逆さ福の恩恵
道すがら、私は心地よい不思議な余韻に胸を打たれていた。すると何の前触れもなく、目の前に横浜中華街が舞い降りてきたような店のたたずまいが見えてきた。
店の入り口の両脇には牌楼(中華門)が建てられていた。私はこの街で何年も過ごしているが、初めて訪れる店だった。門に刻まれた不思議な「逆さ福」という装飾に目を惹きつけられた。なぜかしら、その言葉に姉ちゃんとの関係が思い浮かんだ。
白髪の優しそうなご主人が、その装飾の由来を教えてくれた。これは新年に幸せを迎える願いを込めたもので、「福運が逆さまになる」という意味の風習だという。
店内に一歩踏み入れると、客席はすごく混雑していた。私はカウンター席に座り、日本語のメニューを手に取り、特製担々麺を注文した。
そしてついに、待ちに待った担々麺が目の前に運ばれてきた。ああ、よい匂いだ。その瞬間、芝麻醤とエビ風味のそこはかとなく香る匂いが鼻をくすぐった。すぐにスープを飲んでみた。その仕草が私の満足感を高めてくれた。
しかし、一方で右隣に座る私と同じ年齢ぐらいの女性は料理を喉に詰まらせたのか、窮地に追い込まれて咳き込んでいた。店の主と何か言葉を交わすと、持ち帰り用に透明なフードパックとビニール袋が渡されてきた。
この昼飯旅はたわいない時間だったけど、私は色々と教えられた気がする。一見不幸な出来事でも、見方を変えれば幸せがやってくるという教訓を学んでいた。
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