第3話 隻眼の竜戦士

 何と言ったらいい光景だろう、皆胸に同じ模様を刻印されたむくつけき男ばかりこうも揃っている光景というのは。

 フードのはしから見える光景に、なんとも言えないため息を一つこぼし、一緒に来ている犬人の方を向く。

「何と言うか、場違い感があるというか暑苦しいと言うか、ここはこういうところなのかね?」

「私に言われても困ります。行きたいと言ったのはレーテ様なのですから」

 そんな呆れたような言い方をしないでほしい。こんなところだったなんて、想像もしなかったのだから。

「お客様、この中にお求めの品はございますか?」

 この場で一番の責任者であろう商人が、腰を低くして私に声をかけてくる。

 お求めの、と言われても見た目で分かれば苦労はしない。

「この中で一番強いのは誰になるのかね?」

「それでしたら、あの青い鱗の竜人になります」

 そう言って指を指した方向には、確かに青い鱗の竜人がいた。その体はあちこち傷だらけで、右目に至っては潰れて視力を失っているようだ。

「強い、ですか」

 どこか怪しむような犬人の声。

「ええ、強さだけでしたら文句なしにオススメです。ただ……」

 なにか含みのあるような言い方だ。

「ただ、何だね?」

「性格に問題がありまして、持ち主が何度も変わってるんです」

 青い竜人を見ていた犬人が、険しい顔に変わる。

「持ち主が変わる、ということは、なにか問題を起こしている、ということでしょうか?」

「はい、ええ、持ち主に対して暴力や恫喝を行いまして、それで返品されているんです」

 ほう、それはそれは。少し間違えば自分殺されかねないというのに、豪胆な話だ。

「だとすれば、青い鱗の竜人は無し、ですね」

「いや、私は青い竜人がいいね」

 ギョッとした顔で、商人と犬人が、私の顔を見る。

「だってこの中で一番強いのだろう? ならそれしか選びようがないじゃないかね」

「レーテ様、聞いておられたんですか? あの奴隷は」

「暴力を振るわれるかもしないのだろう?

話はちゃんと聞いているさね」

 でもそのくらいでないと困る。そう、躾けるにしても分からせるにしても、そのくらい反骨心がなくちゃ、ね。

「ああ、でも」

 そうだ、これくらいはこの場で試しておかないと。

「そこの青い鱗の、私の前に来てくれないかね」

 私が言うと、ツバでも吐きかけてきそうな表情で私の方を睨み返してくる。

 うんうん、いいね。

 私の前に青い竜人が立つ。尻尾は不機嫌そうに揺れ、両の手はまっすぐに垂らされているけれど、いつでも私を殴るつもりだ。

「じゃあ、こっちを見てくれるかね」

 私は被っていたフードを脱いだ。

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