第41話 問題山積みとなる
タバサや現地人の盾職人三人がボクの工房で働き始めてそろそろ一週間。
「お
「ボブさん、『お頭』と呼ぶのはやめてとお願いしたはずでが……ヒロトでイイですよ。てか、もう出来あがたのですか⁉」
ボブ、サム、ジャックの三人はさすがにイイ腕をしている。自信があると言っているのは過言ではなかった。すぐにボクの要求する盾が作れるようになる。今ではボクよりも作るのが速いくらいだ。
タバサも戦力になってきている。
ただ、そうなると盾の在庫がたまって、その置き場に困る。
「仕方ない。工房に置けなくなった盾は、空いている部屋に入れておくか……」
頭を
「ごめんなさい……私の作業が遅いばかりに……」
アリシアが申し訳なさそうに頭を下げる。
「いやいや、アリシアはガンバっているよ! こっちは五人でやっているんだ。魔石の準備が追い付かないのは当然だよ」
アリシアも魔石に魔法を封じ込む作業を毎日二十個やってもらっている。それも休みなしだ。
家事もやってもらっているし――さすがに彼女の疲れが心配だ。
「使用人を雇ってもイイって、前、殿下は言っていたよな……家事だけも他の人にやってもらおうか……」
魔石に魔法を封じ込める魔導士も冒険者ギルドに頼めば応募があるかもしれない。
「さて、今日でも行ってみるか」
その時、「お頭、もう木材がないですぜ」とサムさんが言ってきた。
「えっ? もう?」
うーん。完成品もそうだけど、材料の在庫管理もなかなか追い付いていない。
「ワイがタバサに頼んでおいたぞ。おい、どうした?」
ジャックさんが確認すると、タバサは「昨日、注文書を出したよ」という返事があった。
「こんちは、材料屋です!」
ウワサをすれば――まあ、これで木材不足で開店休業の危機は免れた。
「すみません、量が多いので、手伝ってもらえませんか?」
「――量が多い?」
言われて外に出ると……
「なんだぁ⁉ この量は⁉」
普段は盾、百個分くらいをまとめて注文するのだけど……
「はい、いつもの十倍を持ってきました」
「イヤイヤ、そんなに要らないよ」
ボクは慌てる。
「ですが、注文書にはほら……」
材料屋が手にした注文書を見る。この文字は……
「オイ、タバサ……ゼロがひとつ多いぞ」
頭がイタイ……
「えぇ? オレはそんな間違いしないぞ」
大きなムネを張って言い切るので、ボクはその注文書を見せる。
「こんな汚い文字、タバサ以外あるかぁ!」
すると、タバサは「ハ、ハ、ハ、ホントだ。ワリィ!」と笑う。絶対に悪いと思ってねえ!
ボクはため息をつく。さすがにこちらのミスなので、全部買い取ることにした。
みんなで、荷馬車から下ろして、とりあえず、空いている部屋に押し込む。
「まいったなあ……どうするんだよこれ……」
しばらくは、材料に困ることはないが、それはそれで保管状態などに気を使う必要がある。温度と湿度の変化が激しいと、木材は割れたりして使い物にならないのだ。
「ちわぁ! 魔盾の受け取りに参りました!」
その声は新しく取引を開始した王都で一番大きな商会、『王都物産』の若ダンナ。王室ご用達の店ということで、スチュワート皇太子殿下から、この店にも卸してほしいと頼まれたのだ。
「はい、二十枚でしたね」
そう言って、完成品を用意していると――
「ヒロト君、いつまでたっても持ってこないから、取りに来ちゃったよ」
そう言いながら中に入ってきたのは、おなじみ武器屋のオヤジだった。
「えっ? 明日じゃなかったでしたっけ?」
「何を言っているんだ。今日だよ。なんだ、出来ているじゃないか」
そう言って、オヤジが魔盾の置いてあるところに向かう。
「おいおい、これはウチが買ったモノだよ」
「えっ? 王都物産の若ダンナ? それじゃ、ウチの分は?」
ボクは頭を抱える。納品日を間違えてしまった。まだ、オヤジ分の魔盾はできていない。
ああ、これはなんとかしないと……
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