第31話 ダンジョン内に街を作ろう!?その2

「カズトぉ、また見つけたにゃぁ。」


マーニャが嬉しそうに宝箱を運んでくる。


「そうか、じゃぁ、預かるな。」


俺は宝箱に、マーニャの『マ』と書いて収納へしまう。


「また探すにゃぁ。」


マーニャは俺が宝箱をしまうのを確認すると、とてとてとて~っと走り去っていく。


「あ~あ、あんなにはしゃいじゃって。」


レイナがクスリと笑う。


ここはダンジョンの7階層。


広い草原があるだけの不思議な階層。


すでに階下への階段も見つけてある。……俺がベースを張っているすぐ後ろにある階段がそれだ。


階段があるのに、下の階層へ行かない理由は、先程マーニャが持ってきた宝箱にあった。


このフロアは、通路も何もない、ただ広いだけの草原フロア……。ただし、各所に隠れるようにして宝箱が存在する。


時々ポップする魔物からも低い確率ながらも宝箱がドロップする。


所謂、宝探しフロアともいうべき、ボーナスフロアだったのだ。


お陰で⒨んなのテンションが上がりまくり……特にマーニャは、前回宝箱を無駄にしているだけに、そのテンションの高さは異常なくらいだった。


さらに言えば、俺が女神ちゃんのギフトを降ろして罠解除、宝箱解錠をしたら、何故かマーニャの好感度が上がり、今では、それまでの『カス』呼びではなく、「カズト」と名前呼びに変わるほどだった。


「さて、またチェックしますか。」


俺は、マーニャたちが集めてきた宝箱を種類別に並べる。


種類というのは、フィールドポップ型か、モンスタードロップ型か?のどちらかと言う事で、それぞれ別にしておく。


というのも、今まで10個の宝箱をチェックしたのだが、フィールドで見つけた宝箱と、モンスターがドロップした宝箱で、中身に偏りがあることが分かっている。


後、見つけた者によっても差があるかもしれないと睨んでいるので、宝箱には誰が手に入れたか?が分かるようにしてある。


因みに、宝箱回収係は、アイナ、マーニャ、アスカの三人。


マーニャはフィールドに散らばっている宝箱を捜し、アスカは、ひたすらモンスターを狩っている。アイナはその中間といったところだ。


俺は、降ろした『大盗賊の心得』のスキルの中から『罠感知』を発動させる。


このスキルは、「そこに罠があるかどうか」を感知するスキルで、熟練度が低くても、それなりに信頼値が高い、盗賊系の初級スキルだ。

だから、女神ちゃんのギフトで降ろした場合は100%の信頼度がある。


「……コレとコレとコレとコレには罠が無いみたいだ。……フィールドの方は見事に罠だらけだな。」


今までのチェックから、モンスタードロップの宝箱には、罠がある確率は低く、フィールドポップの宝箱は100%罠があった。


そして、罠の掛ってない宝箱から得られるものは大したものではなく、罠のかかっている宝箱の方が価値が高いものが入っていることが多い。


「さて、どんな罠かな?」


俺は罠解除のスキルを発動させ、宝箱を一つづつチェックしていく。


このスキルは盗賊系の中級スキルで、そこにある罠が、どのような罠で、どのように解除すればよいかを教えてくれる便利ななものだ。


中級だけあって、熟練度が低いうちは、罠の種類を間違えたり、解除方法が分からないあ、もしくは間違っていたりと、信頼度が低いのだが、熟練度が上がれば、これ以上なく安全に解除できる。


俺が日本でやっていたネットゲームでは『漢解除』という、どんな罠でも関係なく解除できる、特別な解除法もあったのだが、ここでそれをやると、罠の種類によっては、宝箱の中身まで失うので、あまりお勧めは出来ない。


尚、鑑定眼の持ち主であれば、罠がかかっているかどうかと、どのような罠がかかっているかという事は、熟練度が低くてもそれなりに看破できるので、ダンジョン踏破には、盗賊系のスキル持ちか、鑑定眼の持ち主がパーティに必須だと言われている。


それはそれとして……。


「レイナ、この7つは向こうに持って行って。」


「ハイ……結構多いですね。」


「あぁ、フィールド設置の宝箱の定番と言えば定番なんだけどな。」


レイナは俺と話をしながら、マークが付けられた宝箱を。端へと移動させる。


そこにはすでに3つの宝箱が置いてあり、今回のと合わせて10個になる。


ここに置いてある宝箱は、全部ミミックだ。


しかも、罠あり、罠なしの2種類がある。


罠なしのミミックは、罠がかかってないと安心している冒険者が、開けた途端にがぶりと襲い掛かってくるものであり、罠アリのミミックは、何とか罠を解除した、と安心して宝箱を開ける冒険者を、やはりがぶっと襲う、いやらしいモンスターである。


「……こんな所か。」


俺は、資料用に『罠の掛ってない宝箱』「罠がかかっているモンスターが落とした宝箱』『罠がかかっているフィールドポップの宝箱』『ミミック』をそれぞれ一つづつ収納に戻す。


そして残った宝箱の罠を解除していく。


「まぁ、こんなもんか。」


俺は宝箱の中身を並べていく。


戻ってきたマーニャたちによく見える様に、誰が持ってきた宝箱の中身なのかが分かるようにしてある。


アスカの持ってきた宝箱で、開けた物は全部で7つ。


普通のナイフと、キレ味向上の魔力が付与された皮剥ぎナイフ、それから、ノーマルポーションが5本と貨幣が合わせて、銀貨が8枚、大銅貨が12枚だ。



アイナの宝箱は全部で5つ。


弱い風の加護がついた籠手と、貨幣が合わせて、銀貨が16枚、銅貨が23枚。


そしてマーニャが持ってきた宝箱で、罠解除したものは3つ。……他はすべてミミックだった。


中身は銀貨が詰まった袋(中身は銀貨10枚)、錆びついたロングソード、ボロボロのマント。


一番宝箱を多く見つけたのに、中身が一番残念というのが、マーニャらしい。


戻ってきたマーニャが、がっくりと項垂れ、宥めるのにかなりの時間を要したのも、仕方がない事であった。




ズシャッ!


アスカの剣が、ミミックの身体を縦に斬り裂く。それが致命傷となり、ミミックの身体がボンッと弾けて消える。


「これで終わりよね?」


「あぁ、後は、資料用にしまってある奴だけだからな。」


「じゃぁ、これね。」


アスカは、地面に落ちたコインを投げてよこす。


ミミックコインと呼ばれる、ミミックが落とすドロップアイテムだ。


金や銀の色があり、表面に様々な文様が描かれているのが特徴で、コレクターなどもいるらしい。


コレクション以外では、含有している金や白金以上の価値はないのだが、含有率率が高いため、通常金貨1~2枚で取引されている。


ただ、描かれている紋様によっては、金貨100枚以上を出すコレクターもいることから、ミミックコインの相場はあって無い様なものとなっているのが現状だったりする。


そのミミックコインが22枚。


ギルドで投げ売りしても金貨20~30枚は行くだろう。


そのミミック箱の殆どはマーニャが見つけてきたモノだと慰めると、ようやくマーニャが機嫌を直したのが、ついさっきの事だった。




「さて、今夜はここで止まるとして、明日の事なんだが……。」


俺は一息ついたみんなに声を掛ける。


まだダンジョンに入って1日目ではあるが、思った以上に濃い情報を得られたうえ、戦利品もそこそこある。


7階層の広場も、幾つか壁が出始めているので、明日には迷路になっていることも考えると、宝探しは終わりで、迷路に変わった7階層と、地形が変わっている6階層を安全に抜けようとすれば1日はかかるだろう。


8階層に降りたとしても、1日がかりで8階層をまわって、戻ってくることになる可能性が高い事等から考えると、このまま8階層に進むより、戻ることも検討したほうがいいかもしれない。


そんな俺の考えをみんなに話す。


「そうね、ここは無理せずに戻った方がいいと思います。次は6階層から始めれば、1日で8階層か9階層まで辿り着けそうですしね。」


暫く話し合った後、レイナが代表してそう言う。


ダンジョンコアのバランス機構がうまく作動しているうえに、ロリ女神ちゃんの御業を使った、神代級の装備のおかげで、想定以上にサクサク進めているのが、みんなにも理解できているのか、ここで戻っても大したロスにならないと判断したらしい。



「そうと決まったら、お風呂に入ってゆっくり休むにゃ。」


明日は帰ると決を採ると、マーニャが、待ってましたとばかりに襲い掛かってきて、俺を縛り上げる。


……って言うか、縛る手つき、慣れて来てませんか、マーニャさん。


湯船はすでに出してあり、俺を縛り上げている間に、アスカとレイナが強力をしてお湯を溜めている。


「今日はサービスするにゃんよ。」


マーニャが、妖しく笑いながら俺に目隠しをする。


……サービスって???


サービスという言葉に反応してしまうマイサン。


落ち着け、この状況では何をされても受け入れるしかないんだよ。


そう思いながらも期待してしまうあたり、学習能力がないと言われても反論できない。



……結局、マーニャのサービスというのは、俺の身体の隅から隅まで、じっくりゴシゴシと磨き上げることだった。


えぇ、分かってましたよ。R18に抵触するようなことは何もないと。


ただ、見えないだけに、マーニャの身体のあんな所やこんな所が触れることで妄想が滾り、マイサンも元気一杯に主張するのは仕方がないと思うんだ。


だから、アスカさん、マイサンを凍らせるのはやめてくださいね。



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