第4話 旅のお供に猫を飼う

ヴラドにエスコートされて食堂へ向うと部屋の前にヨシュアがいた。


「マリーウェザーお嬢様

申し訳ありません、どうやら野良猫が紛れ込んでいたらしく…」


「にゃー」


「あっコラ!駄目だ!海に捨てるぞ!このっあっ」


「にゃー!にゃー!にゃー…」


フワフワの黒猫だった。

俺のドレスの周りをグルグル回って体を擦り付けてくる


「お高そうな毛並みだし、間違えて船に乗ってしまったのよ。

毛並みだっていいし、貧乏人が飼える猫じゃないわ、ましてや野良だなんて。ヨシュアの目はこーゆーの見抜けると思ったのに」


「あっその、昔マリーウェザーお嬢様のお屋敷で飼ってた猫に似てますね」


「そうだったかしら…」

猫なんて買ってたっけ?


「コーネリアス様(※長男)が犬を買ってましたね」


「ヒンデンブルグの事ね?まだいるでしょ?」


「そちらは覚えておいででしたか」


「にゃー、にゃー」


「この船が目的地についてから戻るまでどれほど時間がかかるかしら?

きっと飼い主が探してるわよ。その間に餌をあげてもいいかしら?」


「餌なら余裕がありますし、途中の港で仕入れます!また猫を飼うのですね!」


「…そうね、短い付き合いだけど旅のお供に猫を飼おうかしら。船旅に飽きないために」


「飽きないために本を用意してます!

最新のゲームもそれから…ドレスも、お着替えなさいますか?」


「ヨシュアの心遣いに感謝するわ

ありがとう、あなたがいてくれて安心よフフフ」


「天然美人局(ボソッ)」

ヴラドさん聞こえてるからな!

誰が美人だ、俺かー!


振り回すってこーゆーことか。

適当におだてておくけど、美人がやるとなんか別の意図に思えてくるな


猫が俺についてくる、懐かれて悪い気はしないけど

「机に乗っちゃ駄目よ」


ヴラドが猫をガシッと掴んで連れて行く


「躾のなってない猫ですね、きっと我儘放題に育てたれたお猫様なのです。食事中は外に出しておきますね」


「に"ゃー!フシャー、シャーヴヴヴ」


猫がシャーシャー怒ってたけど、パタンと扉が閉まった。

猫が気になるからサクッと夕食を終わらせて部屋に戻った。


着替えていいって言ったから遠慮なくコルセット脱いでやる

ゴテゴテのドレスはもう着ないぜ!

ヨシュアの趣味でチャイナドレスみたいなのがあった。赤い生地に刺繍がしてあって目を引く、何より軽そうで楽そうだ


「にゃー」

ゴロゴロと喉をならして膝に飛び乗ってきた。

どこから入ってきたの?


爪を建てないように猫なりに気を使ってくれてるらしい。やっぱり飼われてた猫だな。

前世でも猫飼ってたよ、俺が生まれる前から飼ってて20歳くらい長生きした。

これだけ懐いててもやっぱり飼い猫だからね、名前つけちゃうと後で寂しくなるからつけない


「にゃんこ可愛いですねぇーヨシヨシイイコイイコ」


猫が背伸びして顔をペロペロ舐めようとしてくる。

口を狙ってくるってことは


「餌だな!お腹すいでるんだね!ヴラド、猫の餌持ってきて」


呼び鈴を鳴らしてヴラドを呼ぶ。

心得てましたと手に餌があった、ほぐした干し肉


「猫がパクパク食べる…なんて可愛いのお猫様!癒やされるねぇ

船で風呂って貴重なんだよ、洗ってやれなくてごめんよ。

んでもって洗ってない猫をベッドに入れたくない

別に潔癖症ではないけど

外にいたってことはなんか病気やノミいそうだ」


「プクク…お嬢様、寝る時はケージにいれましょう」


「あら声に出てました?ふふふ」


寝る時ケージをカリカリにゃーにゃーとにかく一晩中うるさかった。

翌朝ケージから出してヨシュアに断って貴重なお湯使って洗ってやった。


「マリーウェザーお嬢様、お湯くらいでそんな畏まらないで下さい

世界に1つだけの花が欲しいとか、頭より大きな宝石が欲しいとか、その瞳より美しい石が欲しいとか…マリーウェザー様の我儘を叶えて差し上げるのが私の喜びです」


ヨシュアどうしちゃったの?


猫がやたら顔を舐めてくるんだけど…干し肉臭ぇ!

ドライフルーツをおやつにあげてフルーティに


「大人しく膝の上で撫でさしてくれよ、可愛い君は何がしたいの?おやつまた食べたいの?」


『おやつはもういらない』


「猫が喋ったの?凄い!ファンタジーだ!」

吸血鬼に喋る猫すごい!


『僕の言ってることが…解るの?本当に』


「解るよ!…昨日はごめんねケージに入れちゃって。狭いし閉じ込められて怖かったでしょ?」


『き、君と同じ部屋で寝るならケージでもいいよ』


「同じベッドで寝てもいいよ?

あ、オシッコしないでね?あんまり汚れるとまた洗うから、虫やネズミを見つけても食べないでくれる?」


『虫なんて食べるかよ!アハハ

前にもこんなやり取りしたな』


前の飼い主の事かな?


「ちょっと長旅になっちゃうけど、ちゃんと元の港に帰すからね!」


『また僕を捨てる気か!』


前の飼い主に捨てられたんだな…可哀想に

「じゃあしばらく一緒に旅する?」


『ずっと一緒にいるって言ってくれないの?寂しいにゃん』


あざといなこの猫

「いいよ、いつまで一緒にいれるかわからないけどペットは最後まで飼うよ」


猫は今度はちゃんと最後まで飼ってよと嬉しそうに少し寂しそうに笑ったように見えた。


「名前は?前はなんて呼ばれてたの?新しくつけたほうがいい?」


『……新しくつけたら…忘れたことを思い出さない?』


「ん?前の飼い主を忘れたくないの?」


『…うん。でも、僕のこと忘れちゃったの』


捨てられたのに忘れられないのか…可哀想に

「じゃあ思い出す暇がないくらい、またたくさん思い出作ってあげるよ!」


『……うん、それも楽しそうだ』


ギョッ猫って泣くの?

前の飼い主の話はタブーだな


ヨシヨシ撫でて猫を慰める

前の飼い主が恋しいんだな、こーゆーのは時間が解決するんだよね


『でも、いつか思い出して欲しい。だってとても幸せだったから、忘れられたままでもいいけど…

無かったことにしたくない』


なんだか切ないね…

もしその飼い主が思い出したら君は前の飼い主のところに帰っちゃうの?


ヨシュアが言ってた、俺が覚えてない黒猫の最後はどうなったんだろう

「後でヴラドに聞こうかな」


『僕あいつキラーイ、意地悪だし!僕のこと見下す!僕が喋れることは誰にも言わないで…捕まると監禁されて実験されて解剖されちゃうんでしょ?』


「面白い事を言うね、君が捕まらないように私が守ってあげるよ」


『…ありがとニャン

今度そは、僕がお前を守るから』


今度こそ?

前の飼い主は事故にでもあったのかな?

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