第10話 怪奇の神社2 蜜蜂視点

廃村を通り過ぎ、山に入り中腹にある神社に向う

薄く茜色に染まりだしたの空の下を歩く


「廃村って、不気味ですねぇ」と思ってたりする?

いつでも袖をクイっと摘んでもいいし、なんなら"キャー"とか抱きついてきてもいいんだよ?


街で見た高そうな店のフランス人形のようなまつ毛、珍しいビードロの青い瞳もずっと見てられる。陶器のような白い肌もたわわな房も全部

僕のものにしたいなぁ〜


ワクワクしながら見てるけど、異人ちゃんは全然キョトンと平気そう。

そうだった、この異人ちゃんは罪人島の出身だった

こんな小さな廃村よりもオドロオドロしい研究所を住処にしていて、島の裏側には罪人の村もあった…化け物と同居もしてるし


少しも気を抜けない得体のしれない意味の分からない化け物。

サソリ蟷螂カマキリと研究室をあって夜通し何かないか探したけど

難しい字の意味が分からない資料だらけで、全然わからなかった。

異人ちゃんと意思疎通してる以外は謎の化け物。

富岡ゲンナイの爺さんに創られたものだと、異人ちゃん自身もよく分からないと言う。

そんな、よく分からないものに懐くから変わってる娘なんだろう


異人の考えなどそんなもの


それよりも蠍と仲が良くなってる気がする

今だってツンケンしながらも蠍は相手をしてあげてる…彼女持ちはやっぱり違うなぁ

余裕があるっていうの?


蠍「お前歩くのが微妙に早いんだよ!」


「…足の長さが違うからな。ゆっくり歩くと陽が暮れるから早足で歩いてるのに」


蠍「遠回しにチビって言いたいのか!」


「胴の方が長いと言ってるんだ」


蠍「口の減らねぇガキだな!」


「(小さいのに)なんでそんな元気なの?喋ると体力使うじゃん!」


そろそろ止めようかな?

蠍は「何だと!」と言って走り出しそうだった


「まぁまあ、そのへんで辞めましょう

それよりもマコトちゃん、山道しんどくない?」いつでもおぶってあげるよ?


「大丈夫、まだ元気だよ」


その白い肌は全身柔らかくて暖かそうだ。

異人ちゃんを最初に見つけたのも、ドロッとした水槽から出してあげたのも僕なのに

なんならコネで里に住まわしてあげてもいいと思ってたのになぁ


神社について蟷螂さんと落ち合うまで待機だ。



異人ちゃんは本をパラパラしてる…本当に読んでるの?(※即読み)

「昔、この辺りで飢饉と疫病が流行って村人の半分が死んだようだな…麓の村が廃村になった経緯が書かれてる。

動かなくなる病人を神社に預けて、いや捨てて、生き残った人達は村を出たんだな…神主の無念がつづられてる。

"今日はまだ若い男が来た年寄りだけではない"

"祟りだ呪いは日に日に酷くなる"

"祈祷も薬も聞かない皆祟られる"

"村人の誰かが祟神の呪をもらったようだ"

"祟神に手を出してはならん"

"地獄の釜の蓋が開いたのだ助けてもう助からない祟からは逃れられない"

"ここは地獄の入口この世の地獄だ"」


蠍「祟りかよ…どんな禁忌に触れたらそんな目にあうんだよぉ」


「何の病が流行ったんだろう?えっと、邪神の呪い??ふぅーん…

最初は家庭内の不和や喧嘩が耐えなくなる…そのうち全身の倦怠感・だるさ、食欲不振、脚のしびれ、感覚の麻痺、むくみ…ってところかフムフム

この神主は祟ばっかり!もう少しまともに症状書いとけよ」


そんなの読まなくていいのに、可愛い子は可愛いものだけ見てれば可愛いままでいれるかな?

醜いものなんて見なくていいのに


「暗くなってきたね……忍者はどうやって火を付けるの?(ワクワク)」


あっマッチで普通にそのへんの紙束を集めて囲炉裏に火を付けてしまった…そんな残念そうな顔をしないで、その顔も可愛いよ。


異人ちゃんは蝋燭を探して引き出しや戸棚をあける、勝手口の外にあった薪を取ってきた。

言われなくてもやってくれて偉いねぇ


蠍「ウロチョロすんな馬鹿女!暇なら井戸で水でも汲んでこい」


「井戸って、あのつるべ落としの?やりたい!島の井戸はポンプなんだ、そもそも蛇口捻ると出てくるし。一度あの井戸を自分でやってみたかったの!!」


蠍「お、おう、やってこい!

何事も経験だ…ってもう行っちまった。

なぁ、今思ったけどな、あの異人ってなんかちょっと変わってねーか?」


「今思ったんですか?」

最初から変わってるじゃないか、蠍さんはどこを見てたんだ


蠍「……なぁ、ここにいて祟られたりなんてしないよな?」


「祟で村が廃村なんて悲惨ですねぇ」

何したか知らないけど、神主もとっとと逃げたらいいのに


蠍「おいっ!今何か話し声が聞こえなかったか?

部屋に誰かいる!馬鹿女かっ?」


「マコトちゃーん?水汲みは……」


ギクッ

窓の外を見る、井戸を見るつもりが本殿のほうに明らかにボロボロの神主が歩いてる!


「蠍さんっ…ここってもう誰もいない神社ですよね?アレは?」ヒソッ


蠍「あっちは血だらけの病人が歩いてる…死んだことに気づいてない亡者か?ひぃ」


「え?どこに?…あっ神主がこっちにくる!蠍さん逃げましょう!マコトちゃん」


蠍「チッ馬鹿女がいねぇ…本殿か?

あっあれはなんだ?ひぃっ…手だ、本殿の奥から無数の手が見える!手がっ手が呼んでる!

あの異人め、何かやりやがったのか?禁忌をおかしたんじゃ

祟られる!俺達まで祟られる!」


「手?そんなものどこに…」

蠍さんには何が見えてるんだ?

おぞましい祟神を見てるかのようだ


「もしかして、敵が?」

その時キラっと糸が見えた!あの時の敵だ!


蠍「鎮めないと、鎮めないと、命にしがみつく亡者の魂を鎮めないと…異人なんかに関わると碌な事にならねぇ!だから俺は嫌だって言ったんだ」


「魂鎮めなんて、そんなの蠍さんに出来るんですか?ちょっと蠍さん?……蟷螂さぁん早く帰って来て、そうだ手紙!」

十姉妹に手紙を託して飛ばす


蠍はブツブツ言いながら本殿へフラフラと向かっていく


異人ちゃんはどこだ

まさかまた敵に連れ去られたんじゃ?

本当に連れ去られるのうまいよねぇ、目立つから人に紛れ込ませられないし


あーあ、今回の任務は失敗かな


つまらないなぁ



外に出て糸が見えた場所に行く

あの時の黒い服と神主の着てた服が落ちてた

神主も仕込み?

狙われてるのは僕らのほうか?

そうだ、異人ちゃんは井戸を汲みに行ったんだ


井戸のつるべ落とし…桶が下がってる

ハッ、異人ちゃん落ちてたりしない?


暗く異様な雰囲気を放つ井戸、そこに白い石が乗ってる……石じゃない、指だ!


手が井戸にかかってる?指だけで井戸にぶら下がるように


ゾッとした

血の気のない白い指だ…まるで西洋人の肌のようだ、まさか?


井戸から手が這い上がってくる

井戸に落ちたのか


『ゔゔゔゔゔぅぅ…』


「いっ……マコトちゃん?」


ぬろんと出てきた白髪、筋張ったか細い腕、顔は見えない…地べたを這うようにこっちにくる


「マコト…ちゃん?ひっ」


『ぎい"い"い"い"ぃぃ…』


飛び上がり屋根の上に逃げる

蠍は武器を手にフラフラとブツブツと何かをつぶやきながら本殿へ入って行く


さっきまで屋根の上に誰もいなかったのに

神主「ここにいてはならぬ…もうすぐ地獄の釜の蓋が開く亡者の執念に取り込まれるぞ!」


「あなたは?」


神主「そなたはまだ生きているがあの2人はもう間に合わぬ…」


「そんなっ…どうしたら」


神主「…本殿へ行ってはならぬ呪術師がいるのだ。祟神となった✕✕✕様の因縁に巻き込まれるだけだ、そなたは逃げよ祟神に手を出してはならん」


神主が音もなく反対側へと飛び降りた


「あっ待って!」


呪術師だって?

祟神って、日誌にあったあの?どうなってるんだ

本殿にだれかいるのか?


その時本殿から蠍が戦ってるような声が聞こえた


屋根を伝い本殿の柱の影に降りて中の様子を伺う、暗くてよく見えないが蠍が小さな体を活かして飛び回りながら誰かと戦ってるようだ


加勢したほうがいいのか、様子を見てたほうがいいのか


ハッ!


後ろで白髪の、まるで老婆のような姿の異人が地面を這ってこっちに来る

青い目は落ちくぼんで黒く見え、白くて長い髪は這い回って汚れてゴミだらけ、白くて奇麗な指は爪が割れて血だらけの骨が見えてる

悪態をついていた声はもう聞こえなくなった

『ゔゔゔぅぅ』とまるで


そう、まるでここはこの世の地獄だ


ハッ本殿の中、柱の陰、至るところから死んだ村人達が出てくる


地獄の釜が開いたのだ!逃げないと

屋根の上でニタァと嗤う神主がいた、悪意が滲み出てるようだ

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