第3話
「おはようございます」
今日は快晴。うん、やっぱり天気が良いと気分がシャキッとする。
朝から雨降ってジメジメしていると気分も上がらない。
(そういえば、今日ってこの前の面接の子来る日だ。)
今日の夕方から新人が来るので、それまでに仕事をあらかた終わらせる。新人の研修中に仕事が残っていると研修が途切れ途切れになってしまい、専念出来ない為だ。
一緒にシフトに入っている
「今日来る人って、どんな感じの子ですか?」
「俺も面接の時に少し見ただけだから何とも…」
まぁ、俺も面接の時チラっとしか見てない。んなこと聞かれたところで俺にもわからない。
「いい子だったらいいなぁー。」
なんだかんだいっても、不安よりも期待値の方が高いのが幸いだ。
「そういえば、まだ店長居ますよね。なんでですか?」
何かを思い出した様に宮野さんがそう呟く。
そう、夜勤の筈の店長が夕方だってのに帰りもせずまだ居る。本来ならば、朝の10時には仕事など終わって帰って寝ている筈だ。
途中で何回も「あがってください。後は俺やっときますから。」と言っても、「時間なったら帰るから(笑)」などと言って帰ろうとしなかった。
(なんだ?来なかったら困るから?いや、でも俺と宮野さんと2人いるしなぁ…)
「いや…、俺にも分からないよ…」
「もう、16時過ぎてますよ?」
「そうだよね?今日店長休みだけどさ…。」
そういう会話をしている時だった。
ガラッ!
事務所の扉が開き店長が顔を出す、時間は16時半を過ぎていた。
「お疲れ様です。大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫(笑)」
(えぇ、なんでぇ…帰れたじゃん…絶対帰れたのに残ってたやつじゃん…)
「ちゃんと寝てくださいね…」
そう言ったが、返ってくる答えは「大丈夫、大丈夫(笑)」の一言だけ。
そう言って「おつかれー」と帰る店長、帰って早々宮野さんが口を開く。
「やっと帰りましたね。」
「大丈夫って言ってたけど、絶対大丈夫じゃないよね?」
「新人待ってたんじゃないですかー?」
言葉には出さなかったが、それは俺も思ってた事だった。
「いや、まさか…だって面接の時初めて会ってソレって無いでしょ。」
「まぁ、そうか。」
そんな会話をしていると17時になろうとしていた。
キンコーン!
入店音が店に流れる、2人で「いらっしゃいませー」と入口を見ると面接の子が居た。
「今日の17時からシフトに入ってる新庄です!」
彼女はニコニコしながらそう伝えてきた。
「あ、よろしくお願いします。事務所はこっちになります。」
事務所に案内し、机の上にあった制服と名札を渡す。
「着替えたらカウンターに来てくださいね。」
そういって事務所を出ると、すぐに彼女も出てきた。
「マネージャーの後藤です、こちらはアルバイトの宮野さん。」
「あ、宮野です。」
「新庄です!よろしくお願いします!」
(スゲー、ニコニコシテルヨ?スゲー、ウレシソウダヨ?)
「新庄さんってコンビニの経験ってありますか?」
「はい!全くありません!アハ」
(よし、回れ右!)
開幕から不安要素しか無いが、嘆いていても時間の無駄なのでコンビニの基本から教える事になった。そして、20分程した頃だろうか。
トゥルルルル!トゥルルルル!
店の電話が鳴った。
(ん、誰からだろう…。社長からかな?)
たまに社長から業務連絡の電話がくる事がある、今回の電話もその類の電話だと思い電話に出る。
「もしもし、ニコニコ中央店の後藤です」
「あ、もしもし」
聞き覚えのある声だった、そう店長だ。
「あれ、どうしたんですか?」
「いや、今日休みなんで後藤君仕事終わったら飯いかない?」
一気に違和感を覚える。この半年店長から店に電話なんて掛かってきた試しなどなかったし、何よりも飯の誘いも初めての事だった。
「え?誰と行くんです?」
「俺と後藤君と新庄さん」
それを聞いて俺は思った。
(宮野さんの名前がない。恐らく新庄さんが目的だ。だけど、なんで?初めて会ったんじゃないのか?)
俺は嫌な予感しかしなかった。面倒な事に巻き込まれる。直感でそう感じ
「いやー、親飯つくっちゃってると思うので今日やめときます。親ウルサイから…」
家に帰ったところで飯なぞ用意されている訳もない。俺は
「そっか、急だったしゴメンね」
「いや、2人で行ったら如何です?」
そうだ、狙うのは勝手なのだが俺を巻き込まないでほしい。やるなら個人間でやってほしいもんだ。
「いやーそれは出来ないよー」
(何でだ、飯行く位なら行けば良いだろう…。)
「まぁ、今回はすいません…また機会あれば…」
「はいよー、また今度ねー」
そう言い残すと、店長の電話は切れた。溜息をつく暇もなく宮野さんが聞いてくる。
「どうしたんですか?誰だったんですか?」
「え、店長…」
当然。驚いた顔で宮野さんと新庄さんは聞き返してきた。
「え…何て?」
「俺と店長と……新庄さんの3人で飯行かないか?って」
新庄さんが半笑いになりながら宮野さんと目を合わせ口を開く
「え、何でワタシ?」
「さぁ…、今日も店長新庄さんの来る30分前位まで店居たし…、新庄さん狙ってる?」
「まさかー!アハ!」「いや、案外ありえそう…」
宮野さんもそう思っていた様だ。まぁ当然っちゃ当然か。
「えー、マジキモイんですけどー」
相変わらず他人事の様に半笑いで語る、普通の女の子なら本気で怖がっても不思議では無い感じがするものだ。
「とりあえず、何か変な事されたら言ってね。連絡先教えておくかい?」
「あ、一応お願いしときます。」
そう言って俺は新庄さんと連絡先のLINEを交換した。
基本従業員とは店舗の電話で連絡を取れば良いと思っているので、連絡先を交換しない。今回の場合は緊急連絡先という意味で交換しただけだ。
「とりあえず、今日は誰かに迎えに来てもらった方が良いかもね」
そう言って、新庄さんには伝え本人も友達の男性に迎えに来てもらい帰宅の途についた。
(なんか、嫌な予感しかしねぇなぁ)
そう考えながらも眠りにつくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます