第8話 呪いとか非科学的

蠍「こんなやつに配慮はいらねーよ。夜中走らせて都に連れてきゃいーだろ!」


蜜蜂「蠍さん、無理に歩かせて疲れてヘロヘロな所を襲撃とか勘弁ですよ?それより本当にヨシノを仕留めたのってマコトちゃんなの?こんな細腕で?本当に?」


蟷螂「大腿四頭筋(※太もも)は、しっかりしてた。腹も腰も引締まってる、足も長いし体幹もある、戦えない訳じゃないだろう」


蜜蜂「……しっかり見たんですか?」

蠍「……お前ムッツリだったんだな」


蟷螂「見てない!チィッ!」



やつ等がごちゃごちゃ言ってる間に鞄の中身を確認する

盗まれたものもないし、変な紙が巻き付いてることもない。

にわかには信じられないけど、コイツ等は呪いとか非科学的な迷信に凄く敏感だった。

そんなの思い込みとか見間違いとか…催眠とかも有り得るな

本当に呪いなんてあるなら罪人の流刑地は呪いで溢れてるだろ阿保じゃね?


それより念願ってほどじゃないけど、やつ等の地味な忍者服を着せてもらえた!

コルセットはもういらないが、ペチコートは貰っておこうかな。上から鎖帷子を着たけど胸がちょっときつくて他がガバガバ。サイズ違ってないか?

ズボンも7部丈?あ、股下の長さが違うのか。

こっそり懐に銃を呑んで、ズボンのポケットにマンチェスターナイフを、首に紅水晶をかけてヨシ!


忍者の服を来たら高く跳ねれそうな気がして、ピョン!ピョン!

あれ、40センチくらい?どうやって塀の上や屋根を飛び越えたりできるの?


蠍「何やってんだ阿保女!妙な動きしてんじゃねー!」


「高く跳ぶ練習?」ヤダいつから見てたの?


蜜蜂「阿保なところも可愛いですよ」


蟷螂「つづらの荷物は置いていく、必要な物だけ持っておけ」


大事な事だ!

下着のニットのパツンだけは死守する、フンドシなんて着けれるかよ!

非常食のクッキーを取り出して後はいいかな、リュックに詰めて出発する


カツラを被せられて黒髪になり、夜も更けた暗い道を月明かりを頼りに進む。

目が慣れてくると月明かりでも結構見えるもんだね。

こんな遅い時間に外を歩くなんてなんかドキドキワクワクするな!


クッキーをサクサク食べてると

「食っておけ…チッ」と蟷螂がにぎり飯をくれた。

その舌打ちは癖なの?


にぎり飯の中には酸っぱしょっぱいのが入ってた、これが梅干しらしい。

じーさんが"梅酒は好きだけど梅干しは嫌いじゃ!"と言ってた梅干しだな!

蟷螂も蜜蜂も蠍も普通に食べてるから普通に本土で食べられてるものなんだな…


信じられない事に夜通し歩かされた

空が明るくなってきて、この3人をぶん殴りたくなった。平坦な道でも長時間歩くのしんどい足が痛い。もう全身筋肉痛だよ!


蜜蜂「大丈夫?」


イラッ…しんどすぎて喋りたくない

なんてスタミナだ、どうしてそんな元気なの!

村が見えてきて、ようやく休憩できた。

草むらに倒れ込んで草の匂いを嗅ぐハメになるとは。


蜜蜂がなんか話しかけてきたけど、適当に「…うん…うん」と生返事しか出来なかった。


そこで屋根なしの乗り合いバスに乗ってまたどこぞへ行くらしい。

蜜蜂からにぎり飯を貰って、全部口に入れた所でウトウトして寝た

所々記憶があるのは、ヨダレが垂れないように何度も上に向かされた事と。

途中から蟷螂あたりに背負われて、あぜ道を進んでいた事だ


視界の端に黒い影が見えた…

実はバスに乗ってる時も見えたんだ…


蟷螂「おい、起きたなら歩け」


背負われて心地よかった時間はおしまいのようだ

絶対に背負ってくれたほうが早く進めると思うんだけどね?


蠍「やいデブ!自分で歩けよ」


「デブじゃない!チビ!」


蠍「チビじゃねーし!オメーがデカすぎるんだよデブ!」


蜜蜂「まぁまぁ、2人とも目立つから、ね?」


蠍座「ハァ行くぞ」


「あ、まただ。黒い影が木の後にいた!」


蜜蜂「え?」


蠍「何だとっ!」


蟷螂「呪詛か?」


「んなワケないじゃん!確かめる!」

草むらをサクサク進んで木の後に回る…いない

けどなんだ、微かに臭い?


後ろから蟷螂に肩を掴まれて

「勝手なことをするな!」と怒られた。


「…見間違いじゃないバスの時も見たんだ!」


蠍「お前!荷物全部捨てろ!呪われてやがる」


「何でだよ、付けられてるだけだぞ!それになんか肉が腐ったような酸っぱくて臭い匂いがしたんだ!」


蜜蜂「呪いの化け物は臭いって事?」


「…違う、何度も同じものを見せて呪われてると思わせるんだ。一種の洗脳だよ!

そのうち何も無いのに、影があるように脳が勝手に勘違いするんだ。

多分、心理的負荷を与えて心身弱らせてからヤるつもりなんだよ。

それに言い方が悪かった、腐った酸っぱい匂いは、じーさんの足の匂いに似てんだよ!

おそらくだが、黒い影は腐ったような足の匂いの奴だ!

身長も蟷螂さんより低くて蠍よりデカかった!」


蜜蜂「犯人は足の臭い人間?しかも蟷螂さんから蠍さんの間って幅広すぎません?」


蠍「俺が小さいって言ってんのか!おぉ?」


蜜蜂「そんな事言ってないですよ!…やっぱ低いの気にしてるんですね(ボソッ)」


蠍「聞こえてるからなテメー!オラァ」


蜜蜂「えっ、わっ、ちょっと、辞めて下さい!リーダー!」


蟷螂「阿保か2人ともやめろ…尾白、匂いを探せるか?」


凄い!手品のように懐からイタチが出て来た

尾白は木の後ろの匂いを嗅いだ後に、スルスル木に登って鼻をクンクンした後に戻って来た

木と木の間を猿のように飛び移って逃げたようだ

サワサワと風が強いから逃したのか


視線を感じて振り向く、けど何も無い。

背筋が寒くなる感じがしたが気の所為だと思うことにした。

呪いなんて有る訳が無い


「あの、おぶってくれてありがとう。

おかげで元気出ました…クッキー食べますか?」


蟷螂「…いや、いい。そなたが食べろ」


蜜蜂「あ、じゃあ僕が食べますぅ」


渋々1枚あげた、俺は心が広い大人だから


それから暗くなるまで歩き続けて、野宿と宿屋のある街道まで歩くのとどっちがいいか聞かれて

街道まで歩くと答えた。野宿はねぇ?

布団で寝たいし、そろそろちゃんとした飯が食いてぇ!

どこかのバスの停留所で立ち食い蕎麦のすげーいい匂いがしたんだ。じーさんが時々食べてたキスの天ぷら蕎麦が懐かしい…


街道に出てしばらく歩いたら村に着いたようだ。

結構遅い時間になってたけど1軒しか無い民宿に泊まった。

ボタン鍋が出て来た、腹減ってると何でも美味しく感じるね



猪肉を初めて食べたからか、その夜は暑くて寝れなかった。

一人部屋を与えられていた、部屋の外に蟷螂が待機してるかもしれない。

少し風に当たろうと小窓を開けた


いた!


黒い影が村の中に!目を離さず睨みつける!

足で鞄を取り中からサイレンサー付きの銃を手に取る。窓が小さいから向こうからは手元の銃が見えないはずだ。

距離は、ギリギリ射程内だけど当たるかは微妙…ドクンドクンと心臓がうるさい。

落ち着け…落ち着け…落ち着け…まぁ、外れてもいいか。

威嚇のつもりで引き金を弾いた。


バシュン…ドサッ


当たった?!ドキドキする!まさか当たるなんて!

急いで部屋の扉を開けるが、廊下には誰もいなかった。

バン!と隣の部屋の扉を開けて蟷螂を探す


蠍「わっ!何だよ夜這いか!!」


蜜蜂「え?!」(※ちょっと嬉しそう)


「蟷螂さんは?」


蜜蜂「何で蟷螂さんに懐いてるんですか!そんなに蟷螂さんがいいんですか!僕のほうが若くて硬くてもつのに!」


蠍「落ち着け!俺には美人の彼女がいる!早まるな!来るな!匂いが移るだろ!来んなよ!」


「何の話だよ?お前が落ち着けチビ。そんな事より村の中に黒いのがいたの!

銃で撃ったら当たったみたいなんだ!見に行く!蟷螂さんに知らせて!」


蠍「それ、玩具のピストルじゃなくて本物だったのか…」


蜜蜂「蟷螂さんは連絡を取りに行っちゃいました…とりあえず見に行きましょう」


3人で外に見に行く

「宿屋の裏庭の先、林になってる木の前にいたんだ、早く!匂いが消えちゃう!」


蠍「わかった待て!周りを警戒しろ阿保!」


「確かこの辺りだったのに…」と俺のいた部屋を振り返る


ゾワリと鳥肌が立った

だって俺の部屋の小窓から覗いてるんだ、あの黒いのが


すぐ側にいた蠍の頭を叩いて指を示す

蠍も気付いたのか警戒姿勢を取る


蠍「お前が呪われてるとしか思えねぇ」


蜜蜂「ハッ避けて!」


ドンッと蜜蜂に突き飛ばされて、そのまま転がりすぐに伏せて草陰に隠れた。


蠍「くっ、どこから攻撃してきやがる!」


近くから臭い匂いがした…

匂いを探すと、黒い布と仮面みたいなのが落ちてた。月明かりにキラリと釣糸が見えた


もしかして、これって

釣り糸で黒い布を垂らして影に見せてたのか?

じゃあ、あの小窓の黒いのも釣り糸?!あれはスケープゴートか!


蠍が小窓の影に近寄ろうと動いた


「蠍止まれ!小窓のはハリボテだ!本体は別にいる!臭い匂いを探せ!」


蠍がクルンと方向転換してジグザグに走った!


蜜蜂が林の方に向かって走り出し、キィン、キィンと金属のぶつかる音がする。何かを弾いたようだ。


サクサクサクと落ち葉を踏む微かな軽い音がする

忍者ってすげーな、こんな暗闇でも走り方が忍者だ!

いつの間にか蠍も消えていて1人で草むらに隠れてる。


すると蟷螂が帰って来たのか

「おーい、いるなら返事しろっ!出て来いよー、もう大丈夫だぞー」と小さく叫びながら走ってきた。


何となく、本当に少しだが違和感があった。

信じられないけど、蟷螂のそっくりさんだ!

どうしよう、敵か味方かわからない…あ双子かな?

返事をしようとして思い出した、知らない人について行ったらいけない


それになんかあいつ嫌な感じがする…

俺は今、白くなった枯れ葉の上にいる。白髪の髪の毛が目立たない!大丈夫見つからないはず…


なのに目が合った!

蟷螂さんじゃない敵だ!


走ってこっちに来たから、草むらから飛び出して応戦する。

勝てるとは思えない、だってめちゃくちゃ早いもん!

力のかぎり足を前に突き出して蹴りを入れる、顎をかすった!

あれ、イケる?

そのまま足を上げてカカト落としするが、腕をクロスにして防がれた。

お互い後に飛び退いて距離をとる


向こうは脇差しって言うの?

刀を出してきた!ズルくない?


ポケットからマンチェスターナイフを出して一番刃の長いのを出す。

さっきの釣り糸を柄にくくりつけて準備できた!


先制はもらうぜ?腰を落として低い位置からナイフを思いっきり投げてサッと避けられる

そのままこちらに走ってくるけど、投げたナイフの釣り糸が木の枝にかかり遠心力を加えて振り子のように後頭部を目掛けてブーンと音が出た。


奴は振り向きざまに剣で弾いた。


そして「わっ!?」と足を引っ掛けてコケた

ナイフはデコイだ。足元に張った釣り糸にうまく掛かってくれたな


そのタイミングで、持ってた剣の柄を蹴りとばす!(※手首骨折)

蹴り上げた足をそのままおろしてダンッと踏みつける!


「うぐぅっ!」


即座に肩と膝裏に銃を一発づつ至近距離から撃つ。

集中力が研ぎ澄まされると、まるで全てがスローモーションのようにしっかり動きが見えた。


「ギャァァァァァァ!!」


肩と膝裏はじーさんに習った殺さない程度に動きを止めるための急所だ!ちなみにものすごく痛いらしい


「ギャァギャァ喚くなよ、目的は何だ?誰に雇われた?何で俺を狙う?死にたくなければ答えろ

返答次第ではまた歩けるように鉛玉を取り出して治療してやるよ」


「ゔぐぅぅぅ…痛っってぇー!ぐぅぅぅ!」


そうこうしてるうちに、蠍と蜜蜂がこっちに来た。

両肩を撃ち抜くべきだったと後悔した。

反対の手で自分の喉を掻っ切ってしまった


「ゴボッ…グッ…ウジ虫ども…呪われろ…裏切り者め…我らの恨み……」ドサッ

ようやく静かになって動かなくなった


蜜蜂「……あ、無事ですか?マコトちゃん本当に戦えるんだね、凄かったよ?」


「いつから見てたの?」ってか見てたなら助けてよ!


蠍「あの妙ちくりんな短剣投げたくらいからだ…今まで狙われてんのお前かと思ってたけど」


「なるほど、俺は内輪揉めに利用されたか巻き込まれたんだな?

全く、恨みを買ってるのは君らじゃないか。

呪われてるの何だのと…島から出たばかりの俺が呪われるほどの恨みを買ってるとは思えなかったしな」


蜜蜂「蠍さん、何か知ってるんですか?」


蠍「俺らの代じゃねーよ。それこそ長老の現役世代の話だけどさ。抜け忍を一斉に殺したんだと…。俺も詳しくは知らねーよ、生まれる前の事件だ。蟷螂は何か知ってるんじゃね?」


蜜蜂「伊達に年取ってないですね」

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