#4

「キョエエェェェェッ!!!」

 

鳥のような罪獣アルフスの鳴き声が響く。

真っ先にゼノメサイアが到着した。


『こんな時にっ……!』


快は今現在、日常の問題を抱えている最中なので焦りを覚えていた。

心の中で強くある決心をする。


『コーヒーがダメならこっちで認められよう……!』


やはり自分にはこれが一番らしい。

ゼノメサイアとして罪獣を倒すことでその存在を示すのだ。


『デアァァァッ!』


周囲を飛び回っているアルフスに対抗しゼノメサイアも高く飛び上がった。

その勢いのままアルフスの背中に飛び乗る。


「キョォォォロロロッ……」


『デュオォォッ……』


暴れ回るアルフスに必死になって掴まる。

まるで空中でロデオをしているかのようだった。


『ドアッ、ハァッ!』


長い首にしがみ付きながら頭頂部を何度も殴っていく。

苦しいのかアルフスは震えた鳴き声を上げた。


「ギョェェェェッ……!!」


しかしやられっ放しでは無かった。

思い切り空中で一回転をしゼノメサイアを振り落とす。


『ドワァッ……⁈』


思い切り地面に叩きつけられてしまう。

背中にヒリヒリとした痛みを感じながら悶えているとアルフスが調子を取り戻してしまう。


「ヒュルルル……」


そして何やら空気を大量に吸い込んでいるようだ。

その瞬間ゼノメサイアは察する、何かマズい攻撃が来ると。


「ピュィィィイイイイイイイイッ!!!」


その予感は見事に的中。

とてつもない超音波が周囲を襲った。


『アアアァァァァッ……!!』


周囲の建物のガラスは一瞬にして砕け散り壁までも振動し細かく崩れていった。

当然、ゼノメサイアにも大ダメージである。


「イイイ……ッピィ!」


するとガス欠を起こしたようにアルフスの超音波が止まった。

隙だらけに見えるが今ゼノメサイアは動ける状態ではなかった。


『ゥ……グァ……ッ!』


ピクピクと痙攣しながら倒れている。

そこへ遂に味方がやってきた。


「目標を捕捉。……ゼノメサイアが⁈」


Connect ONE実働部隊TWELVEが到着したが痙攣するゼノメサイアの姿を見て絶句した。


「(快っ……!)」


その正体を知っている瀬川は快の今抱えている問題と照らし合わせて当人のメンタルを心配した。


「俺のすべき事……」


そして決意を固める。


「お前の夢を支える事だ……!」


深呼吸をして操縦桿を強く握る瀬川。

親友の夢を支えるという自分の生きる理由を思い出し戦いに臨むのだった。


___________________________________________


各四機は散り散りになりアルフスに対抗した。

空を飛べるウィング・クロウ、マッハ・ピジョンが先行し地面で構えるライド・スネークとタンク・タイタンがサポート役だ。


「この街の惨状、さっき観測された超音波によるものだね……」


キャリー・マザーから蘭子が説明する。


「ゼノメサイアもこんなになってるし相当ヤバいよコイツ、油断しないで!」


「「「了解っ!」」」


蘭子の言葉に緊張感が高鳴る一同。

空の二機がまず仕掛けた。


「遅れんじゃねーぞ後輩!」


「はいっ!」


アモンと化した陽が瀬川に指示を出す。

両者は挟み込むようにアルフスに迫った。


「おらぁ!」


両サイドから爆撃を決めてアモンは喜ぶ。


「ひゅ~!こりゃ効いただろ!」


爆炎に包まれたアルフス。

轟音と共に叫び声が聞こえる。

かなり効いているという証拠だろう。


「キュオォォォッ!!」


爆炎を突破して出て来たアルフス。

思い切りマッハ・ピジョンに突撃してきた。


「うぉっ⁈」


瀬川は慌てて旋回し避けるがその突風にやられコントロールが狂ってしまった。

機体が大きく回転してしまう。


「くっ……」


何とかコントロールを取り戻し安定させるがその頃にはもう目の前にアルフスが。


「キョエエェェェェッ」


思い切り先程ゼノメサイアがやられた超音波を放って来る。


「この超音波だ!」


蘭子が叫ぶ。

そこへ。


「危ねぇ!」


すんでの所で間にウィング・クロウが割って入りシャッターを展開させた。

機体全身を包み込むほどのシールドだ。


「おぉぉぉっ⁈」


何とかシャッターのお陰で防ぐ事が出来た。


「降りて来てくれてサンキュー!」


そこへ竜司の乗るライド・スネークが突撃してきた。

マッハ・ピジョンに合わせて降りて来たためアルフスは今かなり低い所にいる。


「ピョエェェェッ……⁈」


砲撃を喰らってしまったアルフス。

そこへ更にミサイルも飛んで来る。


「多連装ミサイル発射!」


名倉隊長のタンク・タイタンによる攻撃だ。

連続した攻撃に思わず怯んでしまう。


「ヒョォォロロロ……」


その隙をTWELVEの彼らは見逃さなかった。

一列に並び構えを取る。


「そのシャッター、もっとデカく出来るよね⁈」


「出力があればイケるが⁈」


蘭子とアモンは無線でやり取りをする。

その真意とは。


「よし!じゃあ合体行くよ!ゴッド・オービスの巨体でシャッターあれば超音波も防げる!」


その通り。

合体する事で全員がもれなくシャッターで超音波を防ぐ事が出来るのだ。


「では行くぞ、合体だ!!」


各機体が分解されそこから更に結合していく。

そして一体の巨大な人型ロボットへと変化を遂げた。



『ゴッド・オービス!!!』



全員の心が一つとなり合体した。

そのまま彼らは新兵器を試す。


「ジェット・アクス起動!」


ウィング・クロウの翼のパーツが分離されジェット噴射つきの大斧となった。

それを両手で構えてアルフスに近付いていく。


「ピュオオォォォォッ!!!」


危機感を覚えたアルフスはまたもや超音波を放つ。

そこで先程の作戦を始動した。


「クロウ・シャッター全面展開!!」


ゴッド・オービスの全身の出力をマックスにし全身を包むほどのシャッターを展開した。


「おぉぉぉっ!!!」


多少の振動は感じるものの超音波によるダメージは完全に防げている。

作戦通り、上手くいった証拠だ。


「ポヘェッ……」


超音波を出しすぎたのか喉がやられてしまうアルフス。


「よし、このまま決めるぞ!!」


ゴッド・オービスはジェット・アクスでアルフスを斬りつける。

大ダメージが傷口から襲った。


「ピギャァァァアアアアアアッ!!!」


そのままゴッド・オービスは右腕からアッパーを繰り出しアルフスを上空へカチ上げた。

そして大斧をしっかりと構える。


「セット、バイブレーション!」


ジェット・アクスに細かい振動を与える。

そして勢いよくジェットも起動した。


「ジェット噴射、構えー!」


そのまま飛び上がり空中を舞うアルフス目掛けて刃を振り下ろす。



『アベンジャー・スラッシュ!!』



まさに一刀両断。

アルフスの体は縦に真っ二つとなり大爆発を起こした。

ゴッド・オービスが完全に勝利したのだ。


「よし、これで快に……っ!」


親友のためになれたとガッツポーズを決める瀬川だったが。


『ッ……』


一方ゼノメサイアこと快が起き上がった頃には全てが手遅れだった。

自分が活躍する隙はなかったのである。

瀬川が手助け出来たと思った事は快にとっては活躍を奪われた事。


せっかく今回ヒーローとして活躍し自分の株を上げ自信を取り戻そうとしたのに何の成果も得られなかった。

認められたい、そんな気持ちが回復しないまま快は学祭に臨む事となるのだった。


___________________________________________


戦いが終わった後、スマホをチェックした快はある人物からメッセージが届いていた事に気付く。


「純希……?」


何と純希からだ。

不在着信も来ていたため嫌々折り返し電話をかける。

すると心配そうな声で彼は応答した。


『お、罪獣出たけど無事か⁈』


「……なんだ、その事なら大丈夫だよ」


『元々電話したのは別の理由だったんだけどさ、突然罪獣出て来たから……』


だとするのなら元々話そうとしていた話題が気になる。


「何話したかったの……?」


『やっぱ元気なさそうだな』


「何それ……」


『愛里ちゃんからお前の話聞いてよ、心配したんだよ……』


申し訳なさそうな声で純希は謝る。


『ごめん、お前がコーヒー淹れれるように愛里ちゃんに頼んだの俺なんだ……』


その真実を聞いて快は驚く。


「何でお前がそんな事……?」


すると更に申し訳なさそうな態度で純希は語り出す。


『償いっていうのかな?お前が暗くなったのって俺にも原因あるだろうし、その責任っつーか……』


快も表情が少し強張る。


「良いよお前がそんな事しなくて」


『いや、だから愛里ちゃんに頼んだんだよ。正直俺にはお前を救える気がしない、だから相応しい人に頼んだ』


そこで快は英美を始めとした様々な人が言っていた"自分に出来る事をする"という言葉を思い出した。


「自分に出来る事をするって事?確かにお前も言ってたよな」


『そう、ただ言葉で伝えるだけなのも無責任だから俺なりに示そうと思ってな……』


そして純希は自分に出来る事を言う。


『相応しい人のサポートだよな、お前に対して俺に出来る事』


「そっか……」


すると純希はある提案をする。


『お前最近シフト少なくしてるだろ?あんま会えてないからさ、学園祭行っていいか?』


「マジで……?」


『おう、やっぱ直接様子見たくて。愛里ちゃんと三人で語り合おうぜ』


「……分かった」


そして通話は終わる。

純希が学園祭に来る事が決まった。

果たして上手く行くのだろうか、純希の選択は正しいものなのだろうか。






つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る