリズミカルになっていた。

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晴れのち雨 おけけ @kry003

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