第2話 定期的に見返すのは新しい気づきを得られる。

俺の仕事は、このゲームセンターアナザーの運営なんだが、実は、金稼ぎが目的じゃない!家族を守るために銭を稼がねばならないのは事実だが!

銭を稼ぐ方法は別にあるから、この店での目的は違う。


その目的とは?俺が祖国から課せられた使命の為に妻に無理を言って建ててもらったのだ。


ふむ、仕事も昨夜のうちにほとんど終わらせてからな、久しぶりに過去の出来事を思い出して、今に生かせる何か見落としが無いか思い出すのも一興か?

魔術を使って過去の記憶にアクセスし、情報と状況を整理するための魔術を発動する。


その間はぼけーっと新聞を読んで煙草を吹かすだけのはたから見ると使えない責任者となろう。


俺の名前は、あー、こっちの世界だと

妻の名字を受け取り 柳川 下の名は太郎だ!!


本国での名前はスピカランだ。妻にはスピカっと呼んでもらっているので太郎と呼ばれても反応しないことが多い。

最初に名乗った名前は 田中 太郎だ!!


この世界でTanaka Tarouっと書くみたいでな、このTっという文字が素晴らしい、造詣が綺麗だ、なので一番最初の文字にTの文字を入れたくてな

調べた際にTanakaっていうのが非常に有り触れた苗字らしい、森の中に入るための木となる為、田中を選び、この世界では男っという意味があるのが太郎っと調べて出来たので

Tが似合う男!っという意味を込めて、さらには太郎もTから始まる!最高じゃないか、っというわけで田中 太郎っと言う名前を名乗るようにしていた。


とある事情でこの世界に落ちてしまってな…

何とか、世界を渡ろうにも、渡るための術を失ってしまったからなぁ、どうして失ったのかは聞かないでくれ末代の恥だから。

でだ!世界を渡るために必要な道具を失ってしまったから、この世界から抜け出ることが出来なくなってしまった…


困り果てた俺を拾ってくれたのが妻ってわけだ、今でも鮮明に思い出せる、あの出会いを





しまった、実にしまった、この俺としたことが、こんな失態をするとはな、浮かれていたのだろうか?

きっと、浮かれていたんだろう、あのような世界に辿り着けるとは思ってもいなかった、そして、まさか、時空の狭間が突如、目の前に開いて巻き込まれるなんてな

思いもよらなかった、挙句の果てに大切な祖国から授かった時渡の鎧を装備していないときに巻き込まれるなんて!!


まだ、時渡の鎧とのリンクは切れていない、流石は祖国が開発した時空術式が組み込まれた鎧

この繋がりを辿っていけば、いつか鎧のある世界に戻れるのだが…どうやったら戻れる?


道がわかっていても、その道を通る術が思い浮かばない…


ううむ、取り合えず、まずはこの世界で路銀でも稼いで食いつながねばならんな、生きる為には必要なことだからな。


なぁに、どのような世界であろうと俺のような強靭な戦士を欲しがらない世界は無い、どんな難敵であろうと討伐して富と名声に換えてくれる!!


…それにしても、この世界からは魔力の波動を全然感じぬなぁ、それに、道行く人たちからも魔力を全然感じ取れない…

あれか?この世界もまた、魔力が薄い世界か?であれば、魔獣の類と戦う術がないからさぞかし困っているであろう





っふ、そんなことを想っていたな数分前までは


索敵しても一向に魔獣の気配がない!!その代わりに人の数が尋常じゃない!!なんだこの世界は!?

ピンを打って帰ってきた反応が万を軽く超えたぞ!?あれか、ここがこの星の最重要都市だとでもいうのか!?

その割には、住民が密集していないが?どういうことだ?


っというか、凄いなこの世界にいる人間は、地表に反応があるのは当然だ、だが、地中にもいる

可愛そうに奴隷の類が地中で生活を余儀なくされているのだろう、野蛮な世界だ…倫理観が狂っているに違いない。

それだけじゃない、地中だけじゃなく空中にも数多くの反応があった!数こそは少ないが恐らく30人ほどの反応があった、それも複数!!


この世界は地中だけでは飽き足らず空中にも何かしらの都市があるのだろう、そんな場所でごく少数の人が働いているのであれば

当然、空中にも奴隷を働かせているに違いない。


空中なんて、危険場所で働かせるなんて非道な連中だ。

この星の人達と接するときは気を付けないといけないな。


魔獣が居ないっということは、何かしらの方法で魔獣を殲滅したことになる、魔力に頼らない殲滅兵器が存在するのだろう

その手の攻撃手段は数多く見てきたので、驚くことは無い。


きっと、この世界もその手の攻撃手段を得意とするのではないかと、判断できるからな

じゃないとあのような軽装で外に出たりしない、警戒心も無く安心しきって生活を営んでいる人達、そうとう便利な殲滅兵器があるのだろう

もしくは、それらで武装し訓練された組織によって、人達は守られているのだろうっと判断が出来る。


ううむ、だとすると魔獣などの討伐で資金を得るのは難しい、だが!魔力が無いというのであれば、怪我による治療を行う施設がない!

治療師として活躍するのもいいだろう、腕が吹き飛んでも再生させてやるさ、大金次第でな!っはっはっはっはっは!







そんなことを数分前の俺は考えていたな、俺は愚かだ


こんな魔獣が居ない世界で安心安全な場所で誰が怪我をするというのだ?

何処にも大怪我を負った人をみない…



そうこうしているうちに日が暮れる、何も路銀を得ていない、最悪、野にいる獣でも狩って食えばいい、食べれる獣が見つかればいいのだがな

この星の大地と水は腐っている、目の前にある大きな大きな大河から喉を潤わそうと思って飲んでみたら飲めたものじゃない!


臭いし味が良くない、こんなにも大量に流れているのに汚染されているとはどういうことだ?よくこんな水を中心に生きていけるものだ、恐らく、彼らはこの水でも耐えらえる様に進化した種族なのだろう、魔術で濾過して、浄化すれば飲めないことも無いが、味までは変わらん、心を無にして飲んだが、もう一度、飲みたいかと言われたら、ご免こうむりたい。


こんな大地と水で育った獣なんぞ、臭くて食えないし、浄化してから食べると考えると魔力の消費の方が大きくて得られる糧が少なすぎる…

飢えくらいなら七日くらいはどうとでもなる、最悪、水も飲めるからな…

試しにその辺に生えている野草を食べてみたが、食えたものじゃない…


っふ、だがな、夜は魔獣どもが活性化することが多い!つまり!魔獣どもと交戦して苦戦しているであろう民を見つけ保護してやり、恩を売る!

さすれば、その日くらいの飯と寝どこが手に入るというものだ!


さぁ闇よ!俺に活路をくれ!!







そんな風に考えていたことが俺にはあったなぁ…まだまだ、俺は考えが浅い。


先ほどの大きな大河がある草原に戻ってき、夜空に浮かぶ月を見上げる…

この周囲を飛びに飛んで全力で探した、魔獣の気配をピンを打ちまくって探しに探した…


いなかった…


普通の獣はいたのだが、アレは獣じゃない、人に飼育された家畜だ、牙を抜かれた家畜どもだ、それに手を出すと逆に俺の立場が危うくなるので狩れない…

人が多く賑わう場所にいって、この星の情報を、魔術を用いてすれ違う人の脳みそから直接、盗み見して、情報を得たのだが…


この星って魔獣っていう存在がいない、すれ違う人全員に魔獣がどこに生息しているのか、脅威はどの程度なのか、片っ端からリーディングしていくが一つも情報が出てこなかった…

獣はいることはいるのだが、管理されていることが多く、完全に御していることが多い、丁寧に檻まで作って餌も与え生殺しにしているくらいだ…

獣が生きる簒奪を奪い、獣の牙を抜き悦に入る…恐ろしい星だ…獣の尊厳も、威厳も、へったくれもない、この星では生存するためには勝ち続けなければいけないのか?負けたものはああやって檻に入れられて生涯を憐憫の眼差しを受け続けないといけないのか?


…平和な理由が分かった、恐らく過去に大英雄でも降臨して全ての獣を蹂躙し人類に永劫の安寧と平和を授けたのだろう、その結果がこれだ、平和が故に楽しみが無い、生きる本能が全て失われたからこそ哀れみでしか幸せを得られないのだろう、だから、水も大地も腐り果ててしまったのだな…


…はやくこの世界から離れたい、何処にも俺が活躍する場所はないのだろう


っくそ!!時渡の鎧を失ったのが大きい!どうにかして時空を開き、次の世界に渡る術を見つけない!せめて、時渡の鎧がある世界にいけないのであれば、祖国に帰れば咎められはするが、再スタート出来る、俺は使命を果たす!祖国と共和国が何千年も追い続けている怨敵を討ち滅ぼすまで俺は止まれんのだ!!



どうして、そこまで使命に燃え続けているのか、俺自身そいつに恨みはない、恨みは無いが!そいつを討ち滅ぼせば祖国、共和国、歴代の猛者と認められて俺は


俺は!!




初恋の人と結ばれることが出来るはずだ!!




我が、子孫繁栄のためだとか、そういうのはどうでもいい!


あの極上の女を抱くことが俺の目的なんだ!!

あの女に負け続けた日々!!

いつか組み伏せて心も体も蹂躙してやる!!


っと奮闘し続けた結果、俺は選ばれてしまったのだ、不本意だがな、旅になんぞ、でなくても!!俺はいつかはあいつを超えれると信じていたのに!!


っく、闘技大会で、負けに負けてしまった俺が悪い…後、一つ…いや、二つ…いいや、三つ…すまぬ、あと五つ以上は最低でもランキングを上げて上位勢に食い込んでいれば、旅立つことなく祖国に残留できたのだがなぁ、弱い俺が悪い。


弱いからこそ試練を与えられる、確かに祖国の使命としては怨敵を討ち滅ぼすことだが、俺らは時渡の鎧の力を借りて永劫の時の中から敵の居場所を突き止めるのが仕事だ。

この時渡の鎧そのものが、位置情報を祖国に送る役目を担っていて、俺らが怨敵に出会ったときにシグナルを発して祖国に伝えることが出来る。


俺のような弱い存在が一人で怨敵に挑めば蹂躙されて終わりだからな、祖国には、来る決戦に備えて封印された大英雄達が数多くいる、総出で戦いに挑まねばなるまいからな。




っふ、いかんな、することが無さ過ぎてどうでもいいことばかりを思い出してしまう。

建設的なことを考えよう、時渡の鎧を無くしてどうやってこの世界から旅立てばいいのか、だな、広大な空を渡る方法は時渡の魔術を用いるしかない。

なら、何度も使用したあの魔術の感覚を思いだ、おも…いや無理だ、時魔の一族が長年にもわたる研鑽された秘宝であり秘術、俺のようなただの戦士では到達できる次元の話じゃない


なら、溜め込んだ魔力を圧縮崩壊させて時空を揺らして狭間を生み出して、一か八かで飛び込むか?

それも一つの作戦としてはありなのだが、どうやって魔力を溜め込めばいいのか?そのような素材がこの星にあるのか?


いや、あるんじゃないのか?魔力がほぼ感じ取れない世界だからこそ、貴重な金属や素材が見抜きもされず放置されている可能性があるからな


では、広大な星の中にある金属をどうやって探せばいい?だれも見向きもしないのであれば地中にあることにならないか?



…詰んでいるな。




…?ん?いやいや、その答えは早計だろう?…時渡の鎧を失ったときから俺の人生は終わってしまったのではないか?


・・・・いや!そんなことはない!時渡の鎧には秘術がある!!!

緊急の時の為に一度だけ使える秘術がある!!時渡の名を冠するという仰々しい名前なのだからな


一度だけ、そう、一度だけ、過去に飛ぶことが出来る、どうやって飛ぶのかは知らないがやり直すことが出来る。

当面は、やはり、まだリンクしている時渡の鎧をとりもど…奪われたわけではないから拾いに行くのが正解か?



なんにせよ、この世界で次の策を生み出せるまでの糧を得ることも考えねばな…

夜は長いな、幸いにも寒さも厳しくない、寒さや暑さなどは魔力を使って対処可能だが、無駄に魔力を使いたくないからな…


腹は減ってはいるが耐えられる、それよりも、心か?…ああ、そうだな心が貧しているな…潤いが欲しい。

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