第38話 金貨35枚の娘

「離してっ!」


叫び抵抗しながら娘が連れ出されてくる。


この場において、非常に珍しい光景だ。


「いかがですお客様。このように活きがいいのですが?」


ここは俺の村から少し離れたところにあるガルマの街……の地下街。


如何にも怪しい、というこの場所において、妖しいモノが取引されているという噂を聞いて、わざわざ変装までしてやってきたのだ。


目的はもちろん、エッチが出来る奴隷を買うためだっ!


……だってさ、アレからミィナは膝枕もしてくれないし、レイナは俺を避けるし、アイナとマーニャは、レイナを何とかしろと責めてくるし、アスカは、一応膝枕してくれるけど、それだけだし、リリアは相手したら死んじゃうから問題外だし……。


こうなればいっその事!と、村を飛び出して、隣町にあたるガルマの街で娼館に行こうと、村を飛び出したのが3日前の事。


村からガルマの街までは乗合馬車を使って丸1日。


街に着いた俺は、いざ娼館に行こうとし……、店の前で回れ右をして酒場へ移動。


べ、別に怖気づいた、わ、訳じゃいからなっ。


これは、アレだ……えっと……そう、情報収集なんだよ。


何も知らずに飛び込んで、高い金をぼったくられたり、外れにあたったりしないように、事前調査は大事なんだよ。……うん、そう、情報大事。


そして、のみ慣れない酒をちびちびとやりながら情報収集……と言う名の時間つぶしを2日に渡り続けていると、それなりに情報が集まってくる。


この街の代表はクソだとか、隣の村にいい店があるだとか、主国にあたる隣国の姫様が行方不明だとか、ゴブリンが増えただとか……。


何となくフラグが立ちそうな重要そうな情報から、どうでもいい情報まで、玉石混合で得ることは出来たのだが……肝心の娼館についての情報がまるで入ってこない。


俺はこのままではだめか、と、仕方がなく新しく入って来た冒険者の声を掛け、ストレートに聞いてみる。


俺の予想は正しかったらしく、この冒険者たちは、ここでの食事の後、娼館に向かうという。


俺がエールを1づつ奢ってやると口々に娼館で人気のある娘の名前を上げ、どのように心地よいかなど、卑猥な言葉を交えながら話し出した。


お陰で、有益な情報を得ることは出来たが、酒場のマスターから胡乱な視線で見られていたのに耐え切れず、俺は早々に酒場を後にしたのだ。


そしていよいよ、と娼館に向けて歩き出した時、店の側で、如何にも怪しい風体の男に、如何にも怪しい商談を持ち掛けられたのだ。……奴隷を買わないか?と。


普段であれば、そそくさと、その場を立ち去る俺だったが、この時は何分、いささか酔っていたこともありきが大きくなっていたため、怪しい男について行くことにした。


暫くすると、男は、如何にも怪しい裏路地に入り、如何にも怪しい入り口をtッとって地下へと降りていく。


なんでも、この先に、表だって売買するには多少問題のある品々を扱っているマーケットがあるとのこと。


道すがら、俺は男に「奴隷制度は禁止されているのではないのか?」と聞いてみる。


しかし、男はひょうひょうと「そんな事はないですよ」と答えてくる。


男の話では、「この国で奴隷にする」のは違法だが、「売買の禁止はされていない」とのことだった。


つまり、別の国で奴隷にしたものをこの国で売り買いする分には問題ないらしい。


もっとも、問題がないというだけで、公にはやはり色々煩いらしいので、こうして、地下での契約となるそうなのだが。


……ウン、如何にもって感じで、中々ロマンをくすぐる設定ではある。


「さぁ、ここですよ。」


男に連れられてやってきたのは、如何にも怪しい家屋。


中に入ると、格子で区切られた小部屋があり、その中のいくつかには半裸の少女が身をすくめて、隅の方で縮こまっているのが見えた。


「ところでお客さん、何かご希望はおありで?」


「うーん……。」


俺は小部屋を見回しながら、ぼそっと答える。


「少なくとも、もっと元気な娘がいいなぁ。」


小部屋の中にいる少女は、皆絶望していて瞳に光がない。


まともに受け答えも出来ず、まるでただの人形というような印象を受ける。


「ふむ……そう言えば、昨日入荷したばかりの活きのいいのがいますが?」


「……もちろん、エッチ可能だろうな?」


「それは、もう。」


男は揉み手をしながらこちらを見る。


「奴隷ですから、主人の言う事には逆らえませんよ?ただ、まだ初物ですからねぇ。ご主人様に対しての礼儀がなっていないですが……。」


男はそこで言葉を切って、耳元で小さな声で囁く。


「嫌がる少女を無理やりモノにし、言いなりになるように躾ける、というのが流行ってますよ?如何です?」


男の言葉に、俺の心臓がドクっと跳ね上がる。


……くぅ~。調教鬼畜プレイっ!アリだなっ!


「ま、まぁ、見るだけ見てみようか。」


俺は声が上ずるのを必死になって堪えながら、平静を装って男に告げる。


「くフフフっ、少々お待ちくだされ。」


そう言って男は姿を消し、少ししてから少女を連れて現れ、今に至るという訳だ。


「少し大人しくしなさい!」


「あぅっ!」


男が何か呪文のようなものを唱えると、少女の額に何か紋様のようなものが浮かび上がり、崩れ落ちる。


男はその少女の腕を掴み絶たせると、一気に薄絹を引き裂く。


「い、いやぁぁぁ……。」


少女の隠されていた部分が露わになる。


年の頃は13~15。やや幼い顔立ちをしてはいるが、俺と同年代かやや下といったところか。


ストレートの長い金色の髪が胸元で揺れていて、大事な部分が見え隠れしている……が、それがイイっ!


薄いアンバーの瞳には、涙が浮かび、それでも屈しないと、きッと俺を睨みつけてくる。


いや、今お前を痛めつけてるのは俺じゃないけど……うぅぅーゾクゾクします、ありがとうございますっ!


指して大きくはないが小さくもない形の好い二つの膨らみは、少女の身体にベストな大きさだと思う。あれより大きいと、エロ差が前面に出てくるし、あれより小さいと、幼すぎる感じになる……まぁ、真正のロリにはそっちのほうがいいのかもしれないけどな。


「こちらは、昨日入荷したばかりで、しつけも何も出来て……。」


「買った!」


「はぁ?」


「買うと言っている。……エッチしても問題ないんだろ?」


俺がそう言うと、少女はビクッと身体を震わし、自らの肌を隠すように縮こまる。


「まぁ、奴隷ですから、無理強いしようがどうしようが、逆らえませんからな……しかし、本当に?初物ですし、それなりにお値段が……。」


「金貨35枚。これ以上は出す気はないっ!」


「いや。その……、」


男が何か言い募ろうとしているが、俺はそれ以上交渉する気はない。


「訳ありなんだろ?相場以上の価格だし問題はないはずだ。」


そう、この国で売買は禁止されていないとは言っても、こんな地下で行われる商売だ。後ろ暗いバックがあることは間違いない。


それに男の様子を伺っていると、初めから、このを売りたがっていた事は、少し考えればすぐわかる。


でなければ、行きずりの正体不明の男に、リスクを抱えてまでアンダーグラウンドに案内するわけがない。


俺が女をほっっしていたこと、それなりに金を持っていることは酒場での様子を見ていればだれにもわかる事だろう。


だから、この男は俺に声を掛けてきた。


自売就労者でも、この少女と同条件であれば金貨25~30枚が相場だと聞く。


探せば手頃の少女が合法的に手に入るのに、わざわざ奴隷を買いたがる者は、この国では皆無に近い。


この男がそれを知らなかったか、もしくは、俺が、そんな事も知らないような田舎者に見えたか……。


多分後者だろうなぁと思いながら、俺は男にどうする?と問いかける。


「はぁ……仕方ないですなぁ。それで手を打ちましょ。」


おとこはおれからかわぶくろをうけとり、なかみをかくにんすると、「手を……」と言ってくる。


俺は言われるがままに右手を差し出すと、男は、俺の手のひらを少女の額に当て、なにやら唱えると、少女の額に謎の紋が浮かび上がり、俺の手のひらを伝わって、なにかが流れ込んでくる感じがする。


「これで契約終了です……あ、これサービスですな。」


男は緩やかなローブを少女に渡し、はよ出てけと、言わんばかりの視線を向ける。


俺は、少女の手を取ると、そのまま逃げるように地下街を抜けて地上へと戻るのだった。


……これが、俺と奴隷の少女……マリアとの出会いだった。

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