第9話 ダンジョンへ――となる
ダンジョンに入るには、入場許可を冒険者ギルドからもらう必要がある。
アリシアの体力が戻るまでの間、ボクはギルドに行って、二人分の入場許可をもらってきた。
「アリシア、本当にもう大丈夫?」
「はい。おかげで、すっかり元気になりました」
そう言って、チカラこぶを作ってみせるアリシア。
「それよりも、乗合馬車を使って良かったのですか?」
王都の城門から最も近いダンジョン、ウィルハース渓谷までは歩くと二時間くらいかかる。馬車で三十分くらいだ。馬車は一人銀貨一枚かかるので、経費を浮かせたい冒険者は往復歩く。だけど、馬車のほうがやはり早い。
「うん。歩いている時間分を狩りに回せば、そのぶん儲けが出るでしょ?」
銀貨一枚で一時間半、余計に狩りができる。その間にゴブリン一匹を倒して魔石を手に入れらればもとが取れる計算だ。
「確かにそうなんですけど……」
まだ一度も魔物を狩ったことがないアリシアは、自分が役に立つのか心配のようだ。
「きっと大丈夫だよ。コイツさえあればね」
そう言って、魔石を装着した盾を手にした。
「はい! 私もがんばります!」
そんなことを話している間にダンジョンの入り口へ到着する。許可書を係の人に見せて、さっそく、中に入った。
「さて、どこがイイかな?」
ここのダンジョンは古い鉱山抗跡なのだと聞いたことがある。なので、中は真っ暗だ。盾に魔力を加えると魔石が光って辺りが少し明るくなった。それだけでも便利だ。
「ヒロトさん、それは何ですか?」
ボクが広げた羊皮紙を見て、アリシアがたずねてきた。
「ああ、これはこのダンジョン一階層の地図なんだ」
以前、アーノルドさんからもらったモノだ。彼はこのダンジョンの十階層まで制覇しているので、一階層で狩りをすることはもうない。だから、この地図は用なしなのだそうだ。
「アーノルドさんに、一階層で狩りができる場所を地図に書き込んでもらっているんだ」
「へぇ……そうなんですね」
アリシアが地図をのぞき込もうと、顔を近づけてきたので、思わずドキッとしてしまう。そして、なんかイイ香りもした。女の子って、いつもこんな香りがするのだろうか……
「一階層といっても、ずいぶん広いんですね」
「う、うん。一階層だけでも王都と同じくらいの広さらしいよ」
「そんなに広いんですか?」
アリシアは目を丸くして驚いている。
「それじゃ、今日は入口から近い、このポイントにしよう!」
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