第33話 ダンジョン内に街を作ろう その4

「村がある……。」


10階層の扉を開けた俺の感想は、その一言に尽きた。


ただっぴろい草原の中で、ぽつ、ぽつと点在する家々。


まずありえない風景を目にして、俺は茫然としていた。


……それがいけなかったのかもしれない。


俺はあり得ない光景を見て失念していたのだ……ここがダンジョンの中であることを。


気づけば周りを取り囲まれていた……無数のおっぱい……じゃなくて女性型の魔物、サキュバスに。


アスカみたいななんちゃってサキュバスじゃなくて、正真正銘、本物のサキュバス様たち。


少し動くだけで、たゆんっと震える見事な果実に囲まれた俺は、いつしか拝んでいた。


ありがたや~、ありがたや~。


「何なの。コイツ?」


「まぁ一応、人間の男みたいだし、連れて行きましょうか?」


こうして、俺はサキュバスのお姉さまたちに捕まって、集落の中心へと連れて行かれたのだった。



「あの……これからどうなるのでしょう?」


俺は、隣で引っ付いている、見張りらしきサキュバスに声を掛ける。


この人は、捕らえられてからずっと、俺の腕を抱え込むようにして寄り添っていてくれる。


逃げ出さないようにするため……なんだろうが、その腕が多たわわな果実に包まれて……はい、ハッキリ言って天にも昇る気持ちです。


腕が幸せ~……チキショウ、俺の腕のくせにいい思いしやがって!


「ん~、多分話し合い?」


サキュバスさんが、上目遣いに俺を見ながら答えてくれる。


……くぅ、その仕草が可愛いぞ。


「話し合い?」


「そう、誰があなたを食べるか?」


「えっと俺食べられちゃうの?……それって物理的な意味で?」


「アハハっつ、キミ面白い冗談言うねぇ。私達が「食べる」って言えば……わかるよね?オトコノコだもんねぇ?」


サキュバスさんが妖艶な笑みを浮かべながらにやっと笑う。


……えっと、つまり……そう言う事?俺って美味しくいただかれちゃう?


俺は相好が崩れるのに気付かないまま、ニヤニヤとその妄想にふける。


「おやぁ?エッチな事……考えてる?」


サキュバスさんがツンツンと俺の胸を突っつく。


「あ、イヤ……そんな……。」


……ゴメンナサイ、考えてます。と言うか、今すぐにでもキミを押し倒してもいいかな?


そんなフレーズが頭の中をよぎる。


「ん~、押し倒されるのもいいけどぉ、今手を出したらぁ、怒られちゃうからぁ……。」


「えっ、今俺声に……んぐっ……。」


サキュバスさんが不意に唇を押し付けてくる。


……な、なにが起きて……。


舌が絡めとられ蹂躙されるが、いやではない……むしろ、もっと欲しいと、マイサンが主張を始める。


「クスクス。味見したこと、みんなにはナイショだよ?」


俺の口を離したサキュバスさんは、蠱惑的な笑みを浮かべながらそう言った。


……はい、誰にも言いません。


そう言いたかったのだが、身体に力が入らず、サキュバスさんに寄りかかりながら何とか頷くのだった。



暫くして、俺は広間の前に突き出された。


正面には、妖艶な雰囲気を纏う美女なサキュバス。


皆同じような恰好をしていて見分けがつきにくいのだが、目の前の美女は明らかに格が違った。


「さて、お前は我らの餌だという事は自覚してるか?」


いきなり餌呼ばわりですよ?コミュニケーションとる気があるんですかねぇ?


「いやいや、それより、なんでサキュバスさん達がこんなダンジョンの中で集落を作ってるんですか?という過去の階層のボスどうしたんですか?」


「「「「ダンジョン??」」」」


傍にいたサキュバスさん達がガヤガヤと騒ぎだし、互いに顔を見合わせる。


「鎮まれっ!……そこの男……ここがダンジョンとは誠か?」


……おっと、餌から男に格上げ来ましたぁ。


「ホントだよ。俺はこのダンジョンを攻略してるんだから。」


「……そうか。だったら何の問題もないな。」


「問題ない?」


俺はサキュバスの代表……めんどくさいからママサキュバスと呼ぼう。代表だし、バーのママさんみたいだからな。……を怪訝そうな顔で見る。


「あぁ、其方は久しぶりの人族の男なのでな。代表者がじっくり味わうか、皆で分け合うか、意見が分かれておってな。しかしここがダンジョンというのであれば、その内、別の男たちがやってくるのだろう?だったら、皆で分け合わなくても順番にしとけば問題ないからな。」


ここにきて乱交ですかぁっ!



「あのぉ……なんなら、全員のお相手しますよ?」


見ると、ここに集まっているサキュバスは30人足らず。流石にこの数を一度に相手は出来ないが、一晩二人を相手にすれば2週間足らずで全員を相手に出来る筈だ。


俺が下心?を隠しながら(隠せてなかったらしいが)そう提案すると、ママサキュバスはにっこり笑う。


「それが出来れば一番いいんだけどな。」


そう言いながらママサキュバスが不意に俺の唇を奪う。


ねっとりと舌を絡め、口内を蹂躙していく。しばらくして解放されると、俺は立っていられなくなり、その場に崩れ落ちる。


「ほら、口からの吸引だけでそれだ。一人相手にするのが限界だろうよ。」


ママサキュバスがあざける様にしてくれた説明によれば、精力絶倫のオークキングやオーガたちでなければ、直接交わるだけで、精気を吸い取られ干からびてしまうのだそうだ。


脆弱な身体しか持たない人族は、一度の射精で全生命力が吸い取られるという。


因みにオークキングやオーガたちでさえも、回復なしで一晩も交われ続けていれば死に至るという。

それこそが、サキュバスたちが恐れられ、忌み嫌われている所以とのことだ。


「えっと、じゃぁ俺があなたとエッチしたら……。」


「挿入する前に全生命力が無くなるだろうなぁ。」


……うそ。じゃぁ、サキュバスさん達とはエッチが出来ないって事?


いや、出来ないわけじゃない。頑張れば挿入までは出来る。


しかし、脱童貞と同時に人生が終わるってだけで……。


『諦めな』


『諦めなさい』


俺の中の悪魔君と天使ちゃんが、ぽんぽんっと肩を叩いて慰めてくれる。


「さて、じゃぁ、まずは私が頂くとするか。」


たゆんっと大きな双丘を揺らし、ママサキュバスが近づいてくる。


……ヤバいっ、エッチはしたいが、したら死ぬっ!


……考えろ、考えるんだっ!


「ま、待てっ!今俺が死んだら、後がないぞ?」


俺の下着に手をかけていたママサキュバスの動きが止まる。


「どういうことだ?」


「俺はこのダンジョンを管理する村の村長だ!」


俺は、このダンジョンが発見されたばかりだという事、ある程度ダンジョンをコントロールする術がある事。俺が戻らないと、ダンジョン開発は頓挫して、下手すれば閉鎖されるかもしれないという事などを必死に話す。


「………ま、いっか。頂きます。」


「待てっ!待て待てっ!お前今思考放棄しただろっ!」


いるのだ、時々こういう奴が。難しい事を考えるのが嫌で、とりあえず目の前の事だけを力任せで解決してしまえ、後は知らん、という奴が。


世間ではそういう奴の事を『脳筋』と呼ぶ。


……ダメだ、脳筋に理屈は通じないっ!


他に何かないか……。


必死になって考え、ある事を思い出す。


「そ、そうだ。俺が死んだら、お前らの仲間も死ぬぞ!」


俺のこの言葉は、ママサキュバスにも効いたらしい。


「どういうことだ?と話の続きを促される。


俺はとりあえず、身体の自由を要求し、自由に動けるようになってから、ぽつぽつと9階層での事を話す。


9階層で俺は、一人の少女?と出会った……と言うか拾った。


俺が見つけた時は、オーク共に凌辱される寸前で、俺は何とかオークたちを倒して、その少女を保護したのだ。


とりあえずセーフティエリアまで移動してから、助けた少女をまじまじと見つめる。


今だ意識はなく瞳は閉じたままだが、その顔の造作は十分に美少女と言っていいだろう。

年は大体9~10歳ぐらいに見えるが、幼女ではない、俺が少女と言ったら少女なのだっ!


大体幼女だったらロリコン呼ばわりされるだろうがっ!俺は少女は好きだがロリコンではないので、幼女は範囲外なんだよっ!


誰にともなくそう言い訳しながら幼……少女の様子を眺める。


外見はまごう事なきロリではあるが、コスチュームや背中の羽根、そして頭の角などからサキュバスに違いないと思う。


……サキュバスなら、ヤッてもOKじゃね?


『そうだなぁ。サキュバスならヤルことで精気を与えて回復できるかもしれん。ウン、これは人助けだぞ。』


悪魔君の言葉に、俺は大きく頷く。


『待ちなさいよ。そもそも寝てる相手に上手くできるの?ヘタレ童貞のくせに。』


天使ちゃんが至極もっともな事を言ってくる……。確かに……寝てても、相手は感じるのか?


身動きできない相手を犯す、というシチュには興奮するが、相手が感じないのでは、マネキン相手に腰を振ってるのと何の変りもない


そう考えたら、いきり立っていたマイサンもしょぼくれてしまう。


『いいじゃねぇか。ヤッちまえばこっちのものだぜ。卒業のチャンスをみすみす逃すのか?』


『やめときなさいよ、そんなお人形相手じゃなくて、ボスを倒せばミィナちゃんと出来るんでしょ?そっちのほうがいいわよ。』


……そうだ、俺にはミィナがいるっ!


天使ちゃんの言葉に、忘れかけていたミィナとの約束を思い出す。


こんなことはしていられないっ!


俺は、少女をその場に横たえて、念のため魔物が寄ってこないように携帯結界を張ってからその場を後にいたのだ。


「……一応、念のためにテイミングは掛けておいたけどな。」


サキュバスと言えども、意識が戻らない程衰弱している状況であれば、さしたる抵抗もなく成功するだろうと、ちょっとした思い付きだったのだが、予想通り、あっけなく成功してしまい、少しだけ肩透かしを食ったということは内緒である。


「ば、バカな……魔王サマをテイムしただとっ!」


ママサキュバスが驚愕の眼で俺を見る。


そんな目で見られても……って今なんて言った?


「とにかくっ!すぐにでも案内するのだっ!」


いきり立つママサキュバスを始めとした、サキュバスの皆さま。


……これは、とんでもないトラブルに巻き込まれたんじゃないだろうか?


俺は、ガクガクブルブルしながら、サキュバスたちの先頭に立って9階層へ戻るのだった。


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