第25話 鎧とは

「ようは、あたしにあの化け物を斬れってんだろ? 鎧じゃ、竜を殺せないからな」

 熱いシャワーを浴びた後、浴室にあったバスローブを着て、ベッドに向かうと、凛子は核心に触れた。

 全裸、ではない。

 おれと同じようにバスローブに身を包み、シーツの上に横になっている。

「ん? なんだよ、違うのか?」

「…ああ、その通りだ」

 真剣な表情でおれを見返す凛子。

 彼女自身はスイッチを切り替えたのだろうが、それでも目のやり場に困る。バスローブの胸元や裾から見える太股など、全裸の時とはまた違った色っぽさがあった。

 それに気付いていないのか、凛子は真剣な表情で言葉を続けた。

「正直、この場で結論を出すってのは難しい。あたしは賛成だけどカンナの奴が渋っててな」

「カンナが?」

「メリットがわからないってさ。あたしらのじゃねーぜ? あんたらのだ」

 凛子はそう言って身を起こした。

 胸元が更にはだけたが、凛子は険しい表情で視線を向けてくる。

「あたしらは星守だ。竜が暴れてんならそれを鎮めるのも仕事の一つ。けど、あんたらは違う。あんたらはあくまで星の生命力を奪うことが仕事のはずだ。ああなった竜から星の生命力は奪えない。星と竜は別物だからな。あたしらにメリットはあるが、そっちにはなにもない。むしろ、無駄働きだ。それをする理由がうちのボスにはわからないんだとよ」

 あたしはどーでもいいんだけどさ、と凛子は言葉を締める。

 だが、その言葉とは裏腹に彼女の視線はおれを問いただすように鋭かった。

 泣いたくせに。

 外の天災をなくす方法を話しているのにすぐには食いつかない。

 先輩の言ったとおりだ。

 凛子達とおれ達は決して相容れない。

 世界を救うなんて大義名分があっても、簡単に協力することができない程度には。

 こうなった場合の対処についても、先輩から指示を受けている。

「なんだ、そんなことか」

「そんなこと? なんだよ。わかるのかよ、お前に」

「ああ、先輩から言伝を預かってる。ていうか、隠す事じゃないから言わなかっただけだ」

「じゃあなんなんだ? お前ら、何がしたい?」


「生け捕りにしたいんだ、あの竜を」


 凛子が一瞬呆けた表情を見せた。

 直後、いぶかしげな表情を見せてから、目を開いておれを凝視する。

 なんだ、その百面相。

 言葉を失って表情を変える凛子を見つめ、思わず苦笑しそうになった。正直、そこまで驚くとは思わなかった。なぜなら、先輩の言葉が正しいならば、

「…お前、本気で言ってんのか?」

「ああ。そこまで驚くことないんじゃないか」


「この鎧はそのためのものなんだろ?」

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