瞬間転移装置
「とにかく、先に進んでみるしかないわね」
ケイトはそう言うと先へと続く通路を照らす。
「ここで救助を待つのはどうよ?!」
「また現状が崩落したら無事じゃすまないわよ」
「確かに!!」
「通路もー亀裂が入ってますしー先に行くのが良いかとー」
アリスが耳状のアンテナを振りながら促す。
衝撃で片方が傷んだのか、右耳を伸ばしてはまっすぐに直そうとしている。
「行こう。崩れる前に」
4人は通路を先へと進む。
通路の先は3m×3m程の小部屋へと続いていた。
入口からまっすぐ反対側の壁はガラス状の物質で覆われていた。
壁の右側には人がくぐれる程度の亀裂があるようだが、そこは瓦礫で覆われていた。
「ガラスの向こう側は、どの方向も真っ暗で全然見えないわね…」
「これさ!マジックミラーっぽくない?!向こうからだと見えるの!」
「確かにーそんな風にみえますねー」
アリスがそういいながら扉の周囲のガラスを見つめる。
と、その時。
ガラス面に赤い光点が灯る。地面から1mの高さ、直径10cm程度の薄暗い光だ。
「何か光った!逃げてアリス!」
ザックがそう叫び、
その瞬間、アリスの姿は影も形もなくなった。
「…っ!?」
「…えっ?…アリス?どこにいったの…?」
「今!!今消えた?!目の前から消えたよね?!?!」
混乱に包まれる3人。警戒して周囲を見回す。
「そこのガラス面から光が」
ザックが指さす先、ガラス面の光点はすでに消灯していた。
「じゃあその光線でアリスが消えたっていうの?」
「まさか!レーザー兵器?!いやだ死にたくない!!」
「そんな瞬時に蒸発するエネルギーなら私たちも巻き添えのはずよ。
これはそんなものじゃないわ」
「じゃあ!アリスはどこに!?」
「私に聞かれても分からないわよ!」
「ここよー、ここにいるよー」
間の抜けた声が、くぐもった響きで聞こえる。
ガラス面の向こう側のようだ
「アリス、そっちにいるのか」
ザックがガラス面に張り付き話しかける。
先ほどの光点を警戒することさえ忘れた様子だ。
「みんなの姿はー、見えるよー。ガラスの反対側だよー」
「よかった!!無事だった!!」
「でもどうやって向こうに行けば…そうだ、この亀裂の瓦礫を撤去すれば」
「ボビー、頼めるか」
「任しといて!!」
亀裂の周囲の瓦礫を慎重に、しかし軽々とより分けるボビー。
重機タイプの
そんな軽口をたたきながら亀裂の前をクリアーにする。
「これでお終い…っと!!」
最後の大岩を動かし亀裂の奥が見えるようになると、アリスがひょっこり顔をだした。
「みんながー、急に消えたからービックリしたよー」
「何言っているの!消えたのはアナタじゃない。心配したんだから」
「無事で!よかっ
「無事でよかった」
ちょっとザック!俺のセリフにかぶせないで!!」
ボビーの様子に和む面々。
「でも一体なんだったのかしら、さっきの」
「わたしー、急に消えたんですかー?」
「そうそう!パって消えて!!まるでテレポート!!」
「そんな、まさか瞬間転移装置だなんて」
「いや、そのまさかだ」
ザックが重々しく頷く
「ここは外部からの侵入を警戒する何らかの施設だったんだ。外部からの訪問者は内部からの承諾を得て瞬間転送されることで入ることができる」
「そんな…まさか…でもそれなら完璧な隔離施設が運営できるということね…」
「わたしがー転送されてしまったのはー、たぶんその装置の誤作動ですねー」
アリスが指さす先には、表面に幾何学模様が掘られた、ボーリングの玉のような球体が転がり落ちている。
地震の衝撃で落ちたと思われるそれは、暗い赤い光を明滅している。
「うおぉ!まだ動いてる装置!!大発見だよこれ!!!」
「でも迂闊に触るのは危険ね」
そういいつつも、ケイトは亀裂の奥を見渡す。
内部は更に通路が続いているようだが、そこも瓦礫に埋もれてしまっている。
「なんにせよ、ここで救助を待つしかないか。ガラス面からはなるべく離れて、通路寄りに集まりましょう」
「了解!!」
簡易拠点として荷物を降ろし腰を据える面々。
「念の為身体をフルスキャンしましょう、アリス。DNAレベルまで徹底的に」
「了解ーフルスキャンーー」
診断結果は良好。
出発前と寸分違わずであった。
「救助ー、早く来るといいですねーー」
「音信不通を検出したら派遣されるはずだけど、最悪7日ってとこかしらね」
「ここ!宇宙の辺境だからね!!」
「まぁ
「あぁ」
このまま時間が解決してくれると彼らは信じていた。
この時までは。
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