第5話 それ俺の話しじゃないよね?
「ヴラドに聞きたいことがあるんだけど」
「はい、何なりとお聞き下さい」
「卒業式の日に何があったの?」
「まずは卒業式の日に何があったのかを説明する前に、説明することがございます
お嬢様はファンタジーをどのくらい信じてますか?」
ギクッ猫が喋る事がバレたのか?
それとも、俺がマリーウェザーに憑依したことかな?
「ファンタジー…ってソレナに美味しいの?」
「クフフお嬢様はルーンをお使いになりましたよね?妖精の祝福も」
妖精の祝福とは、この世界の法則の1つで
スチュワート商会も妖精の祝福と言う魔法陣のようなもので、効果は微妙に暖かくなるもの。
副産物として、木や草にやると春になったと勘違いして実ったり花が咲いたりする。
そこから妖精の祝福と言われてる。
ルーンとは
山の中腹にある学園の後ろに古代の遺跡っぽい洞窟(※地元の観光スポット)の事を面白がって一部の厨二病学者や学生がダンジョンと呼んでる
学園の山の麓にミネルヴァと言う研究都市があって、そこのエジソン博士がルーンの一部を解明した。
俺の記憶にもぼんやりと教会がルーンを禁忌扱いしたがり、その理由が独占したいからだとバレてルーンが一般に研究されるようになった。
観光スポットになってるから遺跡を普通に見に行ったけど
ルーン文字らしき文字がたくさん掘られてるのを見たことがある。
ちなみにエジソン博士は、ウチの公爵家がパトロンだ。
エジソンがまだ駆け出しの若い頃に俺の家で家庭教師してお小遣い稼ぎしてたんだって。
何度か図書館に連れて行ってもらった記憶がある
たしかウチの長男と同い年だったはず…
俺がルーンを使えるのは、何かあってエジソンの家に行った時にルーンの発動を偶然見たんだったかな。
ルーン文字自体に力が宿るけど、発動するのにキッカケがいるんだったかな。
街の街灯が確か
160年程前の学者がルーンを使って創ったんだったかな…うろ覚え。
あれ、その学者知ってる気がする
「考え事はまとまりましたか?」
「思考の渦にのまれそうよ
ルーンは知ってるわ、エジソン博士が発見したものよね?昔、家庭教師してくれてたんでしょ?」
「…ちょうどその頃ですよ、私が公爵家に来たのは。エジソン様がお嬢様の部屋でいつも楽しそうにルーンダンジョンの話をしてましたね。たまに連れ出したりして」
「あ…何となく思い出したわ一緒に図書館に行ったわよね?」
「行きましたね懐かしいです
よく口裏合わせに利用されましたよ」
なんの口裏合わせ?
あ…図書館に行ったふりして街に出かけた気がする。露天商の屋台でジュース買って飲んだような?
「悪い事に突き合わせてたわね…あの頃はお転婆だったのよ」
「クフフ貴女はお転婆でしたね、誰にでも愛想振りまいて。いろんな事件に巻き込まれて、面倒な問題に首突っ込んで。
こちらを何度もヒヤヒヤさせて…
そのたびに何度も…
貴女を心配に思ってる人は沢山います
何があっても、どんなときでも、どうか最後まで諦めないで下さいね
生きてればいつか何とかなります」
ヴラドの笑った顔が何処となく寂しそうに見えた。
それは俺になる前のマリーウェザーのことを思ってる顔で
俺になる前のマリーウェザーはどこに行ったんだ?
ここ2年の記憶はしっかりある
俺が俺だと忘れてただけで、マリーウェザーとしてちゃんと講師してた記憶だ。
俺より年上の学生達に講義教えてて、冗談で告白してくるやついたな。
親切な女子が、俺に告白すると単位が貰えるって変な噂が影で流行ってるって
必須科目じゃなくて選択授業だから、単位テスト無し。
講義受けて時期が来たらレポート提出すれば単位貰えるのにな
レポートによくラブレター挟まってたしお茶会のお誘いとかもあったなぁ
仲良くなった女の子誘って留学行く前に領地の温泉行った!
でもお祖母ちゃんとアンナと風呂入った気がする。そうだ、みんなエステコース頼んでたんだった!
俺に喧嘩売ってくる女の子は、大体みんな温泉のエステコースを友達価格の友達枠で行きたい子たちだったな
温泉一緒に行くと帰る頃には大体仲良くなったな。
「何か思い出しましたか?」
「女の子と温泉行ったよね」
「学友達と温泉にいきましたね
サザーランド子爵の夏のフェスティバルは年を重ねるごとに盛大になっていきましたね
冬の雪像まつりは…貴族の子息達は雪のすべり台ではしゃぎたくても、大っぴらにはしゃげませんから。
平民の子供たちには受けましたけど」
「フェスティバルなんてしてた…?
してたわ!サザーランド子爵のフェスティバル!
フィギュア工場が建っててフェス限定フィギュアのデザインで頭を悩ませてたわ!」
「ビアガーデンの席を急にコタツにすると言い出して、みんなに準備させてましたね
鎌倉も作らせて中で網焼きやお酒を出せと言い出して」
え?なんかゴメン横暴な貴族みたいだ
「そんな事してたかしら?
それに鎌倉にコタツだなんて、まるで…」日本のそーゆー店のようだ?
他に転生者がいたのか?
「グスコーブ商会のロバート殿は?」
「ミニチュア・ドールハウスの人?」小さい頃よく貰ってた。毎年人形が増えるんだよ。
ウサギとかリスとか
「それはグスコーブ商会のジョルジ会長の方です、ロバート殿はその
「
よくお菓子や、美味しい料理の仕出しをしてもらったわね」
「お嬢様がせびりに行ってたんですよ?
幼いとは言え、平民の職人さんが貴族の令嬢の頼みなど断れませんよ
厄介な依頼を何度も押し付けて困らせてましたね」
「そうだったかしら?忘れてしまったわ…今度会ったら謝っておかなきゃね」
本当にそんな事してたの?めっちゃゴメンナサイ
ヴラドが手を取って親指で撫でてくる
ドキリと胸が高鳴った
奇麗な赤い瞳で見つめてきて、どうにも恥ずかしくて仕方ない
「そんなに見られると…何かついてた?」
「いぇ何も…お嬢様は私の顔が好きだとよく零してましたからクフフ」
ヴラドは今も好きなようですねと楽しそうに笑った
イケメンが好きなのはマリーウェザーだろ
それ俺の話しじゃないよね?
他にも、エジソンと冷蔵庫作って一儲けしたり
その儲けた金を使って領地に学校を新設したり
平民も通えるコースを作ったりしたらしい。
元々あったド田舎の三流学園を二流にしたそうだ。
ヨシュアがマリーウェザー様のおかげでって、よく言ってた意味がわかった気がする
俺には出来ないよそんな事
8歳の天才少女がやったの?
俺になってしまって申し訳ない
「貴女ですよ…ほかでもないマリーウェザー様のしたことです。
そして今のあなたもマリーウェザー様に他ならない。
忘れたことは無理に思い出さなくていいですよ。
また私と思い出を作って行きましょう」
猫に同じ提案したな
思い出せるわけ無いじゃん、俺はそのマリーウェザーじゃないし…ごめん無理
するりと手を話して俺のおでこにチュッした
こんな挨拶をするなんて…吸血鬼ってキザな野郎だな
「もう寝ますか?猫は部屋に入れても?」
「ベッドで一緒に寝るよ…毛ガつくっておこられる?」
「この船にあなたを叱ることができるのは、私くらいですよ」
「じゃあ、ヴラドは猫ごときで怒らないわよね?」
「お嬢様は私に怒ってもいいですからね?
いつだって受け入れます」
「ヴラドを怒ったり出来ないわ
例え悪いことをしてても、なんか許してしまいそうよ。顔が良いって罪ね」
「クフフお嬢様は多分怒らないかもしれませんね。お嬢様の罪もすべて私のものにしたくなります…冗談ですよ」
ヴラド冗談ですと笑った後に
"マリーウェザーはオレの事ずっと忘れないって言ったのに"
その呟きは小さすぎて聞こえなかった
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