第6話 終わりはズレている

 2週間ぐらいが経ったか。オレのストーカーはあの日以降音沙汰を無くした。

 なんでだろうか。あんなにも熱心に毎日毎日飽きもせずにメールを送ってきたり監視したりしていたのにもかかわらず、あっさりと終えたものだった。

 愛してるとか好きだとかそんなん言ってたのに、こうもあっさりと引いてしまうんだなと思った。ますます恋愛というものが分からなくなった。

「幸司先輩、何考えているんですか?」

「ん? ああ、あれだよ。ストーカーの」

「ああ、うまくいきました?」

「うん。特に何も大きなことは起こらずにそのまま静かに終わった。まあ、これでしようやく静かになれるよ」

「それはよかったですね!」

 愛華は後ろで手を組みながら笑った。前かがみになり片目でオレを上目遣いで見つめた。

「ありがとう」

「えへへ。そんなの言われたら顔の崩れが止まらないですー」

 愛華はオレの前を歩きスキップしていた。

 そんな時、オレは「あれ?」と見た顔をみつけた。

 少し足を止めて、物陰に隠れるようにした。そんな様子のオレを不審に思い「どうしたんですか?」と尋ねた。

「あいつだよ、あの例のストーカー」

「はへ?」

 例のストーカーしていた女が男と仲良さそうに腕を組んで歩いていた。まるでずっと付き合っていたかのように仲良くしていた。

「オレの事をあきらめてまだ2週間くらいなのに、切り替えと惚れるの早くないか?」

「別にいんじゃないですか?」

「ま、まあ……それはそうだけど……」

「先輩は女心が分からないんですから」

「どういうことだよ?」

「まあ、タイプは色々ありますけど、女の子は切り替えが早いんですよ。男みたいにずるずるずるずるとねちねちねちねちと引きづってやれないです。はい、恋をしました。無理でした。じゃあ次に切り替えよう! ってそういうもんなんです」

 愛華が説明していたが釈然としなかった。ストーカーなんてどうでもいいんだけど、気になって仕方がなくなった。

「ほら、よく言うじゃないですか。恋に恋する乙女なり。って。つまりそういうことですよ」

「そういうもんなのか?」

「よく聞くのは恋している時が一番楽しいって。案外それが心理なのかもしれないですかね? 蛙化現象ってやつですか? 違うですかね? わからないですが、まるで、義理のようですよ。自分の恋に対しての。結局のところ、つまるところ、自分本位でしかありゃしないんですよ」

「なるほど? じゃあもしも、オレが仮にOKしたら、君のオレは蛙になるのか?」

 そういうと愛華は腹を抱えて笑った。

「私はそんなにはなりえませんよ。もし仮に先輩が物理的に蛙になろうと南くんの恋人みたいになろうとも、何になろうとも、私はずっと先輩を愛していますから。この気持ちは変わりません。変わってなるものですか、です」

「……」

 オレは頭を掻いた。嘆息し、両腕を組んで頭を捻らした。そして、歩き出した。その後ろを愛華が付いていった。

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