第12話 魔盾(まじゅん)となる

 それから場所を替え、もう少しゴブリンの出現率が高いポイントに移動。二人で狩りを続けた。

「うん。この盾とアリシアの強化魔法のおかげで、ボクでもちゃんと狩りができる!」


 これなら生産職の自分でさえ、ゴブリン狩りで生計が立てられるんじゃないか?

 ――そんなことさえ、考えてしまう。


 結局午前中だけで、ボクは六匹、アリシアにいたっては十四匹のゴブリンを狩った。おかげで、帰る時にはリュックの中が魔石でいっぱいになる。


「私、剣の戦闘スキルがレベル四になりました!」

 ダンジョンに入った当初は危なっかしく剣を振っていたのに、たった三時間でずいぶん鋭い剣さばきになっていた。最後の二、三匹はゴブリンが攻撃する前に倒している。


 アリシアはもう充分、ダンジョンでやっていけそうだ。


「さて、そろそろお昼だし、戻ろっか?」

「はい!」


 帰りも乗合馬車に乗る。昨日までなら馬車に乗るなんて贅沢だと気が引けてたのに、今はまったく罪悪感なく乗れる。それだけでも、なんか気分がイイ!


 工房に戻ったら、朝食べた残りのシチューと途中の屋台で買った串焼きの肉を口にした。一品、増えただけでも食卓が豪華になった気がする。


「アリシア、お願いがあるんだけど」

「はい、なんでしょう?」

「食事が終わったら、魔石にまた『魔物の敵意を引き付ける魔法』を封じ込めてほしいのだけど」


 今日、獲得した魔石は全部で二十個。それを全部使って、盾に取り付けたいと伝える。


「これはきっと売れるぞ!」

「はい! 私もそう思います」


 それだけ、今日の狩りは本当に上手くいった。こんなに狩りが楽しいなんて、いままで思いもしなかった。この盾のおかげだ。



 さすがに二十個全部に魔法を付与するとなると、アリシアの体力が心配なので、一個終わったら、全回復するようにお願いした。


「大丈夫です! 二十個くらいなら今日中に終わらせます!」

 やる気を見せるアリシアに、「くれぐれもムリしないで」と念を押す。


 アリシアが魔石に魔法を付与している間、ボクは魔石を盾に取り付ける金具を作る。

 そうして、夕方までに二十枚が完成した!


「ヒロトさん、やりましたね!」

 アリシアが満面の笑顔を見せている。


「うん! これから魔盾まじゅんを売りまくるぞ!」


「まじゅん? ですか?」


 ピンとこない――という表情をアリシアがしているので、ボクは説明する。

「そう、魔石を組み込んだ剣を魔剣というでしょ? これは盾だから魔盾まじゅんだ!」


「そうなんですね。まじゅん――なんか、カッコイイ響きですね!」

 そう言って彼女も喜んでくれている。


「だろ? 今日はもう遅いので、明日の朝、武器屋に売り込みに行こう!」


 ということで、今日の仕事は終わろうということになる。


 夕飯もアリシアが作ってくれた。彼女の料理は本当にウマい!


 そして、今晩も同じ部屋で寝ることに……ボクは、宿代を出すから宿に泊まるように言ったのだけど、彼女がここでイイというので、仕方なく……まあ、さすがに今日は疲れたので、ボクもぐっすり寝てしまったけどね。だから、いかがわしことは一切してないよ……残念ながら。


 そして翌朝。また、彼女のエプロン姿を拝めました。

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