第4話

 あの日の出来事から何日か経った。

 店長もいつも通りニコニコしながら俺に接してくれている。

(やっぱり、たまたまだったのかな…。)

 俺はそう思いながら今日も新人の教育係だ。

「どう?あれから何日か経つけど仕事慣れた?」

「はい!一通りは覚えました!」

「そっか、覚え早いね。」

 そんなやりとりを数分やった頃だったろうか。

「そういえば、店長から変なLINEきた!(笑)」

 随分と笑いながら言っている。

(何だよ…どうせ大した事じゃないんだろし)

 ふと、そんな事を思いながら彼女が見せてきた携帯画面を見る。

 そこの画面にはこんなやりとりが書かれていた。


「今から家行くわ!(笑)」

「え」


(冗談だろ…つか、何で店長この娘のLINE知ってんの…?)

(てか、マジで家行くつもり?いやいや、冗談でしょ。)

 普通の女子ならドン引きする内容なのだろうが、彼女も彼女で笑っている。

 いや、そもそも本気にしていない様子からすると冗談でのやりとりなのだろうか?

「冗談で言ってるんじゃない?」

「その後、LINEじゃなくて直電凄かったです!」

 彼女はそう言って俺に着信履歴を見せた。

(なんか、十何回も着信履歴残ってるし…)

 正直、店長がこの娘にここまで執着する理由が判らなかった。

 まぁ、顔は人気ありそうな顔だった。だからといって、面接で初対面だった娘に必要以上に付き纏うものなのだろうか?

「店長とは以前どこかで面識あった?」

「無いです。何でですか?」

「いや、この前面接で初対面の娘にここまで付き纏うのって普通じゃないからさ。」

 彼女は首を傾げて少し考えた後、

「あー…、そっか…」

 彼女の反応に曇りがみえた。やはり何か彼女は隠していた様だ。

「誰にも言わないって約束してくれますか?」

「言わないよ。何があったの?」

 いつも笑ってばかりの彼女が見せた初めての真顔だった。

 周りの空気が張り詰めるのを感じ。僕は眼を見る。

 これから言おうとしてるの事か何なのか全く判らない。だけど、彼女の言う事に嘘は無いのだろうという事は確かだった。


 これから先語られる事を貴方はどう思うのだろうか。

 どう感じ、どう捉え、どの様な答えにたどり着くのだろうか。

 僕がこの先出した答えとは、また違った未来もあったのだろうか。

 僕はその《もしも》に辿り着きたかったから。

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