第13話 盗賊団はお財布だって、偉い人が言ってたよね??
「今日中に柵は作り上げろよ!」
「了解でさぁ!」
村の男たちが、俺の指示通りに防護柵を組み上げていく。
これは、先を尖らせた木の棒を組んで組み上げた1m半位の柵で、これを並べておくだけで、侵入者の足を止めるというものだ。
槍のように尖った先は外を向いているため、ヘタに突っ込んでこれば大怪我を免れないし、乗り越えるにしても、尖った先端のせいで、そう簡単にはいかない。
そして、侵入者を足止めすることが出来れば、離れたところから弓や投石で迎撃することができる。
だから、村の男総出で、この防護柵を作成しているというわけだ。
村の子どもたちはマーニャの指揮の元、投石に向いた石ころと、矢の制作用の小枝を集めて回っている。
アイナと村の女性たちは、篭城用に食材集めと非常食の作成にあたって、ミィナは各種ポーションの制作に追われている。
村の人達は、今朝方、俺が村長になったということを知らされたばかりなのに、「新しい村長の言うことだから」と、素直に指示に従ってくれている。
村長……いや、元村長の思惑通りっぽくて、なんか悔しい。
ちなみに、その元村長は「妻の里帰り出産に立ち会う」とか言って、早々に村を出ていった。
……いや、逃げ出したんだろ、アレは。
どちらにしても、俺は村を守るべく、朝からこうして頑張っているわけだが……。
「カズト様、準備OKよ。」
「じゃぁいくか。」
俺は、近くにいた青年団のリーダーにあとを任せ、レイナとともに村を出る。
これから、レイナと偵察に行くのだ。
道中、罠を仕掛けながら移動しているので、盗賊団が見えるところまで移動するのに1日は掛かるだろう。
正直な所、いくら柵を作ろうが、迎撃体制を整えようが、盗賊団が攻めてきたら、殆ど役に立たないと思っている。
簡単に言えば、慣れているかどうか?という問題だ。
襲撃に慣れている盗賊団を目の当たりにして、果たして村人のどれだけが戦えるか。
だから、俺は、盗賊団が村に辿り着く前に仕掛けることに決めた。
そのうちの一つの策が、今、レイナと共にしかけている罠。
と言っても落とし穴とか、吊り下げロープ等のチャチなものだし、仕掛た場所は丸見えである。
これは、後ほどアイナが偽装処理をしてくれることになっているので、わざとみえるようにしてある。
そうしないと、逆にアイナ達が引っかかってしまうからな。
俺が村の防御のために立てた作戦はこうだ。
まず、俺とレイナが先行して、盗賊団の実数を確認する。そのついでに、弓矢と魔法で、何人か減らせるだけ減らしておく。
いわゆる威力偵察というやつだな。
先日、俺とミィナが見た通り、盗賊団の数が20人程であるならば5人は削っておきたいと思う。
ただ、そんなことをすれば、当然盗賊団は俺達を追ってくるが……実はそれが狙いだった。
いくら小さいとはいえ、村全体はそれなりの広さがあり、今の村の住民を総動員しても、全方向を警戒するなんて不可能に近い。
だから、盗賊たちの進行方向を決めてやれば、その方向だけの警戒で済む。
そして、追いかけてきた盗賊達を待ち受けるのは、様々なトラップというわけだ。
このトラップ地帯で、敵の数は半分まで減らせると計算している……というか、初見で引っかかる程度のトラップなので、半数が限界といったほうが正しい。
最後に、このトラップ地帯をくぐり抜けたところで、迎撃部隊が待ち構えている。
迎撃部隊といっても、木こりのベンと、猟師のジョンとソーンにアイナとマーニャ、そして俺とレイナを含めた7人だけどな。
村の中でこの7人だけが、魔物や獣相手に戦った経験がある。
全く、戦いの経験がないよりマシ、という基準で選んだのだが、レイナ達が獣相手に戦った経験があるというのは驚きだった。
それはともかく、数の上では互角だけど、戦闘経験という面では遥かに相手のほうが上だ。
特に、対人の経験は、確実に向こうのほうが上なのだから、1対1では敵わないだろう。
だから俺は、必ず、2対1、3対1の状況を作って、決して1対1で戦わないことを何度も念を押しておいた。
相手はトラップゾーンなどを潜り抜けてくるため、進行速度に差が出て、バラけるはずなので、そういう状況を作るのは難しくはない……というより、そういう状況を作るためのトラップゾーンなのだ。
多対1であれば勝機はあり、最初の一人さえ倒せれば、後は流れで勝利をつかめるはずだ。
俺の頭の中に、この場所をマップとしたシミュレーションRPGの絵が浮かぶ。
キャラクターが負ければ復活しないタイプのやつだ。
………大丈夫、俺なら出来る。
頭のどこかで、何かが引っ掛かる感じを覚えるが、それを不安の表れだと思い、片隅に無理やり引っ込めておく。
「ところで、レイナ。」
俺は不安を紛らわせようと、傍にいるレイナに声をかける。
「なに?カズト様。……やっぱり私を襲う気?」
蔑むような目で俺を睨むレイナ。
「オイオイ、何でそうなるんだよ。」
……確かに襲っていいなら……って、違うだろっ!
「だって……ぐすん……一応、旦那様になるわけだし……ぐすん……嫌って言ってもダメなんでしょ……。」
レイナは泣きながら衣類に手をかけ、一枚一枚脱ぎ始める。
……って、何黙ってみてるんだよっ!
俺は下着があらわになったところで我に返り、慌ててレイナを止める。
「だぁっ、何勘違いしているんだっ!襲わないからっ!だから早く服を着てください、お願いします……。」
俺はレイナの、年の割にはふくらみのある双丘に目を奪われそうになるのを必死に堪えながら、早く着衣を直すように促す。
「……ぐすんっ……襲わないのは、やっぱり胸がないから?」
「違うって!……ってか、襲われたいのかよっ!」
「クスン……だって、男の人は、女の子を見たら襲うって……。それに、カスト様が襲ってきたら、素直に受け入れて……むしろ襲うように仕向けて、キセイジジツ?を作れって、お父様が……。」
……あのクソ親父!なんてことを教え込んでるんだよっ!
「……まぁ、その……なんだ。誰に何を聞いたか知らんが、お前たちにそう言う事を強要する気はないから。」
着衣の乱れを直したレイナにそう告げる。
頭の中では、天使ちゃんと悪魔くんが口をそろえて『無理しちゃって』と言っているが、無視だ、無視。
「……ホモだから?」
「違うわっ!」
……やっぱり今ここで襲うべきなのでは?
「今はそういう事をしている暇はないんだよ。それに成人前の女の子にそういうことするのは……わかるだろ?」
「……なんだ、ヘタレか。」
「ヘタレちゃうわっ!今ここで犯したろうかっ!」
俺は図星を指されて頭に血が上り、レイナに襲い掛かる。
「い、いやっ!」
レイナを組み伏せ、その胸に手を……や、柔らかい。
……って、俺何をしようとしてるんだ?
頭ン中で、悪魔くんが『いいぞー、そのままいけぇっ!』と応援している。
「い、いや……、初めては……優しくが……いいの。」
目の前で瞳に涙を浮かべながら、怯えた様に言うレイナを見て、我に返る。
「お、大人をからかうと、そういう目に合うんだぞ。わかったか。」
俺は、そう言い捨てて「周りを見てくる」と、その場から離れる。
……ヤバかった。
あのままではとんでもないことに……。
『何でだよ。あの娘はお前の奥さんになるんだぜ?嫁というのは、合法的にヤれる相手って事だ。いや、むしろヤらないと浮気を疑われるレベルだ。つまり、ヤろうとしたお前は正しい。』
悪魔君がそう囁く。
……確かに。
……つまり、やらなかった俺が悪い?
『何言ってるのよ。あの娘はまだ11歳よ?手を出したら立派な犯罪者よ?この世界で成人が認められる15歳まで……いいえ、少しのフライングを認めるなら、せめてあと3年、14歳までは待つべきよ。だから、踏みとどまったあなたは正しいわ。』
天使ちゃんが、いい子、いい子と、頭をなでなでしてくれる。
『何が犯罪だよ!たかが4歳差だぜ。お前が25になったら相手は21、お前が40なら相手は36……全く問題ないだろ?それに嫁に手を出さないって、ヘタレを通り越してホモと思われても言い訳出来ないレベルだろ?』
『何言ってるのよっ!先の事はともかく、現在あの子は11歳なのっ!それにあなたの精神年齢は29でしょ?犯罪よ犯罪っ!』
頭の中で、天使ちゃんと悪魔君が壮絶なバトルを繰り返す。
「あぁっ、俺は一体どうすればいいんだっ!」
『『……とりあえず盗賊退治じゃね?』』
天使ちゃんと悪魔君が口をそろえて言う。
……ソウデスヨネ~。
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