第2話 定期的に見返すのは新しい気づきを得られる。③

「ま、待って」

後ろから声を掛けてくる、先ほどの女性だろう、その声に反応してしまい、つい後ろを振り返ってしまう。

戦士としてかっこよく去りたかったのだがな


近くまで近寄ってくる女性

「ぁ、駅前にたまにおる外人さんか、えっと、あ、え、えくすきゅーずみー?」

外人さん?もしかしてなくても、同じ場所に留まり過ぎて目に留まってしまっていたのか?なら、その体でいるほうがいいのか?いや、この土地は外国人に手厳しいかもしれん

「言葉、わかるから大丈夫ですよ外国の人じゃないので」

優しくにっこりとほほ笑むと

「ぁ、そ、そか、日本の方やったんか、そ、その、ごめん」

顔を真っ赤にして俯いて、両手の指を互い合わせにして指をくるくるとまわしている、ふぅむ、可愛いな。

「なんか、そのよーわからへんけど、助けてくれたんやんね?」

ぱっと俯いていた顔をあげ、こちらの目を見てしっかりと言葉を投げかけてくる、綺麗な顔立ちだな、とても、綺麗だ…


俺がつい見惚れてしまいじーっと動かないでいると

「な、なんや、もう、何か反応してぇやぁ…うちだけ、話してなんか、はずぃやん?」

先ほどと同じように下を向いて指をくるくるとまわしている、なんだこの可愛い生き物は

「ぁ、すみません、ちょっとぼーっとしてました」これ以上、見惚れるわけにはいかないのでしっかりと丁寧に反応を返す。


俺の言葉を聞いてまた、ぱっと顔を上げて嬉しそうに、だけど、少し頬を赤らめて恥ずかしそうな顔で

「無視されたんかとおもったやん、なんやもう、いけずな人かと思うたわ、さっきは助けてくれてありがとうございます」

最後は頭を下げて感謝の言葉と感謝を伝える意思表示をしてくれている。素直にお礼を言えるのは良いことだ。

心が汚れているものであれば、あの程度でわざわざ、引き留めてまで感謝の言葉を述べようとは思わないからな。


それに、男性に絡まられていたのだから、助けたのが男性であれば警戒するのが必然だろうに。

笑顔といい、太陽のように輝く人だな、美しい…


っは!?いかんいかん、見惚れていては、しっかりと反応を返してあげないと相手が不安に感じてしまう。

「き、気にしなくていいですよ、たまたま、荒げた声が聞こえただけで、要らぬお世話でしたか?」

街ゆく人たちから、数多くの記憶を盗み見たので、この土地の言語は完璧に習得している、違和感はないだろう。完璧な受け答え!っふ、さすが、俺は賢いからな。


がばっと下げていた頭を上げ慌てながら言葉を続けていく麗しい女性、祖国の誰よりも美しい

「そ、そんなことあらへん!うちめっちゃこわかってん!そんなときに、こんな、イケメンに…」【運命感じてまうやん】

最後の言葉は、凄く小さな言葉で俺じゃないと聞こえないだろう、なので聞こえないふりをしてやるのが男としての正しいふるまいだ。


「助けになってよかったです、貴女みたいな綺麗な人が怪我をしなくてよかった」笑顔で微笑み、優しく語り掛ける。

ついつい、本音が漏れてしまって、女性の顔が一気に赤くなって真っ赤になる、耳まで真っ赤だ。初々しい反応、可愛いなぁ…

「ぇ、ぁ、ぅ…」

どの様に返事を返せばいいのか、困惑しているな、これ以上は、傍にいると俺の理性が持たんな…襲いかねん、離れるか。

かなり惜しいが、この女性に触れてしまってはいけない気がする。触れたら最後…使命を忘れて、この女性に溺れてしまう未来が見える。

「夜も遅いので、お気をつけて、それで」「ご飯いこ!うち奢るから!たすけてもろうた恩くらいかえさせてーな!」

先ほどまで狼狽えていた女性とは思えない速さで俺の手を取り食事に誘ってくる…この世界にはとてもいい言葉がある


据え膳食わぬは男の恥


っふ、溺れなければいいのだろう?溺れなければ!!!







太陽がまぶしいな、ガラスから差し込む光が俺の目を開かせる。それにしてもこの温もり、暖かさ、良いものだな


視線を下に向けると気持ちよさそうに腕の中で俺の胸板を枕にして安らかに眠る女性。

名前は柳川と、最初は教えてもらったのだが昨夜の行為中は下の名前で呼んでほしいっと言われたので下の名前で呼んでいた、その名前が美月、意味の由来が月のように美しくあれ、っと食事の時に教えてくれたな、体に恥じぬ素晴らしい名だ。


「ん、んぅ、ぁ、太郎はん、おはよう」美月の顔にも太陽が差し込んだみたいで眩しそうにしている、俺が起きて腕を上げてしまったせいで、かけてしまったタオルが下がってしまったので、タオルを上にあげて眩しくないようにしてあげると

「太郎はんは、優しいなぁ」胸板にぐりぐりと頭を擦り付けてくる、猫みたいで可愛いな。だが、俺の胸板にあるあれを刺激してしまうので当然下も反応するので、滾ってしまうから大人しくしてほしい。


そう、俺は彼女にTanaka Tarouっと名乗ったのだ、田中というのは、この土地では有り触れている名前らしくてな。

最初に名乗ったときは「偽名なん?」っと悲しそうな顔をされたので、熱くこの名前のかっこよさを語ったら「なんやのそれ」っと笑っていたので、掴みは良かったのだろう。


因みに昨夜の行為中も俺の真の名を教えるわけにはいかなかったので、幼い頃から呼ばれている仇名で読んでほしいと伝えスピカと呼んでもらった。


昨夜の行為はとても素晴らしかった、すんなりと行為までの流れがスムーズ過ぎたので美月はてっきり経験豊富だと思っていたら、まさかの初めて!!っく、男してこれ以上嬉しいことがあるだろうか!?いやない!!


こんなにも美しい女性が経験がないなんて、俺と出会うまで待っていてくれたのでは!?っと、運命という言葉があるのだとしたら信じてしまう!!


…ダメだ、わかっている、わかっているのだが!溺れてしまっていっているのがわかる!深い深い海の底に沈んでいっているのがわかる!!

ここまで素晴らしい女性に今後、出会えると思うか?いやない!!…溺れるなというのが不可能だろう。


時計を見ると朝の6時半か、さて、美月は学童だと聞いた、えっと、この世界でいうと大学生か?学校に行く時間は何時ごろなのだろうか?

朝に駅前に行くと、学校や仕事に向かう人たちが溢れかえるのがだいたい、7時半ごろだ、あと一時間もすれば家を出ないといけないのではないか?

女性の身支度にかかる時間は、どの星でも必要だからな、起こしてあげるとするか。


「美月さん、起きなくてもいいのですか?」頭を撫でながら優しく起こしてあげると

「…やだ、おきたくない、もう少しええやん?」起きたくないのかぎゅっと俺の体に絡みついてくる、俺の理性が崩壊する前に起きてほしいのだが


ううむ、困ったな、俺の本音はこのまま第二ラウンド…まて、昨夜の回数をカウントするのであれば第5ラウンドか?っふ、それを開始したいのだが、初めの女性に何度も求めてしまっては相手の体に悪いからな…あそこが痛くなってしまうからな、さりげなく、行為中に治癒魔術を施しているので痛みは無いと思うが、な?念のためだ。


「うちな、その、な」俺の胸板の上を指で「の」を描くように書いて何か言いたそうにしているな、さえぎらずにまとう。

「はじめてやってんで?…それやのにな?そのな?」【気持ちよかってん】最後の言葉は俺じゃなければ聞こえないほどの小さな声だったが、その言葉はもうだめだ、俺の理性がもたん!!!




その後は、携帯電話の時刻を告げる音が鳴り響くまで肌を重ね愛を囁き、心の底から体の全てを使って愛し合った。それはもう、愛し合った。

今までの人生で一番、最高のひと時だと感じれるくらい素晴らしいものだった、この様な素晴らしい女性に出会ってしまって溺れるなと言う方が無理難題だと思わないか?


美月が「今日はもうあかん、大学ええわ、無理、離れたくない」そう言いながら俺に抱きつながら眠ってしまったので、俺もそれに甘え眠ろうと思う。


いい匂いがして目を覚ます

美月が何かをしている?あれは、前掛け、確か料理をするときに着る作業着だったかな?それだけをまといながら何かをしているようだ。

美月の近くに行くと「ぁ、スピカはん起きたんやね、まっててな、今ご飯作るから、まっててや?どっかいったら嫌やで?」一瞬だけ潤んだ瞳でこちらを見てきたので

「どこにも行きませんよ」後ろから抱きしめると「そ、そん、」【嬉しいわぁ】美月は本音をぽそっと小さな声で零れるようにいう癖があるのか、そのいじらしさ愛おしく感じる。




っふ、これはもうだめだな、経ったの一晩で俺は骨抜きにされてしまったようだ、歴戦の猛者とは言わないが、祖国でも上位…にギリギリ入る腕前の戦士である俺が、経ったの、経ったの一夜にして、心も体も美月に完全に溺れてしまった。

もう、離れるなんて考えが起きることは無い。俺が生まれた意味はここにあるのだと運命なんて無いと思っていた俺がその運命を感じてしまう。


この街から土地から、離れづらいとずっと感じていたのは美月が居たからだ

祖国を旅立ち、数多くの世界を渡り、ある場所で本来であればあんな油断なんてしない俺が気を緩ませてしまい誘われるようにこの世界に投げ出されたのも全て運命だと言われてしまえば全力で頷くだろう、全力で肯定するだろう、全力で応えるだろう


これが俺の運命だと


「邪魔ではありませんか?」「ううん、そんなことあらへんよ、ずっと傍にいて」

念のために作業の邪魔じゃないかとたずねてみるが、後頭部をこすりつけながら甘えてくるその行為に俺のアレが反応してしまう、密着しているので必然的にあたってしまう。

「スピカはんってすごいな男の人ってみんなこうなん?」照れてしまったのか耳まで真っ赤にしながら料理を作り続ける

「どうでしょう?俺は他の人を知りませんが美月が魅力的過ぎてこうなるんですよ?俺だってこんなになるなんて思ってもいませんでしたから」

今まで数多くの女性を抱いてきた、この俺が、これほどまでに初めて女性を覚えたわけでもないのに、反応してしまう。

本能が求めているのだろう、体が求めているのだろう、心が求めているのだろう…


脳裏にある言葉がよぎる、その言葉が俺の今の状態なのだとしっくりとくる。


ああ、これが、これがそうだというのか?数多くの女性が語り継ぐ、今まで言葉は知れど理解できずにいた感情


愛なのか?そうか、これが愛か!!


…愛に狂った人達を見てきたことがある、俺には一生縁がないと思っていたが、っふ、これは狂ってしまうのも頷ける

祖国の悲願なんて、どうでもよいと思ってしまっているのだからな、旅立つときに奮起していた旅の理由も霞むほどだ、美月以上の幸せなど無い…


美月が世界を欲しいと言われたら、俺は躊躇いなく世界を取る、全てを蹂躙してでも美月に差し出す、愚かな行為だと過去の俺が笑うだろう

そこに誉れは無い誇りはないと祖国の知り合い全て言うだろう。


そんなの知ったことではない!ここまで身を焦がし狂わすような感情を知ってしまったら、生涯で一生で会えない甘い蜜を、代えがたい味を知ってしまったら抗えぬさ。


この世界に魔術がない世界でよかった、この世界に魔力がなくてよかった。その二つがあれば俺は何かしらの策略に落とされたのではないかと心の底から今感じている感情を素直に受け止めることは無かった。


この星だからこそ、俺を嵌める術がないことが十二分に知ってしまっているからこそ、心の底から湧き上がるこの感情をストレートに真っすぐ、全身全力で受け止めることが出来たのだろう。


神が居るのだとすれば、感謝しか言葉が出てこない、この星に、この土地に、この街に流れ着いてよかった、神のお導きっというのであれば、名を名乗ってほしい未来永劫、あなたの名前を語り継がせていただく。


ぎゅっと美月を抱きしめ耳元で囁くように

「今きっと、言うには相応しくない場所とタイミングだと思いますが、言わせてください。愛しています」

今感じている言葉を素直に伝えると

「うちもな、一目ぼれなんて、あるわけないってずっと、思ってた、色んな男の人見てきた、でもな、スピカはんだけは」【一目見て惚れてしもうた】






長年、闘いの日々を続けてきた戦士がある日、突然、休むためにふと、立ち止まる場所がある

それを、俺らは宿り木と呼んでいた。傷ついた戦士が次に向かう為に休む場所だと…


ここがきっとそうなのだとしたら、俺はいつか、使命の為に飛び立たないといけないのだろう…


俺は祖国から与えられた使命の為に、この宿り木から飛びだてるのか?


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