第42話 初心に帰ろう!!

「初心に帰ろうと思う。」


俺はそう言って集まってくれた皆の顔を見る。左から、マーニャ、アイナ、レイナ、ミィナ、そしてアスカとマリア。

その後ろにセツナ、ミーコ、アイカ、ルミナ、エリーゼと並んでいる。


みんな俺の嫁……もとい、屋敷で働いてくれている、素晴らしい女性達だ。


……イヤね、「嫁」って思った瞬間、突き刺すような凍えるような視線が来たんだよ?特にアスカとエリーゼのあたりから。


まぁ、実際には、レイナが押し付けられた嫁で、アイナとマーニャが押しかけ嫁だから、この三人は嫁と言っても問題ない……はず。


で、ミィナは契約世話係みたいなもので、アスカはペット……と言うと怒られるかもしれないが、実際テイミングして絆が結ばれてしまったのだから仕方がない。


マリア達残りの6人は、訳あって買い取った奴隷たち。

と言っても実際はメイドとして働いてもらってるだけだけどな。


後、ここにはいないが、嫁を自称するサキュバス娘のリリアがいる。

彼女は、何を隠そう、魔王なのだ。

その魔王をテイミングしてしまったため、俺の立場は『魔王のご素人様』問う訳の分からないことになっているのだが、今は置いておこう。


とにかく、この12人が俺の嫁……じゃなくて周りにいる女の子達だ。

10歳から17歳までの美少女達に囲まれた異世界生活。


俺はもう、勝ち組のハーレム野郎と言っていいだろ?


……ゴメンナサイ、調子に乗りました。


……はい、童貞の妄想です……誰一人として、エッチしてません。


って言うかエッチしたいんだよぉぉぉぉぉぉ~………。


「なにも泣かなくても……。」


よしよしと頭を撫でてくれるミィナ。


「うぅ……。って、俺の心読んだ?」


「いや、思いっきり口に出していたし。」


アイナがぽつりと言う。


どうやら俺の妄想は駄々洩れだったみたいだ。



「そんなにエッチしたいなら、そういうお店に行けばいいじゃない。」


呆れたように言うアスカ。


「そこに愛はないだろっ!俺は可愛い子に、好きって言ってもらってイチャイチャエッチしたいんだよぉっぉ……。」


俺の心からの叫びに、レイナの顔が赤くなる。


……えっと怒らせた?


「と、とにかくだ。村も安定してきた。ダンジョンも今の所問題ない。だからここは初心に帰ろうと思う!イヤ帰るべきだっ!」


俺は誤魔化すようにそう叫ぶ。


「初心に帰るって……どうするの?」


ミィナがそう聞いてくる。


「それはもちろん!エッチできる娘を買って……いや、ナンデモナイデス。」


ミィナに睨まれて、シュンとなるが、何とか持ち直す。


「あ、いや、それは冗談として、旅に出ようかと思うんだ。」


「旅?一人で?」


レイナが聞いてくる。


「あぁ……。」


……一人で初心に帰って、各地を旅してまわり、見識を拡げたいと思う。

おもえば、俺は世間知らずだ。その所為でミィナにも、他の娘たちにも迷惑をかけて来たんじゃないかと思うんだ。

だから、ここらで初心に帰り、自分の未熟さを正面から受け止めながら、成長したいと思うんだ。


「当然誰かと一緒に行きたいぞ。一人でいいんだ。二人っきりで旅をしていれば、その内、俺の事を頼るようになり、自然とイチャイチャエッチが出来るかもしれない、いや出来るっ!そして成長して帰ってきた暁には、ここにいる皆とエッチするんだっ!」


『「「「「「………………」」」」」」


何故か皆の視線が冷たい。


……えっと……。


「あ、あのぉ……俺の崇高な目的……。」


「……いつものように本音駄々洩れだったわよ。」


毛虫を見るような目で、ミィナがそう告げる。


「だ、だって……いつまでもここに立って、状況は変わらないだろ?だったら替えるべく努力をするべきじゃないかと思うんだ。それに、2年もすれば、レイナたちだって成人を迎えるわけだし、一応嫁だから手を出しても問題ないだろ?だったらその間旅に出て……。

と言うか、奴隷の皆は、そもそもエッチOKの条件なのに出来ないっておかしいだろ?ミィナも、誤魔化しているけど、エッチしてれるって約束だったのに……。だったら王匡替えようって思うののどこが悪いんだよっ!」


「はぁ……どれだけエッチしたいのよ。」


捲し立てる俺を冷ややかな目で見ながら、呆れた声でつぶやくアスカ。


「ほんと……。みんなドン引きよ。」


同じくそう呟くミィナ。


みると、奴隷のメイドさんたちまで、引き攣った顔をしていた


……何故にっ!!



俺の「初心に帰る宣言」の後、皆は自摸と変わらない生活に戻ってく。


そう、まるで俺の宣言がなかったかのように……。


そしてそのまま数日が過ぎる。


全く何事もない日々が過ぎていたので、俺が旅に出ることを本気にしていないか、もしくはどうでもいいと思われてるのか……と悩んでいた時の事だった。


レイナとアイナ、そしてマーニャが俺の前に並ぶ。


「どうした??」


「あ、うん……旅っていつ出発するの?」


「あぁ、明日の朝には出ようと考えている。」


……嘘です。ホントは心が折れて、このままズルズルと行くのやめちゃおうかなぁって考えていました。


等とは言えず、思わず明日だと言ってしまう。


「そう、間に合ってよかった。」


レイナはそう言うと、俺の前に包みをポンッとおく。


「これは……?」


「餞別よ。あと……。」


レイナが不意に俺の唇を奪う。


「帰ってくるの、待ってる……から。」


それだけ言って、だだだぁ~ッと走って行ってしまった。


「ま、そう言う事だにゃん。」


マーニャがポンポンと肩を叩いて、レイナの後を追う。


「どうせなら、行くまえにヤッちゃえって、けしかけた。でも、アレがあの子の答。……浮気はダメ、絶対。」


そう言って、アイナも俺にキスをして、二人の後を追って部屋へ行ってしまう。


「……なんなんだ?」


なにが起きたか分からない。

ただ一つ言えることは、俺は明日旅立たなければならなくなったという事だ。


「思い付きで変なこと言うからよ。」


どこからか、アスカの声が聞こえた……気がした。



翌朝……。


「えっと……誰も止めてくれない……。誰も一緒に行ってくれない……。」


屋敷の入り口には、旅に必要な荷物と「行ってらっしゃい」の張り紙だけ……。


見送りをする気も無い様だった。


「バカな事ばっかり言ってるからよ。」


不意に背後から掛けられる声。


振り返ると、そこには、旅支度を整えたアスカの姿がある。


「……一緒に行ってくれるのか?」


「勘違いしないでよね。私はもとの世界に帰りたいの。その為にはあのロリ女神の力が必要なことぐらいわかっているわ。だから、あなたの近くにいないといけないのよ。」


仕方がないから一緒に行くのよ、と面白くもなさそうに言うアスカ。


ツンデレ頂きましたぁ~……ってそんなわけないですね、ハイ。


アスカの、冷たい視線を受けながら、俺は荷物をマジックバックに詰め込み、村を後にするのだった。


……なぜこうなったのだろう??


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