第39話 こんなことだと思ったよっ!チクショウ……

「はぁ……。」


俺が長々と語り終えると、ミィナは大きく深いため息をつき、呆れた視線を俺に向けてくる。


「何が「これが俺達の出会いだった」ですか?ご主人様はバカですか?バカでしたねっ!」


「い、いやそんなバカバカ言わんでも……。」


俺は正座したまま、ミィナの御小言を神妙に受け止めている。


「じゃぁ、アホです。ご主人様のばぁーかばぁーか、あほぅ……。」


「あ、あの、ですね、ミィナさんや……。」


「もぅ、どうすればいいのよぉぉぉぉぉ……。」


俺の声はミィナに届かず、ミィナはブツブツと何やら呟いている。


「くっ、いっその事、あの娘をダンジョンに放り込んで、証拠隠滅するしか……。」


……マズい、ミィナが闇落ちしかけている。


「何、バカなこと言ってるのよ。」


「あ、あのぉ……出来ればもっと穏便に……。」


俺が闇落ちミィナに声を掛けようとしたところで、奥から二人の少女が姿を現す。


アスカとマリアだ。


マリアは、この村に戻って着て来てから、とりあえず服を何とかしようという事で、アスカに連れられて着替えに行っていた。……まぁ、素肌にローブを羽織っただけ、というのはさすがになぁ……。。



マリアを奴隷商から買い取った後、俺は当然のように、宿屋にマリアを連れ込んだ。


当然だ、そう言う事する為に金貨35枚という大金をはたいたんだからな。


俺はマリアをベッドに押し倒し、ローブを取り上げる。


ベッドの上には、抵抗を諦めた全裸の少女。


ウン、これは、もう、やるしかないじゃないか。


俺は頂きまーすとばかりに、その幼さの残る乳房に手を掛けようとした。


「ほ、本当に……私を犯すの?」


マリアは絞り出すようにか細い声で聞いてくる。


「当り前じゃないか。エッチの相手と俺の身の回りの世話をさせるために買ったんだからな。」


……あ、そうだ。


俺は思いついて、マリアの身を起こし、ベッドの上に座らせる。


そしてその膝の上に頭をのせる。


「……これは?」


「膝枕だよ。……しばらくの間、膝枕をして、俺を甘やかして癒すことを命じる。」


俺がそう言うと、マリアは、イヤイヤそうに顔をしかめながらも、俺の頭を優しく撫でてくれる。


……くぅっ、この癒し空間!見上げれば、ぽっち迄丸見えの胸と、その向こう側にある、恥ずかしそうな表情のマリア。


ウン、全裸膝枕サイコー!


ここまでくれば、エッチなんていつでもできるんだから、その前にいっぱい楽しまなきゃ損だな。


『お前、前もそんなこと言ってなかったか?』


『そうね、それでいつも直前でトラブルにあうんだわ。』


俺の中の悪魔君と天使ちゃんが、可哀想な子を見る目で俺を見ている……が気にしない。


マリアは俺の奴隷になったんだ。逃げることも拒否することも出来ないし、ここは村から離れた街の宿屋だから邪魔が入ることもない。


「わ、私を……どうする気?」


マリアが、俺の頭を撫でながらそう聞いてくる。


その声が震えているのは、不安で一杯だからだろう。


「お前は俺の愛人だよ。」


俺は身を起こすと、そう言いながら、マリアを抱き寄せ、その唇を奪う。


「ッ……!」


マリアは、身体を捩らせ逃れようとするが、不安定な態勢の上、俺が頭を押さえている為に逃れることが出来ない。


しばし、マリアの口内を堪能した後、俺は唇を離す。


マリアは、俺が唇を離した後もボーっとしている。


……ウン、俺のテクにメロメロだな。


俺だって,伊達にリリアに唇を蹂躙され続けているわけではない。


お陰で、キスのテクぐらいは……たぶん……。


「愛人として、エッチの相手はしてもらう以外は……メイドとして働いてもらおうかな?希望があればできるだけ添える様にするけど。」


俺は再びマリアの膝の上に頭をのせ、膝枕の態勢に戻る。


「……私を……国に……帰してもらう訳には……いきませんか?」


「国?……帰りたいの?」


俺が訊ねると、マリアは少し逡巡したのち、コクンと頷く。


「そう言えば、マリアは、どこでどうして奴隷になったんだ?」


俺の問いに、今度はマリアは固く口を閉ざして応えようとしない。


俺は起き上がって、背後からマリアを抱きしめ、その胸を弄びながら「命令」する。


「命令だ。マリアの事を話せ。」


「……っ……わ、私は……エア・エール皇国の第一皇女、マリアメイア・ラスティエールです。」


「え……マジ?」


……コクン。


マリアが小さくうなずく


俺は思わずマリアから距離を取り、正面切って向かい合う。


「皇女様?エア・エールの?」


コクコクとマリアは頷き、話を続ける。


マリアの話によれば、マリアが、お忍びで街に出た際に、攫われたのだという。


マリアを攫った男は、敵対国のユアシール王国の手のモノだという。


男の話では、マリアを攫ったのはトリニティ共和国の手のもので、マリアを人質にエア・エールから独立、宣戦布告をするつもりだとエア・エール皇国に噂を流すのだという。


エア・エール皇国とトリニティ共和国は主国・属国の関係で、エア・エール皇国の庇護下の元、トリニティ共和国の自治権が認められているといった感じだ。


エア・エールとトリニティの間は大変良く、両国を合わせると、それなりの軍事力が動員できるため、却ってそれが抑制力となり、そこ数十年の平和に貢献している。


そんな両国の仲を裂き、情勢を不安定にさせ、戦争を仕掛けるのが狙いだと男は言う。


そして、マリアは、奴隷登録をされ、ある一人の男に「奴隷として、トリニティ共和国内で売れ」と渡される。


マリアを託された男は、トリニティ共和国の国内に入ると、伝手を通してブラックマーケットの元締めと連絡を取り、奴隷商として、手ごろな人物にマリアを売るべく、カモを捜していたという。


俺に白羽の矢が立ったのは、単に、金を持っている平民、だったからだ。


下手に貴族に売ってしまえば、マリアの正体を知っている貴族だった場合、計画が失敗するかもしれない。


最終的に貴族の手に渡るとしても、それまでにマリアが傷物にされていれば、当初の目的は達せられる。


……と言う事だった。


「……えっと、これは……ヤバい?」


俺はむき出しのマリアの胸に視線をおとす。


「唇も奪われましたし、先程いい様に弄ばれましたが……、アナタのおかげで助かった事でもありますし……これ以上無体な事をなさらないのであれば……胸に秘めておいてもいいですよ?」


そう言って、マリアはにっこりと笑う。


「……とりあえず、村に帰るか。」


俺はマリアにローブを羽織らせながらそう呟く。……主従関係が逆転した瞬間だった。


……チキショウ!こんなことなら先にヤッておけばよかったぁぁぁぁ!!!!



「それでこれからどうするのよ?」


アスカがティーカップを持ったまま訊ねてくる。


「どうするかなぁ?」


俺は、飲み干したカップを置きながら大きくため息をつく。


「……無かったことにしよ?ダンジョンに籠れば大丈夫よ?マリアちゃんは皇女様じゃない、タダの奴隷娘……。ダンジョンでみんな楽しく……」


ミィナが闇落ちして、とんでもないことを口走っている。


「……確かにそれなら、俺がマリアとエッチしても問題ないか。」


「問題だらけよっ!」


パッシーーーンッと、小気味よい音が部屋中に響き渡る。


みると、アスカが大きなハリセンを持って、俺とミィナを睨みつけている。


「アンタら、何考えてるのよっ!」


「「世界平和?」」


俺とミィナが声を揃えて答える。


……だってなぁ?


今エア・エール皇国内は、マリアメイア皇女がいなくなったと大騒ぎになっていて、攫った犯人はトリニティ共和国内にいる……トリニティの人間が皇女を攫った、という噂が蔓延しているのだ。


そんなところへ、素直に皇女を帰しても、まともに取り合ってもらえるか分からない。

下手すれば、攫った犯人に仕立て上げられるかもしれないのだ。


だったら、いっその事、マリアをダンジョン内に閉じ込めて、俺達もダンジョンのサキュバスの街に籠って、サキュバス街のエリアを許可なきものの進入禁止に設定してしまえば、マリアは絶対に見つからないし、俺達の安全も確保できる。


腐っても、ロリ女神ちゃんの管轄下にあるダンジョンなのだから、その気になれば一刻相手でも防衛しきれるだろう。


「あのねぇ、このままマリアちゃんが見つからないと、エア・エール皇国がトリニティに攻めてくるって噂もあるのよ?」


「そうは言うけどなぁ。……なぁアスカ?」


「何よ?」


「もしお前がエアエールの、王族だったとして、俺が『マリアちゃんを助けてやったぞ!』と言ってアリアを連れて王宮に現れたとしたらどうする?」


「即刻逮捕ね」


「酷いっ!……けどそうなるよなぁ。俺が必死に言い訳してもダメか?」


「ソレがあるからねぇ。」


アスカはマリアの額に浮かび上がる紋章を指さす。


奴隷紋だ。


ただでさえ、長い間見知らぬ男と一緒に居たという事で、マリアメイア皇女は傷物にされた、という噂が飛び交うに違いなく、さらに奴隷紋があるとなれば、一族の恥とされる。


だから、マリアメイア皇女は、国に帰ると同時に、即刻奴隷紋の解除を受けると同時に、主になっている俺の口を塞ぐ……物理的に……だろう。


下手すれば、その場にいたという事で、数人の兵士や下級貴族も秘密裏に処分されるかもしれない。


更には、徹底的の俺の身辺を調べ上げ、ミィナやレイナたち、下手すればこの村全体が、処分対象として消されるかもしれない。


万が一、エア・エール皇国が、温情をかけて見逃してくれたとしても、トリニティ共和国の重鎮たちによって、この村ごと処分される可能性だってある。……エア・エールに対する謝罪と言う事で、大義名分が立つからな。


「と、とりあえず……何かいい方法があるはずよ?」


アスカが、冷や汗を拭いながらそう言うのだった。

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