第35話 お預けって、そんなぁ……。
「あのぉ……足を崩してもいいでしょうか?」
俺がおずおずとそう言うと、レイナとミィナにキッと睨まれる。
「何故、妾まで
正座させられておるのじゃ?」
「しぃっ!今は逆らっちゃ……」
「なに二人でイチャイチャしてるんですかっ!」
「「はいっ!すみませんっ!」」
ミィナの鬼のような形相に、俺とリリナは慌てて謝る。
「妾は魔王なのじゃぞ……」
リリアはブツブツいながら項垂れている。
俺はそぉっとアリスに視線を送る。
しかし、アリスは面白そうに、俺達を眺めている。
仕方がなく、俺はアイナに視線を向ける。
「甲斐性ナシのくせに浮気……」
「浮気者にゃ。」
……イヤ、違うんだよ。浮気じゃなくて……。
「言い訳無用にゃ。」
「一人を心配したレイナは、何度も迷宮を行ったり来たりしていた。」
「ちょっ、アイナちゃんっ!それは内緒だって……あっ。」
アイナの口を慌てて塞ぐレイナだったが、俺と目が合い、動揺を見せる。
「べ、べつにカズトのことをし、心配してたわけじゃないんだからねっ。」
アタフタと言い訳をするレイナ。
……ツンデレご馳走様です。
意味のないお説教が1時間ほどされた後、俺……とついでにリリアは解放された。
解放されたというより、ミィナとレイナの怒りが収まったのと叱るネタが尽きたのが正直なところだろう。
マーニャが「お腹が空いた」と言い出したので、お説教は御開きとなり、みんなで食事の準備を始めたのだが……。
「なぁ、ミィナ。」
「何?」
応えてくれるものの、反応がまだ冷たい。
「えーとだなぁ。その……色々あったが10階層をクリアしたの事実だし、その……。」
「……10階層のボスを倒したらって話だったよね?」
ミィナが冷たい声でそう言う。
「えっ、いや、まぁ……ボスはサキュバスたちの……。」
「ボス倒してないんですよね?」
「えっ、あぁ……、まぁ……。」
「じゃぁ、約束は果たせてませんよね?」
「えっ???」
「カズトさんは、ボス倒してないんですよね?」
「えっと……。」
「倒してないですよね?」
「……はい、スミマセン……。」
……納得いかないがそう言う事らしい。
当然エッチもないと……。
俺が落ち込んで、ふて寝していると、リリアが淫夢を見せてくれた。
ウン、もう、これでいいんじゃないかな?
◇
それから数週間後……。
ギルドから、各地に情報が流れて、冒険者たちがチラホラとやってくるようになった。
お陰で、村の経済も上向きになり、税収も上がり、村人達の所為かく環境も向上した。
ダンジョン内のサキュバスの村も、色々な設備やお店が整いつつある。
実はこの街の事をギルドに相談したところ、出向や出店希望者が多数現れた。
これなら問題はないだろう、と思っていたのだが、その後すぐに問題が浮上する。
……お店が稼働していないのだ。
原因は言うまでもなくサキュバス。
ダンジョンに店を出したり、ダンジョン内の施設で働くために向かった男たちだったが、あっという間にサキュバスの運営するお店の常連となり、仕事そっちのけで入り浸るようになったためだ。
……気持ちは分かるが仕事してくれよな。
結局、ダンジョン内の店や施設で常駐するのは女性のみというルールを設け、男性はギルドで行き来の管理をされることとなった。
この決まりが出来た時、俺のもとに、何とかしてくれという嘆願が山ほど届いたが、知らんがなそんな事。
結局、サキュバスたちの営業するお店の支店を村内に作ることで事態の収拾を図った。
勿論、入り浸るのを防ぐために、営業時間は夜から深夜にかけてのみと限定したが。
それでも、村の男たちは夜になるとお店に駆けつけ、大繁盛となる。
税収は増えたけど……村の奥様連中はお怒りの様で……。
「男ってアホだわ。これだと今後出生率は下がりそうね。」
アリスが呆れたようにそう言っていたのが、何故か頭に残った。
◇
数日後、アリスに膝枕させて癒されている時の事だった。
いつものように、リリアは何をするでもなく、俺の傍でおやつを貪っていて、アリスは仏頂面で俺を睨んでいる。
「まったく……なんで私がこんなことしなきゃならないのよっ!」
「そう言うなよぉ……。ミリィが膝枕してくれないんだよぉ。……唯一のふれあいタイムだったのにぃ。」
「何だ?妾との触れ合いじゃ物足りないのかぇ?」
おやつを食べる手を止め、リリアがずいッと迫ってくる。
「お前はすぐ迫ってくるだろうがぁッ!」
俺は心を鬼にしてリリアを払いのける。
リリアは他の娘に負けず劣らず美少女なので、間近で迫られると理性がヤバいのだ。
「いいじゃないのよ。ファーストキスした娘なんでしょ。沢山キスしてもらえばいいじゃないのよ。」
アリスが意地悪く言う。
リリアが俺キスをしたことは、あっという間にみんなに知れ渡ってしまった。
知れ渡ったというより、リリアが言いふらし俺の所有権を主張してまわったのだ。
ミィナと三人娘の俺に対する態度が、いまだに冷たいのはその精だった。
「そう言うがなぁ、リリアとキスすると寿命が縮むんだぞ……と言うかいつも臨死体験が出来るんだぞっ!」
「ふーん……いつも、してるんだぁ?」
アリスが冷ややかな目で俺を見る。
「し、仕方がないだろっ!食事はひ、必要なんだしっ……。」
リリアはサキュバスだ。しかも一族全体を統べる王でありその内包する魔力量は膨大なものである。
それ故に、多くのエネルギーを必要としており、店に来る男たちの精だけでは足りずに、ちょくちょくと俺の唇から直接精気を吸い取っていくのだ。
アレは断じてキスなどではないっ!
いわば人工呼吸みたいなもので……その……舌が絡んだりとか……決して欲情などは……いや、だって……。
アタフタと言い訳していると、リリアが耳元で囁く。
「えぇ~、ワ・タ・シ・の・事・キ・ラ・イ?」
一音一音区切りながら、甘い声で囁かれると、それだけで理性が飛びそうになる。
「あー、私の膝のうえでイチャイチャするなっ!」
アスカが、すっと立ちあがり、その勢いで俺の頭が床へゴツンッと落ちる。
「痛たたっ……何するんだよぉ。」
「膝枕はもういいでしょ。今日の義務は果たしましたっ!」
そう言って、アスカが部屋を出ていこうとしたとき、部屋一面に光が降り注ぐ。
「きゃるる~んっ!元気に童貞してるか~い?」
「このノーテンキな声は……。」
俺の目の前で、光が薄れていき人影が現れてくる。
そして……
「やっほ!童貞クン元気ぃ?」
そこに現れたのは、予想通り、ロリ女神ちゃんだった。
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