第20話 注目?

「…もう朝か……。」

俺は昨日、自室に戻った後少し身体強化を練習し、食堂で夕食を食べて寝支度した後、身体強化の練習に没頭していた。


「いつの間にか寝落ちしていたのか。」

(でもまあ昨日だけでかなり感覚がつかめた。現時点での身体強化の限界もわかったし、今日の冒険科の授業で試してみようかな。)


俺は日課を済ませた後朝食を摂って噴水で2人を待った。

30分程待った後………。

(少し早く来すぎたかな。)


「すみません、待たせてしまいましたか?」

「ん?全然来たばっかだけど……。」

「それなら、ベンチに座ることないと思うけどね。まあ返しとしては100点だよ。」

「えっと………ありが……とう?」

俺はサリーから何かわからないけど評価された。


「やはり待たせてしまいましたか、すみません。」

「いや!まだチャイムは鳴ってないし俺が早く来すぎただけだから、全然気にしないで!」

「そうですか………。」

ニーナは少し元気が無なさそうに言う。



“キーンコーンカーンコーン”

「ほ、ほら!チャイムが鳴ったよ、早く行こう!」

(ニーナは悪くないのにそんな顔されると心が痛むんだけど。)


「ニーナ?そんな顔してないで早く行こ!バルも待ってるよ。」

「はっ!すみませんすぐ行きます。」

ニーナがこっちに向かって走ってくる。


「そういえばバルは昨日あれから大丈夫だったの?」

「もうしっかり休んだから大丈夫だよ。」

「それなら今日の冒険科の授業は参加できますか?」

「もちろん参加するよ。」

「本当ですか!やった!」

俺はニーナの笑顔につい見惚れてしまった。


(――――っ!初めて自然な笑顔を見たけどめっちゃかわいいな!)

「あれれーバルそんな顔を赤くしてどうしたのー?」

サリーがからかうようにニヤニヤしながら聞いてくる。


「べっ別になんでもないよ。」

「本当じゃないですか、病み上がりなんですから無理しないで下さい。」

そう言ってニーナの可愛らしい顔が近づいてくる。


(ちょっ、近っ!)

「だから何でもないって。」

俺は急いでニーナと距離を取った。

「そ、そうですか。」

ニーナは少し心配そうな顔でこっちを見つめる。


(あっぶねー!ドキドキで心臓が持たねえよ。でも何でこんなドキドキしてんだ?)

俺は不思議に思いながらも自分たちの教室に着いた。


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こうして午前の授業は何事もなく終わり、

昼食も食べ終わって冒険科の授業の集合場所の中庭に来ていた。


「昨日の体術科の授業よりかなり多いな。」

中庭にはざっと見た感じ昨日の2倍近くの生徒が集まっていた。


「貴族は大抵長男が家を継ぎますから次男以降の男子は王国騎士や冒険者を希望する人が多いんです。」


「なるほど、それで実戦を積むためにこの授業を選択する人が多いのか。」

(まあ実戦を積める授業はこれが最適だからな。)


「なあ、それって女子も同じなのか?」

さっきの言い方だと男子がほとんどみたいな感じだったけど、集まっている生徒の半分位は女子が占めていた。


「そんなのバルがいるからに決まってるじゃん。」

「え………?」

(俺がいるから………、ドユコト?)


「バル知らないの?今貴族の中で話題になってるのを。」

「俺が!?」

「だってまだ12歳なのにレッドウルフの群れを討伐するだけじゃなくてブラックウルフも討伐してるんだよ。そんなの話題になるに決まってるよ。」


「そんなの過大評価しすぎだよ、ブラックウルフだってノア兄さんたちの援護があっての討伐だし………。」

「でも決定的なダメージを与えたのはバルでしょ。」

「そうだけど………。」

「ブラックウルフの毛皮は鋼鉄よりも硬いんだよ。さらにはあの素早さ、1人でブラックウルフの毛皮を越える攻撃を当てることができる人がこの国に居るかな。」


「いや、こっちも最後の攻撃に懸けてたから避けられたり倒しきれなかったりしたら全滅してたよ。それに、ランクが俺より高い人は何人か居るし、騎士団の上位の人なら倒せるでしょ。」


「はぁ~~~~。」

サリーは大きなため息をつく。

「バルは知らないんですか?Aランクの魔物がどれだけの被害を与えるのか。」

「え?」

「Aランクの魔物1体だけで辺境の町であれば3時間もかからず壊滅するんですよ。」


「それに、Aランク以上の冒険者は大抵5人位のパーティーで何とか倒せるぐらいだよ。もちろん無傷では済まないし。」

「騎士団でも何人かの犠牲を出してやっと倒せるんですよ。」


「そうなんだ。」

「そうですよ。もう少しすごいことした自覚を持ってください。」


「みんな集まってるみたいだな。これから冒険科の授業を始めるぞ、担当のシード・ベルガーだ。これから授業の流れについて話す。」

シードと名乗った男は茶髪で左手に盾、腰の左側には剣を差していた。


「この授業を受ける者はほとんどが魔物と対峙したことがあるだろう、だから今回は3~5人のパーティーを組んで学園が管理しているダンジョンに潜ってもらう。ということで今自由に組んでみろ。」


シードがそう言うと女子達の視線が一気にバルの方に集まった。


「バルデニア君、私と一緒に組まない?」

「こんな子より私と一緒に組もうよ。」

「皆さん退いてくださいまし!バルデニア様はわたくしと組みますの。」


「えっ、えーっと。」

(何かめっちゃ集まって来たんだけど。)

“チラッ”

俺は一瞬ニーナ達の方を見ると、同様に男子達に囲まれていた。

サリーはそれを適当にあしらっていたが、何故かニーナは膨れ顔でこちらを睨んでいた。




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今回はダンジョン回にしたかったんですが意外と話が長くなってしまいました。

次回は確実にダンジョン回です。


意外と部活の疲労が大きいので、週一更新にします、すみません。

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