第9話 怪奇の神社

「呪いなんてありはしないんだよ、思い込み、催眠、何かのカラクリなんだ。人間は催眠にかかりやすい人間と、かかりにくいタイプがいるんだよ。君らは前者、俺は後者だ」多分


それより内輪もめに関わるのはちょっとな…

ここまで来たけど一回帰りたい



今、山の中腹にある廃神社にきてる

麓には廃村がある

昔、疫病が流行って村の人口の半分が死に、残りの半分は村を出てしまった。

山の神社は病人を置き去りにして放置された。

最後まで残った神主が死にゆく村人を埋めて埋めて…


秘密結社の忍者が拠点に使うには便利な場所だよな。神社の隣には神主や弟子達世話人の住居跡を再利用してる。


神主の残した日誌には、食べ物も底をつき、病人の世話を1人ではとても出来なくて、逃げるに逃げれなくなった後悔と無念がつづられていた

最後は自分も病気に感染したところで日誌が終わっていた


蜜蜂「そんな古い日誌なんて、読まなくていいですよぉ?」


「書物があったら読んでみたくて…島にいた時にたまに届く本が楽しみだったんだ」


蠍「活字なんて面白くねーだろ」


それでも本棚にある本をペラペラめくって読んでみる。

弟子達が写経したものだったり、よく分からない古い文字を紐で閉じたものだったり。

誰にも見られること無くこの神社と一緒に朽ちてしまうのか



水を汲みに井戸へ行く

木が生い茂り陰になっていて底が暗くて見えない

バケツを落とすとポチャンと音がする…


飲む時は煮沸が必要かな…沢を探したほうが早いかな?

風の吹き抜ける音と共にザワザワと話し声が聞こえた気がした。


ロープを引っ張りバケツをあげる…慣れてない井戸の使い方に、戸惑いゆれてバケツの半分も水が入らなかった


沢を探したほうがいいな、水も汚いし

すぐ近くに水の音がする





――蟷螂視点――


十姉妹を飛ばして手紙のやり取りをしたら呼び出しがあった。

手紙に残せない時のメッセージだ

1人で夜通し走り、昼間は馬を使って一刻も早く待ち合わせ場所まで向かった


いつもの茶屋だ。

合言葉を伝えると奥に案内される部屋に通されると護衛が2人座って茶を飲んで将棋を打ってる


「蟷螂、久しいのぉ」


「一条は老けたな…爺の世話は大変そうだなクククッ」


「ぬかせ!ワシの後はお前を指名してやるでな!」


「遠慮願う」


掛け軸をめくり裏の木を三段階押すとパカンと開いて地下に降りるハシゴがある。

暗さに目が慣れてくると、地下からしわがれた爺の顔が蝋燭の明かりに浮かんでいた…頼むから覗いてくれるな!

自分の顔が不気味な事を知れ


下に降りると和室があり、ちゃぶ台に向かい合って腰掛ける。

蝋燭の明かりでお互いの顔がゆらゆらとゆれる


「蟷螂よ…手紙の事はまことか?」


「これを…」

死体から剥ぎ取った家紋の切れ端を見せる


「ウム………ハァー。他に誰が見た?蜜蜂と蠍かえ?」


「島からの客人も見ました、これは何です?」


「何処から話せば良いやら…

ざっくり話すと、大昔に分家と本家に別れた一族がな…

分家の末弟が優秀で本家の婿にとよくある話じゃ。

本家の嫡男だった男からしたら妹の婿が気に入らん。

分家も同じじゃ、末弟が本家に婿にいくなど兄達の矜持が傷ついたんじゃな。その身籠った妹ごと…」


よくある話じゃと嗤う


全くこれだから忍びは減退の一途をたどるのだ


「では生き残った妹の子どもが?」


「いんや、事態はより複雑じゃ

本家は妹を殺されたと言い、分家は末弟を殺されたと言い。両者は平行線でな…

わしら五条家と吉賀の里はいまだに仲が悪いじゃろ?」


実にくだらない

「結局誰が殺したんです?」


「お互いが疑心暗鬼になってな…本家は分家の仕業じゃと断定しておったが確かなものは無い。

分家は兄弟達の誰かがやったと思っておるが…それも本家の筋書きやもしれん」


「なぜ今になって動き出したんです?」


「前からじゃ、お主ら若いもんが知らんだけでな…四条が逝ってから抑えが無くなったんじゃ

あれは呪いなんじゃ」


「呪い?」


「そう、呪いなんじゃ

優秀だった末弟の諭吉の無念が今も消えておらぬ、儂らが滅ぶまでは止まらんじゃろ」


「……」


「信じておらぬな?

よいか、この話を聞いたものは3ヶ月以内に必ず不幸が訪れる」


イラッ

「ふざけてる場合か爺!客人を五条家の本殿に連れて行くように言われたから、追手を巻くためにわざわざ遠回りして運んでるのだ!

女など足手まといなだけで使えん!」


「怖がりめ冗談じゃ…本当の話はもっと因縁深いものなんじゃ。

覚悟のないものには聞かせてはならぬ、そう決められておる。四条の代わりを今探しとる

四条は逃れられなんだのじゃ、それほど執念深い呪いでの…」



四条さんは私より年上の忍びだった、まだ現役で若手を引っ張っていく適任だったのに。責任感が強くて立派な背中をしていたが…そうかもう会えないのだな。

この件が終わったら墓参りでもしよう


結局ボケ爺は何の話だったのだ

中途半端に吉賀の里の話を聞かされただけで時間の無駄だったな…呪いだの何だのとくだらない。


はしごを登り最初の部屋に出ると将棋が終わりそうだった

長いこと話したつもりはないが、時間が経ったようだ。

一条さんの手に見覚えのある手紙があった


「おう、お前の十姉妹が手紙を持ってきよった」


私が地下に行ってる間に勝手に読んだのか?


【客人が行方不明、敵確認至急帰られたし】


「よぉ 団子でも食ってくか?」


「帰る!」



馬を走らせ来た時同に休まず走る

あの馬鹿娘!また居なくなったのか、目を離すとすぐにいなくなる!

首輪をつけて鎖に繫いでおかねばならぬのか?


蟷螂は何となく懐いてきている少女の姿を思い浮かべていた。

強がっていたりべそかいて泣いたりした、たった数日のことだが色々あった


情が移るのは避けたかった

どうせ屋敷の座敷牢にでも監禁されて飼い殺しにあう

運が悪ければ殺されたとて……ズキッ


胸が少し痛んだが気づかないふりをする

認めてはいけない、気が付かないふりをしなくては

毛色の珍しい異国の少女など、お偉方が見逃すはずはない

短い旅のつかの間……ハァ


一人でいると色々と考えてしまう

早く着くことだけを考えて足を動かした


拠点の1つにちょうど良さそうな忘れ去られた神社、麓の村もとっくの昔に廃村になっている

山に囲まれて不便で忍にはちょうど良くて人が暮らすに向かない土地。

ここの廃神社を整えたのも四条さんだったはず

ありがたく使わせてもらいます


山に入ると一瞬、異様な気配を感じた…気の所為か?

いや逆だ、動物や鳥の気配がない!


何かがいる!



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