第19話 肉弾戦

「さあ!どんどん上げていくよー!」

“ダンッ!”

サリーは思い切り地面を蹴って距離を詰めてくる。

「ほっ、ほっ、ほっ。」

「くっ!」

(避けるので精一杯だな。)

俺は足に魔力を溜めて全力で後ろに跳ぶ。


「避けてばっかじゃ勝てないよバル!」

刹那、サリーの姿が消える。

(やばっ!)

俺は本能的に両腕を交差させ、両腕に魔力を集めて防御の体勢になる。

“ドンッ”

次の瞬間俺の体は、腕が千切れるほどの衝動を受けて大きく吹き飛んだ。

「ぐうっ!」

思わず声が漏れる。

(背中の方に魔力を集めろ!少しでもダメージを減らすんだ!!)

“ドォォーン!!!!”

俺は訓練場の壁に直撃した。


(魔力で強化したお陰であまりダメージはないな。でも、無理やり強化したからか魔力の消費量が多い。やっぱりサリーみたいに魔力を循環させながら強化しないといけないのか。)


俺は残りの魔力を全て体中に循環させる。

(魔力探知を使ってサリーの魔力の流れを見れば、攻撃の瞬間一気に魔力の流れが激しくなる。つまり、循環させる魔力の流れを激しくするほど強く強化できる。その分、魔力の制御をしっかりしないと魔力がゴリゴリに削れるけどな。)


俺は魔力の流れを速く、激しくしていく。すると体温がどんどん上がっていくのを感じる。

(だが、俺にはサブスキル・魔力の支配者・がある。それを駆使すれば確実に制御できる。)


「バル、雰囲気変わったね……。」

「今度はこっちから行くぞ!」

俺は一気に距離を詰めた。

それに合わせる形でサリーは攻撃を仕掛ける。


“ドドドドドドーーー!!!!”

俺とサリーの拳のぶつかり合いの音が、訓練場に木霊する。

「くっ!!」

俺はわざとよろける振りをする。

すると、予想通りサリーは少し大ぶり気味に腕を振り出してきた。


「《縮地》」

俺は縮地でサリーの背後に移動する。

サリーには少し大ぶり気味に振ったことで少し隙ができていた。


「やばっ!」

俺はその瞬間を見逃さずサリーの背中に回し蹴りをかました。


「かはっ!」

サリーは蹴られた衝動で肺の中の空気が吐き出される。


“ドーン!”

今度はサリーの方が訓練場の壁に激突した。

“グラッ”

(やばい、一気に強化した弊害で体温が高くなっている。)


“ガラッ”

「まだまだこれからだよ。ってバル!?」

(あ…………れ……?音が……段々聞こえなく………、それに……視界も……暗く。やばい………,意識が………遠の…………く………。)

“ドサッ!”






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「ん……、ん〜〜、は!」

俺は気がついて窓の外を見ると空は茜色に染まっていた。


「気がついたんですね!良かった〜。」

「バル、大丈夫?」

「ニーナ……サリー……、ここは何処だ?」

「ここは学園の保健室ですよ。」

そうか……………確か俺は…………体術の授業でサリーと戦って………それからら………。」

(えっと、何だっけ?)


「バル、は僕との対人戦の途中で倒れたんだよ。」

「そうだった。確か………サリーが身体強化しているのを見て、ちょっと真似しようとしたらやりすぎて体内の魔力を激しく動かしたせいなのか体温が一気に上がって意識が保てなくなったのか。」


「「え?!」」

「やっぱりぶっつけ本番でやるのはリスクが高いよな。2人ともどうしたの?」

「「え、…………えーー!?!?」」

(うっさ!急に大声出してどうしたんだ!?)

俺は咄嗟に耳を塞ぐ。


(そんなにびっくりするとこあったかな?)

「真似ってサリーのを見てですか!?」

「う、うん。」

「バルって元々身体強化が使えたんじゃないの!?」

「まあ、学ぶ機会が無かったし。………それに使えるなら最初から使っているよ。」


「見て真似たってことは、他の魔法も出来るの?」

「いや無理だと思う。俺のは魔力を術式に込めないで無理矢理魔力を動かして擬似的に身体強化を再現しただけだし。魔法とも言えないただの猿真似だからな。実際ジョブスキル欄に新しく追加されてないし。」

(ただまあ、やり方は掴めたし練習すればジョブスキルじゃなくても使えるようにはなるだろ。)


「そうなんだ、にしてもすごすぎるけどね。」

「それよりもサリー、対人戦がスッキリしない形で終わってしまってすまなかった。」

「いいよ別に、また今度やればいいから。」

「ああ、あとこんな時間まで看病させて悪かったな。」

「い、いえ私達は居たくて居ただけですので。気にしないで下さい。」

「そうか………、ありがとな!」


「―――――っ!!!」

ニーナの顔が一気に赤くなる。

「どうしたニーナ?顔が赤いぞ、具合でも悪いのか?」

「え、いや、そ、そのぉ…………だ、大丈夫でしゅ。」

「そう?俺はもう部屋に戻って寝るよ。2人共また明日な。」

俺は保健室のベットから出て自室に向かった。


(とは言いつつも夕食まで時間があるから、少しでも身体強化を練習しておくか。明日冒険科授業もあるしな。)





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冒険科の授業では、ダンジョンに入ります。

そして、ダンジョンにはトラブルが付き物…………。




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