第21話 学園ダンジョン

(ニーナがめっちゃ不機嫌なんだが!こっち見てるってことは俺が原因だよな?何かしたっけ?)

俺は今までのことを思い出す。


(確かシード先生がダンジョンを潜るパーティーを自由に組むように言われて、それで今に至るんだよね………俺、悪い所あるか?)


記憶を辿っても全く心当たりが無い。

「「「バルデニア君(様)?」」」

「ん?………ぁあ、すみませんもうパーティーは決まっておりますので組むことは出来ません。」


俺は彼女達にお辞儀し、ニーナ達の方を見ようと振り返ろうとしたその時。


「おい!お前ら邪魔だ、退け!!!」

誰かの怒鳴り声が聞こえた。


(ん?この声は……。)

俺は何か聞き覚えがあり、気になって声の主を探すと、赤髪の男が取り巻きと思われる男子生徒を2人連れて仁王立ちしていた。


(ダリマ・パーキストか、確か最東端を守り続ける辺境伯家の長男で、小さい頃から辺境伯領近くの森で魔物を狩っているらしい。その為、魔物との戦闘経験が豊富である。まあこれは初めて見たときの印象が強すぎて俺がてきとーに調べただけだからな。もしかしたら俺が思っている以上に強いかもしれないけどな。)


「ニリナス王女殿下、並びにサリア公爵令嬢。私達と一緒にパーティーを組みませんか?」

ダリマはそう言いながら丁寧にお辞儀をする。


「だから僕たちには先約があると言ってるじゃないか。」

「お言葉ですが私は既にCランクのソロ冒険者です。私達と組んだ方が王女殿下方も安心かと。」


(あれ?思ってたよりランクが低いな、最近登録したばっかなのか?)

「そんなの必要無いよ。だって先約ってのはバルだし、Aランクのモンスターが出ても大丈夫だから。」


サリーは冷たくあしらう。

「くっ………ですが……」

「そろそろしつこいですよ、ダリマ様。」

俺は見ていられず口を挟む。


「――!バルデニア・クリントン…………チッ、どうやって王家に気に入れられたか知らないが………くそっ!覚えておけ!!」

ダリマは連れている取り巻きと一緒に去っていく。


「バル、来るのが遅い!」

「ごめん、こっちも囲まれてて。」

「いやこっちをボーッと見てたよね。」

「………バレてた?」

「はぁ~~」

「ところでサリー、どうしてニーナがほっぺを膨らませて俺を睨んでるかわかる?」

「私達をボーッと見てる余裕があるなら自分で考えればー。」


「ちょっ!わかんないから聞いているんだろ!」

「どうせヒント与えたって鈍感なバルにはわかりませんよーだっ。」

「鈍感って何の話だよ!」


「よーし、パーティーは組めたみたいだな。今回の授業は各階層に設置してある転移魔方陣に自身の冒険者カードを登録する事。そうだな………5階層をノルマとしよう。」


(学園のダンジョンだからな3年間も学園にいるわけだしざっとD~Cランクダンジョン程度だと考えられる、となると1~5階層のモンスターはゴブリン、オーク、ウルフといったところか。まあ俺は余裕だからサポート回るのかな……。)

と思ってた時期が俺にもありました。


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--------------------

「はぁぁぁーー!」

“ズバッ”

“ベチャッ”


「グゲゲッ!」

“ポイッ”

「《ライトシールド》」

“カンッ”

ゴブリンが投げた小石をニーナは簡単に魔法で防ぐ。

「《フラッシュボール》」

“ピカーン”

「グゲェ……」

“ドンッ……………ドサッ”

「やった!バル、また倒せましたよ!」

「あ、あぁ…。」

てな感じで俺の出る幕もなく進んでいる。


“じーーっ”

ニーナは何かを期待するかのように俺の方を見つめる。

(うっ、そんな目で見られたら……仕方がない。)

「す、すごいぞニーナ。」

俺はニーナの頭を撫でてやる。

「えへへ♪♪」

ニーナは幸せそうな顔をする。

(まあ、可愛いからいっか。)



◆◆◆◆◆

少し前


(ニーナがまだ不機嫌なんだけど、もうダンジョン探索始まるし……仕方がない本人に直接聞いてみるか。)

「なあ、どうしてそんなに不機嫌なんだよ。」

“プイッ”

(不機嫌というよりかは拗ねてる?)


「……………てくれたら許してあげます。」

「え………?」

「だから……そのぉ………頭を撫でてくれれば許してあげます……。」

ニーナは恥ずかしさか顔を赤くして声もだんだん小さくなっていった。

「頭を撫でる?こっ、こうか?」

俺はニーナの頭を撫でる。

「ふわぁ……。」

ニーナは目をとろんとさせる。

(くっ、めちゃめちゃ可愛い………。)

「は、早く行くぞ。」

「ふにゃふにゃ~~~………は!待っ、待ってください!」

俺は顔が熱くなるのを感じて逃げるようにダンジョンの奥に進んでいった。

◆◆◆◆◆


こんなことがあってからニーナはモンスターを倒す度にこんなふうに要求している。

「ぬる過ぎてもう5階層に着いたか。」

「まあまだまだ浅い所だからね。このダンジョンの最高到達層は73階層だし。」

「その言い方だとまだ攻略されてないみたいだけど。」

「そうだよ、知らなかった?」

「マジかよそんな幅広いダンジョンだったとは。」


“ザワッ”

(なんだこの気配は、今までの奴等と全く違う!)

「なあ、ちょっと寄り道してかないか。強そうなやつがいそうだし。」

「確かに居そうだね。てことはエヴォリュートかな。」

「え、エヴォリュート?」

「ダンジョンが進化する過程でたまに強いモンスターの出る部屋ができることを言うんだよ。」


「ふーん。」

(尚更期待が持てるな。)

「行ってみましょう。今のところ余裕なので」

“チラッ”

(何故かニーナも積極的だけど。)

俺達はその部屋に向けて進んでいった。

わくわくする気持ちに気をとられて誰かがついてきているのに気がつかなかった。



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バル達に忍び寄る影。果たしてその正体は…………。










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