姉妹の繋がり
百合子姉ちゃんが恋に落ちる男性は、なぜかしらいつも年上の既婚者。その禁じられた恋に、彼女は深く苦しんでいた。
いくら双子でも、姉の心の奥底まで完全に理解することはできなかったが、涙を浮かべる彼女を何度も慰め、励まし合ってきた。
私は百合子の心の痛みを知り、胸が締め付けられた。これまで彼女ほど羨ましい人生を歩んでいる人はいないと思っていたが、実のところ彼女は母さんにも言えない恋の苦しみを抱えていたのだ。
家族で初詣に行くたび、私は自分のことを棚に上げ、運命の女神を恨んでいた。でも、できることなら、姉の苦しみを代わってあげたかった。そんなある朝、私は姉の柔らかな髪を撫でながら、優しい声で彼女を目覚めさせた。
「百合子姉ちゃん、おはよう。明日は大事なお見合いだよ」
目を開けた姉は、私に微笑んだ。
「あら、どうしたの? 今朝は早いわね」
私は姉の笑顔に嘘がないかと、じっと見つめた。姉は私の視線に気づき、首を傾げた。しかし、私は彼女のスマホを覗き見たことは言えなかった。
「いや、なんでもないよ。姉ちゃん、明日のお見合いをどう思ってる?」
百合子はしばらく考えてから、深く息を吐いた。
「正直に言うと、あまり乗り気じゃないの。でも、母さんの顔色を見ると、断るわけにもいかないわ」
私は姉の手を握り、励ました。
「百合子、無理しないで。お見合い相手の人は、どんな人?」
彼女はベッドの上に置いてあった封筒を取り、中身を見せてくれた。
「年齢は三十五歳。性格は穏やかで誠実。家族は両親と兄が一人」
姉の説明を聞きながら、私は封筒の中を覗き込み、写真を見た。彼は整った顔立ちで、スーツ姿がよく似合っていた。
「姉ちゃん、カッコいい男性じゃない」
姉は写真を見て、首を振った。
「どうもピンとこないの。私のタイプじゃないわ」
私は姉の言葉に驚いた。姉は、どうやら危険な匂いがする男性に惹かれるタイプだったのかもしれない。
「姉ちゃん、タイプって何?」
姉は私の顔を見て、苦笑いした。
「あかね、私には自分なりの理想があるの。それには、彼は合わないわ」
私は百合子の理想がどんな人なのか、知りたくなった。しかし、姉はそれ以上話すことはなかった。
「姉ちゃん、私はいつもあなたの幸せを願ってるよ。だから、自分の気持ちに正直になって、好きな人と結婚してほしい。お見合いなんて、無理してしなくていい」
姉はその言葉にうなずき、涙ながらに私を抱きしめた。
「ありがとう、あかね。私も同じ。でもね、母さんの気持ちもわかるのよ。私たちはもうすぐ三十歳。母さんは私たちに孫の顔を見せてほしいんだから」
私は百合子の言葉を聞いても、心の中で納得することができず、複雑な感情が渦巻いていた。なぜなら、私たちは双子の姉妹だったからだ。
思い返せば、私の最後の恋が終わったのは三年前。元カレの浮気が原因だった。それは姉、百合子が恋人と別れたのと同じ季節。その時の彼は、他の男性とは違って独身だったはず。姉はきっと、彼を心から愛していた。
しかし、彼はいつの間にか姉の前から消えてしまった。その理由を姉から聞くことはなかったが、私の胸は痛みで締め付けられた。涙に暮れる日々が続いたが、お互いに励まし合って乗り越えることができた。
それはまるで、秋の風が過ぎ去った後の落ち葉のように、双子の私たちの前から時間と共に流れ去っていった。その深い悲しみは、ふたりの心に深く刻まれ、忘れることはできなかった。
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