第10話 全力

「どうせ全員やるんだから誰からやっても変わんないだろ。」

「あまり支障はありませんね、ええっと君は………、受験番号43番バルデニア・クリントン君だね前に出てきなさい。」

俺は言われた通り前に出た。


(まじか、なんか通っちゃったよ。)

「勝負ありもしくは、危険であると私が判断したら強制的に終了させる。」

俺は収納スキルから弓を出して構え、ガルダは右手に剣を、左手に盾を構えた。


「両者準備はいいな、………始め!」

「《ロックアロー》《ウインドアロー》《速射》」

開始と同時に牽制用にロックアローをガルダに、砂煙を起こすためウインドアローを地面にそれぞれに向けて速射で放った。


「《パリイ》」

ガルダはそれを盾ではなく剣を使って防御した。


(まじか、盾じゃなくて剣で防御するのかよ。でもまあ砂煙で身を隠せたから場所を変えながら撃っていけば……)

「《スパイラルラッシュ》」

俺は場所を変えていたが、そこに合わせるようにガルダはスキルを放ってきた。


「くっ……。」

俺は慌てて避けようとするが、避けきれずいくつか傷を負う。


「《ウインドアロー》《速射》」

俺は苦し紛れに速射でウインドアローをガルダとの間に放ち、距離を取った。


「はあ…、はあ…、はあ…。」

俺は肩で息をしていた、砂煙が晴れてくる。


「そ、そこま「待つんだ試験監督、そいつはまだ本気を出していない」」

俺の姿を見た試験監督が試験を強制終了させようとするが、それをガルダが止める。


「すみませんが、これが俺の全てですよ。」

「悪いが俺はそういう勘は鋭いんだ。それに、お前Bランク冒険者なんだろ、今朝ギルドでお前のこと見たぞ。」

(Bランクってことバレているのか。)


「ちなみに本気を出さなければお前は一番下のDクラスだ。」

(それはちょっといやだな、一番下のクラスだと親の顔に泥を塗るようなことだしな。)


「はあ~~、わかりましたここからは全力でいかせていただきます。」

「やっとやる気になったか…本気で来い!!!」

「《ファイヤアロー》《速射》」

“ガンッ、ガンッ、ガンッ”

ガルダは盾を使って防御をしながら突っ込んでくる。


「《ブレイクスラッシュ》」

ガルダはその勢いでスキルを使って剣を振った。


「《縮地》」

俺はガルダの後ろに移動し、

「《ウォーターアロー》《速射》」

速射で放ったウォーターアローはガルダの背中に直撃した。


「くっ………。」

「《縮地》《ウォーターアロー》《速射》」

「《縮地》《ウォーターアロー》《速射》」

「《縮地》《ウォーターアロー》《速射》」

俺は一気に畳み掛ける。


「くっそ、ちょこまかと………。」

ガルダの顔が険しくなった。


「はあっ!!」

ガルダが剣を振る。

「《縮地》」

俺は縮地で避けて………。

「チェックメイトだ《アイスアロー》《速射》」

アイスアローはガルダの体に直撃し、そこから徐々に氷が広がり顔を除く全身が凍りついた。


「こ、降参だ。」

「そ、そこまで!」



「完敗だったな」

俺はファイヤアローで氷を溶かすと、ガルダはそう言った。


「いえ、良い経験になりました。」

そう言って俺は握手を求める。

「こりゃとんでもない怪物がいたもんだ。」

そう言ってガルダは握手に応じる。

「お世辞でもSランク冒険者様にそう言ってもらえると嬉しいですよ。」

「お世辞じゃないんだけどな。」

ガルダは苦笑いしながらそう言う。


「ガルダ殿、このあとの試験は………。」

「ん?問題ない、どんどんやろう。」

「でしたら俺はこれで。」

そう言って俺はノア兄さん達の元に戻った。



「バル、お前あれが本気じゃ………。」

「すごいわバル!Sランク冒険者を倒せるなんて!!!」

ノア兄さんの言葉を遮るかのようにニーナがものすごい勢いで近づいて来た。


「ニーナ、ちょっと近付きすぎじゃないか。」

「え………――!す、すみませんつい興奮してしまって。」

ニーナの顔はみるみるうちに赤く染まっていった。


「ちょっとノア兄さん達は何でニヤニヤしてるんだよ。」

ニーナの後ろにはノア兄さん達がニヤニヤしながらこっちを見ていた。


「いや~~~べつに~~~。」

ノア兄さんは含みのある言い方をした。

「うふふふふ。」

ティア姉さんはずっと笑っている、何か怖いんだけど。

「なるほどね、鈍感なんだ。」

サリーはよくわからないことを呟いた。


そんなこんなで入学試験は終わり、俺は学園内にある寮でその日を終えた。



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次回

典型的な貴族&王族坊っちゃんの登場だ!!


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