第7界 オタガイサマ

#1

某ニュース番組でConnect ONEの会見が行われていた。

新生が長官として代表で受け答えをしながら背後の座椅子には参謀たち、そして更に後ろでは実働部隊のTWELVE隊員たちが立っている。


「我々は罪獣の出現を感知した政府により発足され陰ながら準備を進めて参りました、しかし計算以上に罪獣の出現が早く出動が遅れてしまった事を深くお詫び申し上げます」


長官である新生が事情を説明する。

その後も参列した記者たちから質問攻めになっていたがスマホでその会見を見ていた快はその画面を消す。

理由は担任の先生が教室に入って来て生徒たちを呼んだからだ。


「みんな廊下に整列、朝礼だ」


その担任の声に合わせて廊下に並び体育館に行くと校長が心苦しそうに話していた。


「先日の高円寺で起こった銃乱射事件、我が校の生徒に犠牲者は居ませんでしたが大変痛ましい事件です」


そして事件の犠牲者たちのために黙祷を捧げる事となった。


「黙祷」


黙って目を閉じ黙祷を捧げている中で快は一人考えていた。


「(やっぱり俺のせいか……)」


ルシフェルは快を誘き出すためにこの事件を起こしたと言った、それがまだ胸に刺さっているのだ。


「(ごめんなさい……っ)」


黙祷の中で快は一人だけ必死に謝罪をしていた。


「グスッ……」


ふと目を開けると前の方に並んでいる愛里の肩が震えているのが見える、恐らく泣いているのだろう。

無理もない、当事者なのだから。

そんな彼女の涙も自分のせいだと快は自分を責めた。


「(ヒーローには遠すぎる……)」


こんな他人を巻き込んでしまうような者がヒーローになって良いのだろうかと不安になる快であった。


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『XenoMessiaN-ゼノメサイアN-』

第7界 オタガイサマ






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黙祷が終わった後のホームルームで担任は話を始めた。


「みんな、それぞれ思う事はあるだろうが人は前を向いていかなきゃならん」


そして黒板にある文字を書いた。


「こんな時に申し訳ないが陸上競技大会の話を進めよう」


その文字とは"陸上競技大会"。

元々このホームルームは陸上競技大会の話し合いのために用意されたものだった。

迫っているため早く色々決めなければならない。


「…………」


しかし他の生徒たちはまだ暗い面持ちだ。

当事者である愛里の事をチラチラと見ながら気にしているような素振りを見せる。

すると咲希が。


「でも先生、愛里のためにも今は……」


愛里のために言うがそこで当の愛里が口を開いた。


「ううん、私なら大丈夫だよさっちゃん」


明るい笑顔を見せながら咲希の肩に手を置く。


「こうなったら悲しい気持ち吹き飛ばすためにも思いっきり頑張って優勝目指さなきゃ!」


みんなが暗い雰囲気になっているのを嫌ったのか愛里は明るさを作り出した。


「……そうだね」


クラスの人々はその愛里の姿を見て少し安心したように明るくなるが快や咲希はその愛里の明るさに違和感を覚えていた。


「(与方さん、無理してる……?)」


いつもの愛里の優しさを感じなかったため快は素直に明るく振る舞えなかった。


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ホームルームが終わった後のタイミングを見計らって瀬川が悩む快に話しかけて来る。


「なぁ、Connect ONEの会見みたか?」


周りを気にしながら小声で言ったため理由を聞き返す。


「どうした小声で?」


「いやだって初めて罪獣でた時に河島に言われたじゃん、与方さんが辛くなるからその話するなって」


「あぁだから……」


だと言うなら自分にも配慮すべきではないかと快は思ったが面倒くさくなりそうなので今は話を聞く事にした。


「凄くねぇか?あんなカッケェ組織が現実に存在してたなんてよ、ゼノメサイアの時も興奮したけどああいうサイバー的なのはもっと興奮すんだよ!」


小声ではあるが興奮が抑え切れていないらしく所々声が大きくなってしまいそうだ。

しかしそれよりも快は瀬川の言葉に反応していた。


「(Connect ONEの方がもっとか……)」


ゼノメサイアより興奮しているという事実に自分の存在意義を考えてしまう。


「(いやいや、自分に出来る事は考えたんだ……)」


何とか前回での成長を自分に言い聞かせる。


「戦闘のプロが参戦するならもう安心だな!ほら、SNSでも言われてる!」


しかし瀬川の言葉と見せられたSNSの投稿により傷は更に抉られる。


『やっぱちゃんとした味方が居てくれると安心するね』


『未知の存在に頼り過ぎるのもアレだもんな』


そのような書き込みを見てしまった。

やはり自分では安心させられないのかと思ってしまう。


「(良いなConnect ONEは、やっぱりちょっと羨ましい……)」


嫉妬心が沸き起こり少し成長したはずだと言うのに焦りが生まれていた。


「(俺に出来る事と彼らに出来る事の差が激しすぎる……)」


必死に出来る事を見つけようとしているがその間に組織がどんどん先に進んで行き置いてけぼりになってしまいそうで不安な快であった。






つづく

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