開発者の私が何故か乙女ゲームの主人公に憑依した件~悪役令嬢が美味しいところ全部持って行ってしまったので、ナルシストのモブ(※秀才)と一緒に魔法学院の頂点目指します~
06 選ばれたのは、当然ながらあのひとでした!
06 選ばれたのは、当然ながらあのひとでした!
ルイーザ様が発した「先約」という言葉にワンチャンス集団はまたもやざわめき始めた。いやいやわかってただろうよ、そんな演技は要らないよ。もはや主人公であるはずの私が完全に空気――部外者、俯瞰者のモブそのものになっていた。
「ルイーザは、俺のパートナーだ」
ひとりの男子生徒が教室の最前列(定位置)に座っていたところからすっと立ち上がって、ルイーザを背に庇うように立った。
さながらドーベルマンのような風格漂うドヤ顔の美少年――最強
凛々しい表情の青髪イケメンに目をやられたのか「ウッ」といううめき声がルイーザの周囲(主に女子生徒)から上がった。
だよね、やっぱりそうだよね、わかりきっていたよね。
クールな天才少年(※キャラクターコンセプトです)エリアスは、すっかりルイーザに心酔しきっている。同じ寮なのもいいことに登下校も一緒、ランチタイムも一緒、いつでも行動を共にしてイチャイチャしているのだ。
交際しているのか、と勇敢にもルイーザに尋ねた生徒がいたようだが「いえ、私とエリアスはそのような関係では……」と頬をお染めになられたそうである。へえへえさようでございますか。
そんなこんなで第一学年の第一期末までのパートナーは、とりあえず手近なところで妥協するかという空気になったようだった。おこぼれ狙いくんたちは競馬場で外れ馬券をばら撒くおっさんのように肩を落としながら、隣で同じ表情をしていた人間と傷のなめ合いをしている。
「ねえ、ちょっと」
「……ん? どうしたのかね、ソウビくんや」
肩を掴まれたので振り返る。
怒りんぼくん――ソウビくんは、こほん、と咳払いをしつつ決め顔を作っていた。すっかりソウビと私はダチになっているのでそういうちょっとした表情の変化がわかるようになっている。
それにしても整った顔の美少年を間近で見るのは眼福だな……ほんとモブにしとくにはもったいないよ。もし私が現実世界に帰還出来たら、ソウビのことは
立ち絵的にはラーメン屋の大将みたいに腕組みするのもイマイチだし、教室最後列の定位置に陣取って騒ぎを傍観していた私を、さげすんだ眼で見下ろしてくるのはちょっといただけないけどね。
「ふん、あんたみたいな落ちこぼれ、どうせ誰も組んでくれないだろうねえ」
「かもねえ、どうしようかなあ。困っちゃうなあ、誰か今学期のパートナーとして一緒にやってくれるひとがいたらいいのになあ」
ちらっと上目遣いでソウビを見る。
様式美というのは大事だ――いかにも主人公な桃色髪と奇跡の虹色虹彩というスペシャルなルックスを武器に、この可愛げのあるモブを攻略させていただこう。
「俺のパートナーにしてあげよっか……♪」
「いいの? 私なんかと組んでもいいことないよ? 薬品調合も下手だし魔法史学なんて最下位独走中だよ?」
なーんて言って自分を下げてみる。実際、ソウビの成績は極めて良好で、A-ぐらい。落第寸前、平均点がC+の私とは格が違うのだ。
パートナーになりたい子はやっぱりいるらしくちらちらソウビを見ているが、
「俺はねえ、俺より目立たないやつがいいんだよね。その点あんたはぴったりなんだよ。俺の引き立て役としての資格は十分に満たしてるってわけ」
「ははー、それはたしかにそうかもねえ」
「それにあんた、『魔法戦闘』はかなりいい線いってるじゃん。みんな、あのクソビッチとエリアス、そして俺! に埋もれて気づいてないけど」
ソウビの言うとおりで、奇跡的に私は「魔法戦闘」の授業だけA評定を取れるほどの成績を残していた。まだ入学してひと月ほどなので、月間評価でしかないのだが自分なりに頑張っているとも言える。
なぜなら――そう、ゲームにはセオリーというものがある。
「
「あんた何言ってんの……?」
あ、若干引かれた。ソウビくんの目に見えない好感度ステータスが下がるSEを空耳した。
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