第10話 ゴブリン狩りとなる

 ポイントに到着すると、すぐに一匹のゴブリンを見つける。

「よし、アレを狩ろう」


 ゴブリンのような魔物は人を見ると襲う習性がある。どうやって人だと認識しているのかは、魔物によって異なっているようなのだが、ゴブリンはふつう、目視によって『敵』だと判断しているようだ。


 しかし、あまり視力は高くないようで、こちらが結構近づかないと襲ってこない。その距離はだいたい二十メートルくらいだと言われている。ただし、音には敏感なので、ボクたちは小声で会話する。


「まずは、ボクからやるね」

「はい、よろしくお願いします」


 ボクはゆっくりとゴブリンに近づく、その後ろにアリシアもついてきた。

 だいたい二十メートルの距離まで近づく。ゴブリンが一匹でいることを確認して、もう少し接近――


「シャァァァァッ!」

 ボクらに気づき、奇声をあげるゴブリン。そのまま、こちらに向かってくる。

 ゴブリンは身長一メートルくらいだが、とても動きが早い。あっという間に、目の前までやって来た。


 今だ!


 盾に魔力を込める。すると、盾に取り付けた魔石がボウッと淡く輝いた!


「ギャア!」

 再び奇声をあげると、そのまま飛びかかってくる!

「うわっ!」

 びっくりして、ボクは仰向けに倒れてしまった。


「ヒロトさん!」

 アリシアの声だ。ダメだ。声を出したら、ゴブリンの敵意がアリシアに向いてしまう……って、あれ? なんかヘンだぞ。


 ガツッ! ガツッ! ガツッ!


 そんな、擬音が聞こえる。ゴブリンが手にした石斧を何度も振り下ろしている――しかし、攻撃しているのは、ボクの手にしている盾だけだ。ボクのカラダには攻撃してこない!


 よし! 思った通りだ!


 盾に付与した、『敵意を引き付ける魔法』が発動して、ゴブリンの敵意が盾だけに向かっている!


 ボクは右手に持った剣をゴブリンに振り下ろした。

「ギャアァァァァ!」

 ゴブリンが悲鳴をあげるが、まだ生きている。そして、石斧を振り上げ、また盾を攻撃し始めた。


 ボクには戦闘スキルがないので、剣を振っても攻撃力は最低ライン。最弱のゴブリンでも一度の攻撃では倒せない。


「この! この!」

 ボクは二度、三度と剣を振り下ろすが、まだゴブリンは死なない。


 前回は、たしか五、六回攻撃して、やっとゴブリンを倒せた。すると、あと三回くらい攻撃すれば……


 その時、ボクのカラダがボウッと輝いた。


「えっ? これって?」

「今、攻撃力強化の魔法をかけました!」

 アリシアだ。そうだった。アリシアは強化魔法が使えたんだ。


 それなら、戦う前に魔法を掛けてもらえばよかった――と後悔するのだが、もういまさらだ。

「これで、どうだ!」

 剣を振り下ろす。


 ドスッ!


 ボクの剣が、ゴブリンのムネに突き刺さった! 明らかに攻撃力が上がっている!


「ギャアァァァァ‼」


 ゴブリンが断末魔の叫びをあげると、そのカラダがバラバラとくずれ散らばる。そして、煙のように消えていった。最後に小さな塊が地面に残る。魔石だ。

「やったぁ! 倒せた!」


「ヒロトさん! 大丈夫ですか⁉ ケガはないですか⁉」

 慌てて近づくアリシアだが、ボクはまったくの無傷。そのまま、立ち上がる。

「うん、思ったどおりだ。ボクのカラダには攻撃してこなかった!」


 ゴブリンは盾ばかり攻撃していた。つまり、敵意を引き付ける魔法を付与した効果は確認できたことになる。

「そうなんですね。と、いうことは?」


「大成功だ! これなら、ほとんどリスクなしで魔物を倒せる!」

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