盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる

第24話 国宝級となる

　アーノルドさんに「待っていろ」と言われて、二時間が経った。

　その間、ボクとアリシアはアーノルドさんからあずかっていた盾を魔盾（まじゅん）へと改造する作業を行った。

　ゴブリンキングを討伐したときのモノだと言っていたけど、本当に大きな魔石である。それに第三階位の強化魔法を封じ込めてもらったのだが、かなりの魔力と体力が必要だったようだ。

　術のあと、アリシアが倒れてしまったため、慌てて彼女を介護する。

「ゴメンナサイ。お忙しいのに」

「なに、大丈夫だよ。それより、少しは元気になった？」

「はい、かなり楽になりました」

　顔色も良くなってきたのでホッとする。彼女がガンバったおかげで、第三位階の『魔物の敵意を引き付ける魔法』を封じ込めた魔石ができた。本当に感謝だ。

　その魔石を今度は修理が終わったばかりの超合金（オリハルコン）製盾に組み込んだ。

「よし、これで完成だ！」

　できあがったばかりの盾を立てかけた。

「うわぁ！　カッコイイですね！」

　生まれ変わった盾を見て、アリシアは目を輝かせる。

「うん。魔石が似合うように、盾のデザインも変えてみたんだ。どうかな？」

「はい！　とってもイイと思います！」

　そう言ってもらえると、とってもウレシイ！　ちょっと大変だったけどやってみてヨカッタ！　

　その時、工房の外でなにやら音がした。のぞいてみると馬車が止まっている。見事な装飾はあきらかに貴族の馬車。まさか、ブルームハルト侯爵がまたなにか嫌がらせをしてきた⁉

　すると馬車から降りてきたのはアーノルドさんだった。

「えっ？　どうして？」

「よ！　ヒロト！　何度も顔を出して悪いな」

　アーノルドさんの後ろからもう一人、いや二人、男性が下りてくる。

　ひとりは真っ青なチェーンメイルに白銀の防具を纏った騎士。ボクは彼を何度か見たことがある。アーノルドさんが所属するパーティー『ブルズ』のリーダー、勇者のアレン・パストゥールさんだ。

　もう一人は真っ白な軍服を着ているのだが、初めて見る。年齢は三十歳くらいか？

「おひさしぶりです、ヒロト君」

　アレンさんは、職人のボクにも敬語を使ってくれる。目上、目下の人にも対等に接してくれるところは、さすが勇者だなと思う。

　もちろん、この人も召喚人（しょうかんびと）で出身はフランスと聞いている。年齢は教えてもらっていないのだが、アーノルドさんと同じくらいだと思うので、二十代後半だろう。

　ボクは「おひさしぶりです」と頭を下げた。

　三人が工房に入ってくると、アーノルドさんはさっそくできたばかりの盾に目が向かう。

「おおっ！　これが新しい魔盾（まじゅん）か！　すげえ――」

　三人は盾の前で驚きの表情を見せていた。

「こ、これはすばらしい！　ぜひ、我が王家のコレクションに加えたい！」

　白の軍服の人がそう声を張り上げる――ん？　今、なんて言った？

「殿下、ダメですよ。これはケルベロス討伐のカギとなるモノなのですから」

　えっ？　殿下――⁉

「そ、そうだったな……ならば、こうしよう。見事、ケルベロスを討伐したあかつきには、この盾を討伐の証として王家へ奉納してほしい。もちろん、相応の褒美を用意する」

　白の軍服の人がそう言うと、二人は「それなら、たんまり褒美をもらわないと割に合わないな」と笑っていた。

「あ、あのう……」

　戸惑っているボクに気づいたアーノルドさんが、やっと軍服の人を紹介してくれた。

「これはゴメン。あまりにもすばらしい盾だったから、忘れてしまったよ。このお方は、ウィルハース皇太子、スチュワート殿下だよ」

「――えっ？」