第7話 彼らの願い
へぇ、何だか面白くなってきた。
生き別れの親子の再開、とはね。
「それでダネルさん、貴方は我々に何を望まれるのですか?」
「ガーウェイさんを、連れて帰らせてください」
まあ、生き別れの家族を見つけたら連れて帰ろうとするだろう。
でもそれは、ガーウェイの足にすがりつくアズという少年の場合だ。このダネルという青年が訴えることではない。
「ダメだね、ガーウェイは私が連れて行く」
「オイ、誰が一緒に行くと言ったんだ。
なあアズ、シアラは、君の母さんは今はどうしてるんだ? 元気で暮らしてるのか?」
「おかあさん、いつも元気だよ。いまは街ではたらいてるんだ。
おかあさんがはたらいてるお店でおとうさんのこと聞いたの。それでダネル先生におねがいしてここまで来たの」
「そうか、シアラは息災か」
そう呟くとガーウェイは膝をついてアズを抱きしめ、その頭を何度も撫でる。
本当に親子の感動の場面なのだけれど、こっちにも事情がある。
「ザイム……なにを泣いてるのだね」
「いえ、私も子供がいますので思うところが」
「そうかね。
で、ダネルと言ったね。悪いけど、ガーウェイは渡せないね。
少なくとも今日明日には使いものになるか試したくてね、それが済んで使えないと判断したら渡しても構わないね」
「なら金、ですか
それなら用意しているだけ支払います。この額でどうですか?」
ダネルは自分のカバンから小さな板を取り出し、先端に赤い石が埋め込まれた短い杖で数字を書く。
「この額なら今すぐにでも払えます」
「申し訳ありませんが、その額では到底購入額には及びません。最低でもその五倍は必要です」
ダネルが肩を落とす。
へえ、随分な額だったものだ。もっと安い買い物だと思ってた。
あいつにしては随分と金を出すことを許してくれたものだと思っていると、テーブルを叩く音が部屋の中に響き渡る。
「フザケるな! 俺はお前の物になったつもりは毛頭ない!
妻の息災も分かって、こうして息子もいるんだ。この子と共に妻の元へ行く」
「妻の元へ行く、と言われてもね」
私がザイムを見ると、彼はどこか言いにくそうな口調で話し始める。
「彼は奴隷としてレーテ様に買われました。
逃げ出された場合はレーテ様の責任ですが、もしお二人が連れて行かれた場合、この街では窃盗ということになります」
「そんな理不尽だ。ただ親子が一緒にいるだけじゃないですか」
「理不尽に感じるかもしれませんが、それがこの街の法です。
胸の印、隷属印がある限り人ではなく所有物なのです」
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