2 拾った少女はどうやら異世界人らしい。
それから俺は尻餅をついたままでしばらく呆けて少女をじっと見つめてしまったのだが、ようやく自分が名前を問われたことに気がつき、慌てて名乗った。
「俺は、
「……? こうこうせい? やはり異界の言葉はいまいち理解できませんわ。翻訳機能が機能していないのかしら? それとも翻訳するべき言葉がないのでしょうか」
しかし返って来た反応は、いまいち要領を得ないものだった。
よく聞き取れなかったが、異界だの翻訳機だのと言っていた気がする。さっぱりわけがわからず首を傾げた俺に、今更お姫様抱っこされていたことを知った様子で急いで俺の腕から飛び退いた青髪の少女は言った。
「まさか殿方に体を預けてしまっていただなんて……。この度は本当に失礼をいたしました。
ワタクシ、ダニエラ・セデカンテと申しますの。今はただのダニエラと言った方がいいかも知れませんけれど。サガワ様、ワタクシを介抱していただきありがとうございました」
「あ……どうも」
なんだかよくわからないままに頷く俺。
なんだろう、この違和感は。目の前の少女はおかしい。何がおかしいかはっきりと言葉にできないのがもどかしいが、とにかくおかしいのだ。
俺の家の前に倒れていた状況といい、この態度といい、先ほどの言葉といい。ダニエラという名前から想像して、外国人だろうか。もしかするとワケアリで、日本に逃れて来た人だったりするのかも知れない。もしそうだとすればややこしいぞ……。
「どうして君は俺の家の前に? 外国から来たのか? それに、今時そんなドレスを着てるってことは、どこかのお嬢様だったり? 誰かに追われていたりはしないよな?」
恐る恐る尋ねてみる。
口にしつつ、そんな非現実的なことあるわけがないと思ってはいたものの、それでも訊かずにはいられなかった。俺はごく普通の高校生なのである。面倒ごとに巻き込まれるのは御免被りたかった。
だが、少女から返って来たのは予想だにしない答えで。
「実はワタクシ、あなたからすると遥か彼方の異界からやって参りましたの。故郷から追放されたのですわ」
「……は?」
「異世界人、と言った方がわかりやすいでしょうか。この言葉はきちんと翻訳されていますのかしら。うまく伝わるといいのですけれど」
青髪の少女――ダニエラの心配は杞憂だ。
伝わっている。きちんと言葉は伝わっている。ただ意味がわからないだけで。
拾った謎の少女が異世界人だった。
そんな夢物語みたいな話を突然言われても、脳の処理がついていかないのは当然のことだった。
でもこれだけは言えた。
――ああ、やっぱり面倒ごとになった。
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