1-②
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美術部の部員は六人で、二年生はあたしと夜雨ちゃん、淡雪ちゃんの三人だ。三年の
一年生二人は中庭で絵を描いているから、美術室にいるのはあたしたち三人だけだった。
窓は開いていて、
日の当たる
夜雨ちゃんはマンガが好きで、最近はタブレットでデジタルマンガを描いている。なかなか構図が決まらないのか、「うーん……」とペンを揺らしながら
玄冬淡雪ちゃんは、丸いフレームのメガネをかけた、フワフワしたショートボブの
淡雪ちゃんは作業机の真ん中に置いてある
展覧会に出品する絵を描く時や、体育祭の看板製作、文化祭の準備をする時には
そんな美術部ののんびりとした
「おおっ。アリスの得意なキノコの不思議な森シリーズだね。かわいいじゃん」
あたしはクロッキー帳いっぱいに描いたキノコを色鉛筆で
「アリスちゃん、キノコ好きだね」
淡雪ちゃんも絵を描く手を休めて、「フフッ」と笑う。
(今年の展覧会の絵も、キノコと妖精をモチーフにしようかな?)
あたしは色鉛筆を
「ちょっと、
淡雪ちゃんが鉛筆とクロッキー帳をおいて、立ち上がった。
「待ってました! アリス~、お茶会にするよ~」
夜雨ちゃんも
あたしが机にチェック
「今日はジンジャーマンクッキーだよ!」
夜雨ちゃんが缶の
「季節外れなんだけどね~」
ジンジャーマンクッキーはクリスマス定番のクッキーだ。今は初夏だから、ちょっとどころではなく気が早い。
「それじゃ、今日は早すぎたクリスマスのお茶会だね」
あたしはソワソワして、「うんうん」と二回
お茶会の紅茶は、いつも淡雪ちゃんが用意してくれる。お菓子を用意してくれるのは夜雨ちゃんだ。
あたしは淡雪ちゃんみたいにおいしい紅茶もいれられないし、夜雨ちゃんみたいに手作りのお菓子を作ることもできないから、クロスを用意して紙皿と紙コップを準備している。
淡雪ちゃんが「はい」と、あたしに紅茶を注いだ紙コップを
「ありがとう、淡雪ちゃん。わぁ……いい
ダージリンティーのいい香りがする。淡雪ちゃんは紅茶やハーブティーにこだわっていて、いつもいろんなお茶を用意してくれる。
「ん~、高貴な香りがする~」
夜雨ちゃんが目を
「そのようにお褒めいただけるとは光栄です」
淡雪ちゃんは
「そういえば、アリス~。今朝、白秋君に声をかけられてたじゃん」
夜雨ちゃんがあたしのほうにグイッと寄ってくる。今朝のことを思い出しただけで、あたしの顔がパッと赤くなった。
「白秋君って、バスケ部の王子様だよね」
ジンジャーマンクッキーを頭のほうからパリッと
「バスケ部でイケメンで、人気者だからね~。モテないわけないよ」
夜雨ちゃんは
「ライバル、絶対多そうだよ~?」
「あたしは……ええと……っ」
あたしは困って、紅茶をグイッと飲み干した。
「ふーん、アリスちゃんの好きな人なんだ? それは知らなかったなぁ~。聞きたいな~」
淡雪ちゃんもメガネをクイッと上げて、
「うんうん、白秋君は?」
頷きながら、夜雨ちゃんが先を
「かっこいいと……思うよ!」
正直に答えると顔が熱くなり、パタパタと両手で
「アリスちゃんの好みって、王子様タイプの男子だったんだね」
淡雪ちゃんが人差し指を顎に当てて言った。
「
夜雨ちゃんのその言葉に、あたしはハッとする。
(そうだよ……!)
今は隣の席だから、白秋君も時々あたしに話しかけてくれる。離れた席になったらきっかけもなくて、ただ遠くから見ているだけになるかも――。
あたしは「どうしようっ!」と、
「男子と仲良くなるって難しいよね。白秋君はあまり人見知りしないみたいだから、話しかけやすいほうだと思うけど」
淡雪ちゃんが紅茶を飲みながら、少し首を
「きっかけとかあればいいけど。あとは、共通の話とか?」
「
淡雪ちゃんにきかれて、あたしと夜雨ちゃんは同時に、「「バスケ!」」と答えた。白秋君は昼休みの時も、クラスの男子たちと体育館に移動してバスケをしているみたいだ。白秋君の性格はあたしと正反対で趣味も
「それは……うん、難しそうだね」
「あたしがもっと、バスケが得意だったらよかったんだけど……」
運動が苦手なあたしは、バスケの時もチームのみんなより
「じゃあ、反対に白秋君が絵を好きとか?」
「どうかなー。マンガは普通に読んでるみたいだけどね」
淡雪ちゃんと、夜雨ちゃんがそう話をしている。
白秋君は友達に借りたマンガを読むくらいで、やっぱりスポーツのほうが好きみたいだ。
あんまり興味はないのかもしれない。あの日は、あたしが
白秋君は人気で、告白したいとか、付き合いたいと思っている子はたくさんいる。その中で、あたしが選んでもらえる可能性はほんの少しもなさそうだ。
(告白する勇気もないよ……)
あたしはため息を吐く。少しだけでも仲良くなりたい。せめて、友達だと思ってもらえるようになれたらいいのに。
でも、今のままではいつまでも自分から話しかけられず、一年間『
(そんなの、ダメだよ!!)
あたしはプルプルと小さく首を横に
「夜雨ちゃん、淡雪ちゃん。あたし、どうすればいいかな?」
「そうだねー。こういう時にはやっぱり、作戦が必要じゃないかな!」
夜雨ちゃんはそう言いながら、自分のバッグを開いた。
淡雪ちゃんが「どんな作戦?」と、
「んー……それはやっぱり」
夜雨ちゃんは取り出したノートをあたしと淡雪ちゃんに見せ、ニコーッと笑った。
「
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