#6
日が落ちて夜が来た街、周囲のビルは破壊されたため月明かりだけが戦場を照らしていた。
決戦のゴングが鳴りお互いに走り出す。
『オォォッ!』
「グガァァッ!!」
ゼノメサイアとルシフェルは衝突し取っ組み合いをするような形になる。
『ゥグググ……』
力で押し切ろうとするルシフェルだがなかなか押し切れない。
「何だコイツ、力が上がってやがる……⁈」
『今日はまだパニ障じゃないんでね……!!』
心身共に健康な状態で挑めばここまで力が発揮されるものなのだと実感し思い切りルシフェルの顔面を殴り飛ばす。
『オォッ!』
「グガッ……」
口から血を飛び散らせ仰反るルシフェル。
そのよろけた隙をゼノメサイアは見逃さなかった。
『フンッ、ハァッ!』
肩部や腹部、背部を何度も蹴っては殴る。
確実に体力を削っていく作戦だ。
「舐めるなよ……!」
しかしルシフェルもやられているだけではない。
反撃をしようとゼノメサイアに勢いよく飛びかかる。
『ッ……⁈』
ガッチリとホールドされてしまう。
逃げられない所で至近距離から獄炎を放とうとした。
そこへ更なる追撃が。
「俺らを忘れんじゃねーぞ!!」
背後からビーム弾を浴びせるウィング・クロウ。
「グガッ……⁈」
思わずゼノメサイアから離れてしまう。
そこへ。
「アンチ・グラビティ起動!」
瓦礫を飛び越え砲撃を食らわせるライド・スネーク。
辺りには煙が立ち上った。
「多連装ミサイル発射っ!」
煙が目眩しになる事でタンク・タイタンの小型ミサイルは全てルシフェルに命中。
「ウギィィィッ!!!」
かなりダメージを与える事が出来た。
TWELVEがゼノメサイアを助けたのだ。
『(彼らも出来る事をしてるのか……!)』
そう実感し更なる追撃をルシフェルに浴びせようと攻撃体勢に入る。
しかしルシフェルもまだ奥の手を残していた。
「ふざけんなよお前ら、俺を本気で怒らせやがったな……」
そして全身にとてつもないエネルギーを溜める。
先程のパワーアップした時のものと破壊光線のもの、両方のエネルギーが高まるのを同時に感じていた。
「ヤバい、とんでもないのが来るよ!!」
キャリー・マザーから警告する蘭子。
しかしもう遅かった。
「天翔熱波・改!!」
あまりの閃光で前が見えないほどの破壊光線が放たれる。
『グゥゥッ……⁈』
一瞬だった、彼らは一瞬にして土地ごと吹き飛ばされてしまったのだ。
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ルシフェルの破壊光線が放たれた後、周囲の元ビル街は完全に壊滅し赤黒い雲が立ち上っていた。
「みんな、大丈夫……⁈」
上空からキャリー・マザーで見ていた蘭子は絶句していた。
「オォォォ……」
真下ではルシフェルが圧倒的強者のような風貌で立っており、仲間たちは倒れてしまっているから。
『ハァ、ハァ……』
ゼノメサイアも全身から蒸気を放ち高熱にやられているのが見て分かる。
『はぁっ、苦しい……!』
心臓の鼓動が早くなり息が苦しくなる。
身体が宙に浮いたように軽く感じこの空間に居ないかのようだった。
パニック発作が出てしまったのである。
「みんな機体損傷率60%越えてるよ、大丈夫なの……⁈」
蘭子は各機体のデータを見ながらダメージ量に驚愕していた。
「ちょっとマズいな……」
コックピットに頭部をぶつけたのか出血している竜司。
「ぐぅっ……」
名倉隊長も同様だった。
「こんな痛てぇの久々だ……」
陽も肩を押さえながら言う。
コックピットの舵を握るのも大変そうだ。
「そんな……」
完全に絶望してしまう。
そこへ迫るルシフェル。
「ゴォォォ……」
トドメを刺すつもりなのだろう、鋭い爪を立ててゆっくりと近付いて来る。
「くっそォォ……ッ」
嘆く竜司。
操縦桿を殴りストレスをぶつける。
すると。
「え、アレ……!」
無線で蘭子の声が聞こえる。
何かに気付いたようだ。
『グッ、ウゥゥゥ……!』
なんとゼノメサイアが苦しそうに立ち上がろうとしているのである。
焦げてしまっている見た目からも一番苦しそうだというのに。
『(ダメだ、こんな所で寝ていられない……!)』
地面を強く握り締め力を入れる。
『出来る事を最大限やるんだ、今の苦しみを乗り越えなきゃ……!』
精一杯の気合を入れる。
『目の前の壁を壊して"少しずつ"前に進め……!!』
そして立ち上がってみせたのだ。
その姿勢にTWELVEの士気も上がる。
「ぐっ、俺らだって……!」
何とか機体を再起動しそれぞれもう一度戦闘体勢に入る。
「うむ……!」
「やり返してやろうぜ……」
全力で立ち上がったのだ。
『オォォォ……』
そしてゼノメサイアはゆっくりと少しずつエネルギーを溜めていく。
あの大技を撃つ気だ。
そこから名倉隊長は指示を出す。
「ゼノメサイアが雷撃を撃つ気だ、全力でサポートするぞ!」
「「了解っ!!」」
そして散開しルシフェルの注意を引く。
ウィング・クロウは翻弄しながらビーム弾で射撃、ランド・スネークはアンチグラビティで周囲を走っていた。
「グゴォォォッ!!」
しかしルシフェルは二機を振り払う。
「がはっ……!」
中でもランド・スネークは地面に叩きつけられ竜司はかなりダメージを負った。
しかしその隙を見逃さない名倉隊長。
「よく隙を作った!」
全速力でルシフェルに突撃し砲台をゼロ距離から放つ。
「ゴハアァァァッ……!!」
後方に吹き飛ばされてしまうがすぐに体勢を整えたルシフェルは獄炎を放った。
「ぐぅっ……⁈」
タンク・タイタンは業火に焼かれ停止してしまう。
「ハァ、ハァ……クソがぁっ!」
しぶといTWELVEにルシフェルも消耗している。
ようやく追い払えたためゼノメサイアに向き直った。
痛みの中で少しずつエネルギーを溜め放とうとしているゼノメサイアより先に破壊光線が撃てる事を自覚していた。
「そろそろ終わりだ」
そして破壊光線を放つ。
「天翔熱波!!」
力は落ちているが十分な威力だった。
一直線にゼノメサイアへ進み雷を放つ前に食らってしまうかと思われた。
すると。
「あぁぁぁっ……!!」
ウィング・クロウがシールドを展開し間に割って入る。
ゼノメサイアの前で思い切り破壊光線を防いでいるのだ。
「まだだ、まだ耐えるぜぇ……!」
流石のシールドでも破壊光線の直撃にはかなりのダメージを受けている。
徐々にヒビが入っていった。
「邪魔だぁぁぁっ!!!」
ルシフェルも気合で威力を高めてシールドを破ろうとする。
そしてとうとうシールドは完全に破れ爆発によりウィング・クロウは吹っ飛んだ。
「今だゼノメサイアぁぁーーーっ!!!」
吹っ飛ばされながらも叫ぶ陽。
「ハッ……!」
シールドの破壊と共に破壊光線も止まってしまったルシフェルは戦慄する。
今のでかなり体力を消耗してしまい動けそうになかったのだ。
『オォォォッ!!!』
そしてゼノメサイアは力を解放。
神の雷を全力で放った。
『ライトニング・レイ!!!』
一直線に動けないルシフェルへ向かっていき命中。
「うぐがががっ……!俺の夢がぁっ!!」
そしてとうとうルシフェルは大爆発を起こしその場から消滅した。
「はぁっ、やった……!」
安心するTWELVE隊員たち。
『ウッ、グォォ……』
力を使い果たし膝をついてしまうゼノメサイア。
しかし力尽きる事はない、安堵から力が抜けた感覚なのだ。
『(少しは前に進めたかな……?)』
勝利を収めたのはゼノメサイアとTWELVEの彼らだった。
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そのすぐ後の咲希がいる空間。
扉が開いて誰か入って来る。
「……アンタ生きてたの?」
咲希の視線の先にはルシフェルが立っていた。
かなり体力を消耗しているようだ。
「予め憑依してたからな、本体はやられてねぇ……」
先程一般の男性に憑依をしたのは万が一やられた時に本体が死なないようにするためだったのだ。
ルシフェルは別の生物に憑依し力を与える能力を持っている。
「都合いい力ね……」
そう言った咲希は少し残念そうだった。
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翌日、Connect ONEは会見を開いた。
世間に組織の詳細を伝えるためだ。
「Connect ONE長官の新生継一と申します」
神父のような服を着た優しそうな男が画面中央に立ち話している。
「我々は政府直下の罪獣と戦う信仰組織です、必ず皆さんの幸せをお守り致します」
・
・
・
その会見を快は登校した際、スマホで瀬川と見ていた。
SF好きな瀬川はとても喜んでいる。
「すげぇ、本当に防衛組織じゃん!」
そう言いながらはしゃいでいる。
その様子を何となく眺めていると瀬川が突然快に謝る。
「あ、ごめんな……お前も辛かったのにこの話題は……」
自分が尾行に誘った事により快が傷ついてしまったと反省している。
LINEで謝ったが今この話題を出してしまった事にまた謝罪した。
そしてまた同じように反省をしてしまう。
「俺が尾行に誘わなければ……」
しかし快にとっては一歩全身するきっかけとなった。
「いいや、今では感謝してるよ。ヒーローに近づくきっかけが出来たから」
「そうか?ならよかった……」
そうして瀬川が安心しているとある人物が登校してきた。
クラスメイトたちは驚きの声を上げる。
「え、愛里⁈怪我は大丈夫なの?」
なんと愛里が元気に登校してきたのだ。
「うん!お陰様でもう元気だよ!」
そんな彼女の姿を見て快は立ち上がる。
どうしても先日のお見舞いの際の無礼を謝りたかったのだ。
「与方さん」
「あ、快くん。元気になったよ」
優しい笑顔でそう言ってくれる事が嬉しい。
だからこそ誠心誠意謝罪したかった。
「この間はごめん、どうしても卑屈になっちゃって……」
すると愛里はこう答えた。
「ううん、今は元気そうだから良いの!」
逆に"元気になった"と言われてしまった。
「純希くんから聞いたよ、少しずつ前に進もうと頑張ってるって!」
より強い笑顔で言ってくれるのは嬉しい。
しかし何処か複雑な気持ちも快の心は交えていた。
「(純希の話……)」
何故彼女の口から純希の名を聞くとこんなにも胸が痛むのだろうか。
分からないままだったが今は愛里の笑顔にただ見惚れていたかった。
「ありがとね」
本心の中にもある感謝の気持ちをしっかり伝えられる事、それだけでも快は少しだけ前に進めたような気がした。
つづく
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