第43話 サムズアップとなる

 翌日――


 朝食で五人が食卓を囲む。最後にアリシアが座ると――


「アリシアおねえちゃん。そのキレイ!」

 四歳のサリアが気づいてそんな声をあげるので、ボクはドキッとする。


 そう、昨日ボクがアリシアにあげたあの髪飾りをアリシアはさっそく付けていた。


「サリアちゃん。ありがとう。どう? 似合っているかしら?」

「うん、似合っているよ! タローもそう思うでしょ?」


「アリシアお姉ちゃん、キレイ!」とタローもほめる。


「タローくんもありがとう」

 アリシアはウレシそうに二人へお礼を言う。


「あれ? アリシア、髪飾りなんてしていたんだ。ぜんぜん気づかなかった」

 いただきますも言わず、料理に手を出していたタバサがそんなことを言う。まあ、タバサらしい。


 でもまあ、アリシアがさっそく付けてくれたのが、一番うれしい。


「ねえ、それってヒロトお兄ちゃんがプレゼントしたの?」とタロー。

 ――えっ?


「な、なぜ、それを⁉」

 ボクは慌ててしまう。


「やっぱり、そうなんだ。アリシアお姉ちゃん、ヨカッタね!」

 タローがサムズアップしながらそんなことを言う。それって、どういう意味?


 アリシアは顔が真っ赤になってうつむいてしまった。



「こ、こら! 大人をからかうな!」

 ボクはそんなことを言ってしまう。



「なんだよ。アリシアだけってズルくねえ? 次はオレに買ってくれよ。でも、髪飾りはいらないや。食いモノがイイな」とタバサ。頼む、空気読んでくれ。


 そのあとは、ふたり気まずそうな表情のまま、朝食を食べた。



 それからしばらくして、ボブ、サム、ジャックの三人が工房にやってきた。いつもより、開始時間を遅らしたのだが、それは昨日、受注のダブルブッキングしてしまったため。残業してもらって、その日までに武器屋のオヤジぶんを用意してもらったから、今日はゆっくりしてもらった。


 午前中の仕事は順調に進み、そろそろお昼にしようかというとき、王宮を警備する近衛兵が工房に入って来た。


「失礼します! 来客をお連れしました!」

 敬礼しながら、そう伝えられる。来客?


「すみません、ヒロト・ニジカワさんはどなたでしょう?」


 近衛兵のうしろから、若い男性がそう声をかけてきた。男のボクから見ても、かなりのイケメンだ。


「ヒロトはボクですが」と応える。

「はじめまして。冒険者ギルドのクエストを見て、お伺いしました」


「――えっ?」

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